見出し画像

児童文学に癒される

私が本好きになったのは社会人になってからだ。子供の頃に唯一何度も読んだのはミヒャエル・エンデの『はてしない物語』でそれ以外は記憶に残っていない。読書感想文に何を読んだのかも覚えていない。

半年程前にコロナになった。高熱が続いたせいか治ってもやる気が起こらなくて全てが面倒臭い。大好きだった海外ミステリーも登場人物の名前を覚えるのも苦痛で手に取れない。それでも本は読みたい。そこで選んだのがフィンランドの作家トーベ・ヤンソンの『ムーミン』だった。筋力が弱った腕にも負荷をかけない薄さだった。

ムーミンシリーズは積読の中の一部だった。北欧ミステリーにハマった時にその文化を知りたくて買ってあった。日本でも人気はあるけれど本を読んだ人は意外にも少ないと聞く。
シリーズ全てを読んでみて驚いたのはムーミンパパの自由奔放さと登場人物たちのアクの強さだ。かなり厄介な性格の持ち主が多い。それが読んでいくうちに自分の一部と重なってくる。この物語の凄さはそんな個性を尊重しているところだ。50年以上前に出版されているのに多様性を受け入れる事の大切さを教えてくれている。そして受け入れつつも相手に自由を与えるような距離感の必要性も。
同じように自然に対しても抗わない。やたら災害が起こるが身をまかせてしまう。恵みは大いに受け入れて厳しさの中に楽しみを見出す。

児童文学は単純だ。現実はもっと複雑だけれど作り込まれた大人の小説よりもリアルであったりもする。
そして心が疲れた時やもう一度何かを信じたい時に全てを受け止めてくれるような優しい時間を与えてくれる。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?