暗黙知とAI 〜英語史の輪 #178 を受けて〜

Voicy で毎日配信されている「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のプレミアムリスナー向け配信(火・木・土)である「英語史の輪 (helwa)」で暗黙知と AI と題する配信があった。

詳細は記さないが、簡単にまとめると、大規模言語モデル (Large Language Model, LLM) はその名のとおり言語化されている情報を大量に学習することによって成り立っているので、言語化されていない知識=暗黙知とは相性が悪いのではないかという話であった。

そのとき思ったのは、確かに最近 LLM こそが AI であるような風潮があるが、かつて主流だったエキスパートシステムのような AI においては、専門家の暗黙知をいかに抽出して取り込むかという課題に取り組んできた歴史があり、その知見を活用しながら LLM に融合させることで、暗黙知にも強い AI を目指すこともできるのではなかろうかということであった。

それを軽い気持ちで Voicy コメントとして書き込んだのだが、helwa リスナー (aka helmate) の川上さんから「もう少し詳しく」とのリプライがあり、フリーズしてしまった;私はエキスパートシステムの専門家であったわけでもなく、暗黙知の抽出手段について生半可な知識でいい加減な回答をしてしまうとよろしくないのではないかなどと頭がぐるぐるし、手元の文献を搔き集めつつも、全部読み直してまとめるのもえらく時間が掛かってしまうし、それでも正確性が保たれるわけでもないからだ。

そんなことを考えているときに思ったのが、暗黙知にも2種類あり、それぞれの抽出に適した手法も異なるのではないかということであった。ひとつは専門家自身も言語化しづらい身体的・感覚的経験知とでもいうもので、もうひとつは言語化しようと思えばできるが、常識として無意識のうちに使われているものである。

前者を抽出し、言語化/数値化するには観察・インタビューや産業用ロボットで用いらるようなティーチング(熟練工の動きをロボットがなぞれるようにする)といった手法が思い浮かぶが、後者については(よい意味での)常識知らずの素人が素朴な疑問をぶつけることで、普段は意識していない常識としての前提知識を言語化する必要性に迫られ、それによって暗黙知の言語化の助けになるのではないか、そんなことをつらつらと考え始めた。

そして、この後者を堀田先生が実践されているのが「千本ノック」に他ならないのではないかと。素朴な質問に答え続けることで、英語史の専門家としての暗黙知を言語化し、それを記録するこの試みは、まさに LLM が暗黙知を学習するために必要な情報を提供していることになり、それによって暗黙知と AI との相性の悪さを解消することに貢献していることになるのではないかと思い至り、問題の提起だけでなく解決策をセットで提案する(しかもすでに実践されている)というお手本のような見事なアクティビティに平伏するばかりである。

川上さんへの回答に全然なっていないようにも思うのだが、軽はずみついでに ChatGPT に専門家の暗黙知の抽出方法の歴史と現状とについて質問してみたので、それを公開することでお茶を濁すことにしたい。

https://chatgpt.com/c/b87e352f-eb33-4179-afa0-344596d265ac

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