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ストレスで髪が白くなるのって本当?
白髪の気になる年齢層まっさかりのLiMe1です。
あしたのジョーの世代ではないですが、最終回でジョーが最強の敵ホセ・メンドーサに判定負けするものの、相手のホセも試合後に老人のように白髪になってしまう、衝撃的なシーンが忘れられません(ヘッダー画像参照、あしたのジョー最終回より引用)。
これって本当なのでしょうか?
最も権威のある自然科学系の学術雑誌の一つ、nature (インパクトファクター 43.070) によると、Harvardの研究グループがストレスで白髪になるメカニズムの一部を解明したとのこと。(原著の抄録はこちら。)
大きなストレスを受けた後に白髪になる現象はよく認められる。そのメカニズムとして考えられているのが、幹細胞の消耗・追い出しだそうです。
幹細胞(stem cell)はいろいろな細胞のもととなる、ごく簡単にいうとたまごのような細胞です。再生医学のカナメでもあります。
幹細胞はいろいろな種類が発見されていますが、どうやら髪の色素を作る細胞(melanocyte: メラノサイト)の幹細胞が、一つ一つの毛根にたまり場を作って潜んでいるようなのです。
ちなみにメラノサイトはメラニンを作る細胞(ラテン語で melas = 黒/cyte = 細胞)という意味です。そしてメラニンは黒い色素のことです。
このメラノサイトのたまごである幹細胞が毛根にたむろしているのですが、そのたまり場(原著ではnicheと呼んでいます)には交感神経の端っこがつながっています。
いわゆる大きなストレスを感じると、神経伝達物質であるノルエピネフリンがその神経の端っこから放出され、メラノサイトの幹細胞に、浴びせられます。すると幹細胞はたまり場から方々に追い出されるように出動し、いなくなってしまいます。一部は本来の役割であるメラノサイトになりますが、他は皮膚などに逃げていってしまうようです。
問題は、毛根の幹細胞のたまり場には、その後新しい幹細胞が配属されなくなることです。その理由はわかっていません。
すると、その毛根には色素を生み出す細胞のもと(メラノサイトの幹細胞)がなくなりますので、現状残っているメラノサイトが寿命などでなくなると(細胞は一定の周期で死滅します)、それ以降は白髪となってしまうのです。
ただし、もともといる毛根にいるメラノサイトそのものが、ノルエピネフリンの放出で直接死滅するわけではありません(あくまで標的になるのはたまごの方です)。なので、今いるメラノサイトの寿命のあるうちは、色素を作ることができます。
この話から、冒頭のあしたのジョーの話のように、数時間で白くなるわけではないことがわかります。髪全体が白くなるとすると、何ヶ月、何年とかかると思われます。
さて、この話にはいくつか大事なポイントがあります。
多大なストレスで白髪が急激に増えること(ただし、ある程度時間がかかる)
メラノサイトの幹細胞が追い出され、その幹細胞は元に戻らないこと
日頃のストレスを軽減する方法はありますが、「急激かつ多大なストレス」を避けるのは難しいかもしれません。こういうのは突発事故のように起こるからです。ただし、どのくらいのストレスが「急激かつ多大なストレス」と言えるのかははっきりしていません。一般的に知られているのは、命に関わるようなできごとのようです。オバマ大統領が大統領になる前と終わった後の8年間で明らかに髪の色が白くなりましたので、そのストレスの大きさも伺えます。
そして「メラノサイトの幹細胞が追い出される」ということは、たまり場に戻す方法が見つかれば、白髪を戻すことができるのかもしれません。
このあたりは、その後の研究結果を楽しみに待ちたいと思います。
今日はちょっと気になった記事について個人的な感想を書いてみました。