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Scott って誰? ~heldio #1301. 超絶に単純な本来語要素からなる上級レベル動詞3選 --- atone, beget, don を受けて~
はじめに
2024-12-21 配信の heldio ##1301 において、atone, beget, don という普段あまり目にしないが、その要素は実に単純な本来語から構成されているという単語の紹介があった。そこでいろいろ気になることが出て来たので、雑感として記しておきたい。
Atone
発音が /ətóun/ なので、要素分解するなら a + tone なのではないかと思えてしまうが、これがなんと at + one なのである。どうして /ətwʌ́n/ ではないのかとも思うが、むしろ one が /wʌ́n/ と発音される方が変わっているのだと思えば /ətóun/ は至極妥当だ。
KDEE では c.f. として中世ラテン語の adūnāre (to unite to) およびラテン語の ad ūnum (at one) との関連を示しているが、これは何を意味しているのだろうか? ずばり語源とも借用とも言ってはいないのだが、ラテン語からの翻訳借用の可能性も示唆しているのだろうか? あるいは、単に同様の発想による語形成が他言語にも見られるということに過ぎないのであろうか?
実は atone の償う・罪滅ぼしをするという意味から、何か attorney と関係ありそうに感じていたが、調べてみると何の関係もなさそうである。残念。
Beget
父親視点で子をもうけるという古い表現で聖書に出てくるような単語だが、"Respect begets respect." は学び合うリスナ・コミュニティが形成されている heldio にまさに相応しい標語となりうるのではないかと感じた。そして "Prof. Hotta begot such an amazing community." と言えるだろう。
Don / doff
KDEE で don / doff の項を見ると、イングランド北部では口語として用いられるが、文語としては Scott によって復活されたという記述がある。何の説明もなく Scott の名が出てくるのだが、これは Sir Walter Scott のことだろうか? 彼の The Lady of the Lake という詩には確かに doff を使った一文が出てくるが、これが doff 復活の鍵になったということなのだろうか? 構成要素の話よりも、こちらの経緯の方が気になってきた。
To her surprise, every man has doffed his hat except for Fitz-James, and she realises that Fitz-James is the king himself.