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別れたあとも未来は続く

期末試験が終わったら別れ話をする、と決まった。
あの後逃げたまま飛ぶと思っていた元カレから、ちゃんと約束していた1週間後に連絡が届いた。
「月末は忙しいから、8月になったらまた会おう」
私も今月末は試験があって、8月を過ぎたらインターンと留学で忙しくなる。話す機会がそこしかないのは同じだった。

これまで自分が言う側だったのが、初めて人から「友達になろう」と言われたのが1週間前。恋愛をしなくても良い状態に初めて悩んだここまでの期間、私はどんな失恋ソングにも説明出来ない感情に満たされていた。

8月に会って、何を話そう、と考える。

まずお互いに話し合いが足りなかったことを反省すべきだろう。焦り過ぎた、相手は恋愛に、私は人生のパートナー探しに。
 普通はもっとじんわり近付いて、他人である相手の価値観を測り合い、好みや習慣が大体分かった上で、さらに恋人に必要なスキンシップの価値観を正直に共有するべきところだったのだ。しかし私は恋愛が分からないから「これが世間の常識なんだ」と相手のペースに従い、そのせいで相手はその態度を当たり前かつ、自分への好意だと受け取ってしまった。私は正直相手の顔も名前も認識出来ていなかったので、好意以前の問題であったし、相手がどれくらい自分を好きなのかも分からなかったから、彼女として取るべき行動の塩梅がつかめず、相手に朝から晩まで尽くし甘やかして、それが相手の誤解をさらに促す結果を招いた。

その上私がやらかしたのは、その勝手にも細やかな「お世話」に耐えられなくなったことと、相手が本当に少しでも自分を好きなのかを確かめるために、突然冷や水のようなカミングアウトもどき(自分が恋愛感情を持たないこと、肉体的にも男性に惹かれないこと)を浴びせかけてしまったことだ。これは本当に、相手にとってはほぼ半年関係を持っていた彼女の全てがいきなり嘘だったということになり(あながち間違いではないのがひどい)、今隣で寝ている彼女が暗闇の中で怪物に成り代わったように思えただろう。後先考えず感情だけで自分勝手を働いたことを、まずは謝らなければいけない。自分の考え方や感じ方がマイノリティであることも、突然の開示は混乱のもとであり、場合によっては暴力足り得ることも初めて学ばせてもらった。

同じ熱量で、相手に感謝も伝えなければならない。私はそれから態度の変わった彼氏が翌日の予定を反故にして、急いで朝帰りをキメたことにそのときは納得がいかなかった。自分がしたことについて相手の感じたショックを感じ取れなかったのもあるが、私はそれ以前に彼氏が自分を好きだったことすら知らなかったのだ。だからそもそも相手の感じていることに共感しようともせず「なぜいきなり帰ってしまうのか、初めからそういう関係だったということか、責任から逃げるのか」と見当違いな問い詰め方をして、さらに相手を混乱させた。私は法学部で色々やっているから、根拠を見つけたときの追及力は基礎から他と違っていて、そこも考慮出来ていなかった部分だ。さらに、自分のことをマイノリティだと知っていたとして、私はアメコミの1番やばい時期(人種や性の多様性に席巻された時代)をリアルタイムで体験したこともあり、日本の平均の感覚よりも、人ごとの感覚の違いと受容についてある程度の耐久性をもつことを考えに入れるべきだった。通常、相手から自分と違う当たり前に共感を求められたら喜びよりも驚き、または恐怖が先に来るものだ。

だからこそ、提案された「混乱したから今日は帰る、1週間後に話そう」という1度は納得できなかったことが、結果的にマイノリティ性や自分の望む将来像についてなど、本来なら考えていなかった大切なことに目を向け、その答えを固めるきっかけになった。思い返してみるとあの場合においての解決策、その場を収める方法はそれしかなかったのかもしれない。自分が混乱してその原因が目の前にいるときに、更なる混乱を招かないようにする方法としてじっくり1人で考える時間をとるというのは、勘違いをしたまま互いにぶつかり合うよりずっと冷静で生産的だ。そんな時間を充分に与えてくれたことを感謝したいと思う。

なんだか今回のことはみんな私が悪かったと思えてきた。自分で蒔いた種を相手の気持ちを巻き込んで自分で刈り取ったようなものだ。1番未熟だった、恥ずかしい。
 でもおかげで、勝手な感想だが成長のきっかけを得ることができた。ここで固めた考えを、2人で食事でもしながら落ち着く場所でしっかり伝えて精算して、どう次に繋げていけるかが託されている。

あれから私がずっと聞いていた別れの歌がある。失恋ソングではないが、これからお互いにそうありたいと願って聞いていた曲だ。

振り返らないで 悔やまないで
怖がらないで どうか 元気で
僕は唄うよ歩きながら
いつまで君に届くかな
その涙と引き換えに
その記憶と引き換えに
この歌と引き換えにして
僕らは行ける

BUMP OF CHICKEN「同じドアをくぐれたら」

別れるならお互いの未来のためになるように。

私はアメコミにハマっていた頃、お気に入りのキャラクターがいきなりレズビアンにされたことがある。その時はまだLGBTが普及しておらず、中学生だった私にはショックで受け入れられなかった。一般とは違う常識を持つ者として似たような感情を抱えさせてしまったのなら、相手がそういった概念を拒否する側に立って私の知らない誰かを傷つけることにならないように、責任を持って最後まで事情を理解してもらう必要がある。私はしっかり国内外の本や論文を読んだから、素人なりにもある程度のサポートは出来ると思う。

同じように、相手の性格や目指していたことについてもよく知って、価値観を交換できたらそれ以上のことはない。私もいつか結婚して子供を持ちたいし、そうじゃなくても自分以外の感じ方を知って、これから会う人たちを気遣う必要がある。

期末試験や仕事の繁忙期が終わって、お互いスッキリした顔で会うことになるだろう。その顔のまま別れていけるように、出会えて良かったと思えるように、後悔のない話し合いが出来ることを願っている。

伝えることメモ

・私は出会った人に今尽くすことで、その人と未来でどんな体験を共有できるかを最終目標にしている
・男女の区別をつけず、老若男女が「同性」に見えているため、一目惚れはしない
・だから相手の感性を1から測って、距離を縮めていくことでしか親しくなれないが、一般にそれは友情である
・人生は一度しかないから色々な体験がしたく、将来的には家庭を築きたい
・しかし自分から恋愛的に手を出せないので、近づいた後の告白待ちになる
・告白されることがまず少ないので、まずはうんと言ってしまう(再考の余地あり)
・相手から向けられる恋愛感情も分からないので、とりあえず尽くしがちになる
・性行為はあまり意味を感じない、キスや熱のこもった手繋ぎやハグは怖いので出来ればされたくない
・自分の感性を1つの好きの形として受け入れており、それに理解を示してくれる人をパートナーにしたい
・相手と自分の求めることが違っても、お互いの妥協点を探るために継続的な話し合いは欠かしたくない

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