大型書店でHPとMPが全回復する女

　本屋が好きだ。店主のこだわりに唸る小さな本屋、ひととおりの新刊はそろっている駅前の本屋、すごい本に出会える古本屋。そういった本屋ももちろん大好きなのだが、私がもっとも心躍る場所は、大型書店だ。

　新宿の紀伊國屋書店、池袋のジュンク堂書店、表参道の青山ブックセンター、丸の内と日本橋の丸善。これらのお店のおかげで、私は生きてこられたと言っても過言ではない。特に、丸の内の丸善本店には大変お世話になっている。

　これらは、知的好奇心を満たしてくれる「知的空間」としての本屋だと認識している。新宿紀伊国屋書店にはビジュアルを中心としたクリエイティブ系の本もたくさんあるが、やはりメインは「読む本」だ。活字を追うことで、何かを知ったり、認識できる概念が増えたりして、自分の脳みそが鍛えられる。「知性のための本屋」とでも言おうか。

　知的好奇心は、生きていく上で欠かせない。「知りたい」「読んでみたい」という気持ちは、ワクワクをくれる。ワクワクする気持ちとは、生きたいと感じる希望そのものだ。私は大型書店にいると、それを感じる。だから行くと元気になれる、大好きな場所なのだ。

　そしてもうひとつ欠かせないのが、インスピレーションをくれる「ビジュアルクリエイティブ空間」としての本屋だ。具体的に言うと、銀座蔦屋書店。東京で蔦屋書店といえば代官山だと思うが、私は圧倒的に銀座の蔦屋書店が好きだ。

　代官山の蔦屋は、ナチュラル感と抜け感が良くも悪くもになってしまっていて逆に個性がない。しかし銀座の蔦屋は違う。GINZA SIXに入っているからだと思うが、空間がギラギラしているのが非日常的でおもしろいし、ギラギラしているくせに置いてあるもののセンスがちゃんと良い。よくこんなにビジュアル重視の本を集めたなと感心するくらい、いろんなビジュアル本がある。読む本もあるが、いずれも装丁が良いことから、見た目を重視して選書しているのだと感じる。

　本・商品・作品の配置もうまくて、“いきなり作品がある”感じがおもしろい。遊園地みたいだ。刺激がたくさんあって、感性が歓喜する。

　インスピレーションをくれる空間はワクワクする。丸善などの書店とはまた違った喜びをもたらしてくれるのが、銀座蔦屋書店と筆頭とした「感性のための本屋」だ。ここには「観る本・モノ」がたくさんあって、知的好奇心とは違う脳の部位が活発になる。

　どちらの本屋も、私にとっては宝箱のような場所で、行くだけでHPとMPが全回復する。

　そんな私の定番の散歩コースは、銀座をふらふら→銀座蔦屋書店→大手町のビル群を眺めながら散歩→丸の内丸善本店をうろうろ、である。蔦屋と丸善で数時間使うし、やはり行くと本を買ってしまうので荷物が重い。全回復したHPは結局少し減り、家に帰ると思わず「あ〜疲れた〜！」と言ってしまう。しかし心は完全に回復していて、生きる力がみなぎっている。明日からまた頑張れる。

　行けば必ず元気になれる場所をいくつももっておくと、人生が楽になると思う。私の場合は、大型書店、手芸屋さん、美術館だ。身体を動かすと元気になる人もいるだろう。自分で自分のHPとMPを回復させる術を、意識して増やしていきたい所存だ。