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お気に入りの本「とりかへばや物語」



「とりかへばや物語」について

私のお気に入りの本を紹介します。
お気に入りの本は「とりかへばや物語」で、平安時代末期に作られた王朝文学の1つです。

「とりかへばや物語」は、女性的で内気な若君と男性的で活発な姫君が、女装・男装して生きていく話です。
物語の名前の由来は、子どもの性別を「とりかえたい=とりかえばや」という父親の願望からつけられました。
物語は、基本的に妹の運命を追う形で進められます。

あらすじ

この主人公である若君と姫君は、ある権中納言の家で生まれた腹違いの兄妹です。
運命のいたずらにより、幼い頃から兄妹はそれぞれ女装・男装をします。
父親は、性別と異なる性格を持つ子どもに対して、幼い頃は頭を抱えながらも「まだ子どもだから」と黙認します。
しかし、成人する年頃になったとき、いよいよどうすることもできなくなりました。
そこで、父親は諦めて子どもらそれぞれにそのまま姿で社会人デビューさせるのです。

兄は女装のまま入内して尚侍に、妹は男装のまま右大臣の四の君と結婚し、権中納言兼左衛門督に昇進します。
初めは兄妹ともに本当の性別をバレることなく、世間的にはきらびやかな生活を送ります。
しかし、実際には2人とも性別に関する悩みを持ち続けるていたのです。

今日のおすすめの本

「とりかへばや物語」は、非現実的な怪奇性の濃い作品とされてきました。
しかも、明治時代においては恋愛のシーンで性的描写もあることから、人の心を惑わす変態的な作品という扱いまで受けました。
そのため、戦前はほぼ知られることのない作品の1つで、現在でも知名度は高くありません。

しかし、私はこの物語に関して現在にも通ずる価値観があるように思います。
ジェンダーが叫ばれる世の中では、男らしさや女らしさを求められることは少なくなったかもしれません。
それでも、まだまだ「意外と女の子っぽいね」とか、「この文章の作者は男かな?」などいう言葉が交わされます。
それが悪いことだとは思いませんが、みなさんにも体の性と性別から連想される性格が一致したり、しなかったりしませんか。
誰にだって両方の側面があり、性差を超えた表現はいつの時代にもあると思います。

「とりかへばや物語」は平安時代末期からそんなことをふと考えさせてくれる1冊でもあると思うのです。


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さやぼう
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