LiM RAiL

好きなことだけ考えていたい

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ごあいさつ

はじめまして。LiM-RAiL(リムレイル:読みは何でもいい)と申します。 イキった名前と読みだなと思われたことでしょう。一旦そのお気持ちはしまっていただいて、まずは初回なので、自己紹介から読んでいただけたら。 滋賀県生まれの関西人、高校卒業後は滋賀からもっと西の方の大学で文学を専攻し、就職に際して逆に東日本へ。自分の心とその時その時のあれやこれやに従っているうちに、日本をプチ横断していた、という男でございます。 文学を専攻していた、といっても、特に研究していたのは日本

    • ぬくもり

       ベッドの中で、彼はもぞもぞと動いた。掛け布団が引っ張られるせいで、私の体が少し布団の外に出る。いつものことだ。夜の空気に触れる肌から冷えていくような気がして、あっちを向いて寝息を立てる彼の背に抱き着いた。これも全部いつものこと。 ―ん…  返事とも寝言とも取れないくぐもった声を出しながら、彼はこちらを向くように寝返りを打った。彼が吐き出す空気は、存在感を放っている。 ―ごめんね  そんな言葉が口をついて出てきた。 ―まだ寝る…  彼は唇の間から声を漏らした。彼は上の空どころ

      • 『アンサー』(4)

                  🌃 「母さん元気だった?」 「おう。あれは俺と会って元気になった顔だったなぁ」 二人の肩の間を、夜風が通り抜けていく。厚手の上着でなくても丁度良い気温だ。 「忙しそうだった?」 「ああ。『今いいところ』らしいぞ」 「久々に聞いたな、それ」 「ちょっと雑に扱ってくるのも相変わらずだ。愛は母さんに似たな」 「そうかな」 「優希も母さんに似たな」 「そうかな?」 「そうだ。正直ちょっと悔しいな。でもそんなことより、もし優希が家出たら、寂しくなるなあ」 父の顔を直

        • 『アンサー』(3)

                    🎬 「父さん?」 蛍光灯の下、珍しく姉が頓狂な声を上げた。 「うん。父さん」 「アンタも宇宙飛行士志望?」 「いや、飛ぶ方じゃない」 「えっ、オペレーターとかってこと?」 美形の姉の顔に、頭の中の疑問符が浮かび上がっている。 「いや、あくまで開発とか、遠回りだったり間接的でも、サポートに」 「はえ~」 「予測してなかった?」 「『飛びたい』とかは言わないと思ってたけど…。てか、そもそもそっち方面だとは全く」 「そうだよね」      久々の再会を前にドキド

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        • 『アンサー』
          4本
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          『アンサー』(2)

                    🍣 「ただいまぁ~」 「おお、おかえり、愛」 「あら、父さんもう帰ってたんだ」 「おう。よし、揃ったな。それではこれより、二人のテストお疲れ様会として、寿司を食いに行く! 準備はいいかぁ!?」 「うちの父さんって元気よね」「ね」 「おっしゃあ、寿司ぃ!」  徒歩で店まで向かう。今日は歩いてばかりだ。大学の講義で一日拘束されていたという姉の愚痴を聞いているうちに店についた。 「肘が喧嘩するから、アンタは奥座んなさい」 「父さん寿司久しぶりだあ」 「お茶入れる

          『アンサー』(2)

          『アンサー』(1)

           二階の部屋を出て、リビングに向かうために階段を下りる。十四段あったことを確かめ、階段の傍にあるトイレのドアを開ける。  トイレで用を足してからリビングに入ると、皿を空にした父と寝ぼけまなこで食パンを咥える姉が、食卓に着いていた。新聞からこちらに視線を寄越した父は、コーヒーの入ったマグカップを口から離し、挨拶してきた。 「おお、おはよう」 「ん」 その後で、姉からも声を掛けられた。 「ぉあよ」 「ぉはよ」 「お姉ちゃんには返すんだよね?」  キッチンを通り過ぎ、洗面所で顔を洗

          『アンサー』(1)

          今日のお昼はフルーツサンド

          今日のお昼はフルーツサンド

          仕事終わりに味噌担々麺。味変の花椒が文字通り良いスパイス

          仕事終わりに味噌担々麺。味変の花椒が文字通り良いスパイス

          『with -holic』(3)

                    〇  不意に目が覚めた。あたりは真っ暗だが、知っている天井だとわかる。そうだ。自室だ。特に暑くも寒くもないのに、いきなり目が覚めた、ような気がした。  喉の渇きを感じたので、億劫だが起き上がってキッチンに向かうことを決めた。次第に暗さに目が馴染んできた。踏ん切りをつけるつもりで、掛け布団を足で跳ね除けた。  上体だけを起こし、床に置いたはずのスリッパを足で探す。ひんやりとした感触の中、生ぬるい温度を指先に感じ、思わず足を引いた。スリッパは諦め、素足で立ち上

          『with -holic』(3)

          『with -holic』(2)

                   〇                                             白い天井を見上げていた。知っているが馴染みの薄い天井だ。  肩で息をしながら上体を起こす。じんわりと汗をかいている顔に手を当てながら頭を回す。部屋を見渡し、出張先のホテルだと思い出した。 「ゆ、夢か。ゲームだったらバッドエンドだな。…あんな最後はヤだな」  ベッドから出てカーテンを開ける。眼下には大阪の街が広がる。朝の柔らかな陽光が部屋を明るくしてくれるおかげか、次第

          『with -holic』(2)

          『with -holic』(1)

           目の前のデスクトップパソコンの電源を落としたのを確認した。書斎を出てリビングへ向かう。空腹なので、フードデリバリーサービスで何を注文するか考える。特に理由もなくカレーを選んでいた。チキンやビーフ、キーマなど、三択ほど思い浮かんだが、どうせ全部同じだし、どれでもいいな、と思った。  リビングに入り、壁に掛けてある時計を見ると、もう既に一九時を回っていた。夕飯を済ませたら何をするか考えながら、ゴミ収集所に出しに行く。テレビで映画を観るのもいいが、酒がないと退屈になってしまうので

          『with -holic』(1)