中国在住8ヶ月 4〜5歳子どもの言語習得の記録「母語の確立」
4ヶ月中国の幼稚園に通ってその後10ヶ月日本に滞在し、中国幼稚園復学してからの記録です。
2020年1月
1ヶ月の一時帰国のつもりがコロナロックダウンで10ヶ月の滞在に。
2019年9月に3歳半で入園して4ヶ月通い、中国語に慣れてきた矢先、冬休みで日本へ一時帰国のつもりがコロナロックダウンで10ヶ月日本に滞在することになってしまいました。
その間ほぼ祖父母宅で自宅保育。1ヶ月だけ日本の保育園に行きました。
娘は4歳になり、この日本滞在の間に飛躍的に日本語力が伸び、日本語が母語としてしっかり確立しました。
ひらがなとカタカナの読み書きができるようになりました。
母語は4歳ごろ確立するそうなので、この年に日本にいられたのは逆によかったのだと思います。
2020年11月3日 中国の現地幼稚園に復学
中国現地幼稚園復学後1ヶ月目
2週間で登園時に泣かなくなる。夜や朝に幼稚園嫌だ、とは言うが泣くことはほぼない。
最初の1週間、おしっこに行きたい時に先生に伝えられずに泣いたことが
数回と先生と娘本人からの報告。
お迎えの時お友達が娘の名前を呼んで近づいて来てくれるが娘は無視。どう答えたらいいのか分からないのだろう。
11月下旬 日本語に中国語が混ざり始める。その混ざり方が面白い。
6個 りょっこ(中国語で6はliu りょう)
2ヶ月目
12月11日、朝幼稚園嫌だと言って珍しく泣いた。理由を聞くとご飯がおいしくないのに先生が全部食べろって言うからと。確かに日本の子ども園の給食よりおいしくなさそうで、量も多い。
ママが先生にまだ中国のご飯に慣れてないから全部食べなくても怒らないで、って言ってあげるね、と約束して登園させたので先生にチャットで連絡。
先生からは娘は好きなものはお代わりして食べたりもするけど嫌いなもの(野菜など)は残す。残すときは無理強いはしていない、捨ててると言われる。
確かに家庭でも偏食なので(それはわたしの責任だ)野菜を残していることを容易に想像できる。それからも時々日本の園のご飯の方がおいしかった、中国の幼稚園はおいしくない、と言うが泣くようなことはなくなった。(彼女にとっては言葉よりご飯が大問題のようだ😅)
12月になると仲良しのお友達の名前を教えてくれるようになり、今日〇〇ちゃんいるかなあ?とか〇〇ちゃんが遊んでくれるとか守ってくれるとか言うようになった。
女の子二人と仲良しのようだ。3歳の時は男の子が1番の仲良しだったのに、もう性別で分かれるようになったのだなあ。
中国語も覚えて来てわたしにその日覚えた中国語を教えてくれる。
おしっこは「尿尿」って言うんだよ、とか、去年3〜4歳で通っていた時にはそんな報告はなかったので今はもう日本語が彼女の中で自分の言葉として確立し、日本語でAと言うのものを中国語ではBという。と言う捉え方をしている。
3歳の頃ではそのような翻訳的な概念はなかった。日本語で覚えていたものが中国語に置き換わるような覚え方だった。
これは苹果と言うのでわたしが中国語ではそうだね、日本語では「りんご」でしょ。英語では、、とか言えば「そんなん言わないで!」と怒るといった感じ。物の名前が複数あるということの理解が3歳ではまだ難しく、混乱しやすかったように思う。
4、5歳で母語が確立すると言語学者の本にも書いてあったが、ほんとうにそのようだ。
ただ、発音がやや間違っている。
尿尿 は niao niao だが彼女は niuniuだと言って聞かない。彼女の耳にはそう聞こえているらしい。喝水 を ko shui と言うので それとなくhe shui ね、と訂正したがなかなか直らない。しつこく言うと怒るので自然に任せるしかない。
聞いた音をそのままそっくり真似できる能力はやはり2歳ごろがピークかと思う。5歳になるともうその力はやや衰えており、それは子どもの脳の中で母語体系がしっかりしたことが影響しているのだろう。
教室で使っている小さな椅子のことを凳子 dengzi と言う。これはわたしは娘に教えてもらって初めて知った。わたしの中には椅子は椅子yizi と言う知識しかなかった。
その後私も中国人に凳子と言われてすぐに分かったので助かった。もう娘に中国語を教えられる段階が始まろうとしている。
12月後半になるとお迎えの時に自分からお友達の名前を大声で呼ぶようになる。
12月末時点で娘が口にする中国語
不要,自分の名前、友達と先生の名前、吃饭 躺下 喝水 拉屎 尿尿
凳子 吃完了 睡觉 苹果 糖果 巧克力 牛奶 米饭 汤汤 叉子
一起 我不给你完了(これは去年も言ってた)我不喜欢你 喜欢你
烦死你了(誰かに言われたのか・・)小朋友 幼儿园 走呀 再见
早上好 你好 过来 快点
3ヶ月目
1月3日 3日間のお正月休みの最終日
娘が朝起きてすぐにペラペラ中国語を喋り出した。
寝ている間に頭の中で整理が完了したようだ。まるで夢の中で中国語を話していたかのように。寝起きからこんなに長文を中国語で話すのは初めて。
ちょうどバイリンガル教育についての本を読んでいた母は、これはやはり母語の継承教育を家庭ではやっていかないといけないのだな、と実感した。
1月16日
冬休みが始まった。さすがに今回は日本に帰ったりしない。省の外へも出ず、5週間基本的に二人で過ごす。
この間に出来るだけ中国語のブラッシュアップと日本語の勉強も進めておきたい、と1日の中で日本語の学習と中国語の学習を組み込んだ時間割を作った。
が、娘がその通りに張り切ってやったのは初日だけ・・・あとは「お勉強嫌だ、遊びたい」などと言ってごっこ遊びやゲーム、Youtubeになってしまう。
日本語は去年日本滞在中にスマイルゼミを始めたのでそれでやっていこうと考えていたが中国のネット規制のせいか、タブレットにネットが接続できず、新しく配信されたものがダウンロードできない。
日本でダウンロードしているがまだやっていないものをやり切ったら、またこどもチャレンジの紙の教材に戻すことも検討しなければならない。
中国のネット規制は、本当に在住外国人にとって悩みの種だ。
これから小学校に上がったら教科学習できるだけの日本語力を維持していかなければ母語の喪失になってしまうので、家での会話だけでは不十分、何しかしら教材を使って読み書きの練習や数字などの学習は欠かせない。
中国語に関しては、全然追いついていない幼稚園の教材をやるのと、テレビのこども教育番組で漢詩や物語、歌を聞かせるなど、それ以外にアプリなんかもいいかな、と検討中。
テレビの漢詩の番組は流していると真似して発音したりしているので、少しは意味があるかなあ、と思いつつ様子見。
幼稚園ではもう年長なので現地のこどもたちは詩の朗読や物語の暗唱などをすでにしている。会話力と同時にこれらの練習もしていかないと娘がいつまでも仲間に入れない可能性がある。
やはり絵本やお話の読み聞かせが言語能力と思考力の発達、情緒の安定に最強だと思うので寝る前に今は日本語の絵本やお話を読んでいる。
バイリンガル教育研究者によれば寝る前にできれば今日は日本語の本、明日は現地語の本、あるいは一晩に続けて両方など、どちらも読み聞かせるのがいいそうだ。
もしパートナーが現地語のネイティブならそうすることは容易かもしれない。でも私一人でどちらもやるのは大変だし矛盾がある。
それは大人一人一言語の法則に矛盾する。
海外で育つ子どもの健やかな言語発達のためには外で現地語の波に呑まれているなら、家ではママは日本語だけ、と徹底しないと母語を失ってしまう、ということだ。
国際結婚で夫婦健在ならママは日本語、パパは現地語、というように大人一人一言語を徹底し、例えパパママがバイリンガル、マルチリンガルだとしても子供に対してはママには日本語で話すように徹底させた方が子供が上手に使い分けができるようになるのだということ。
そうしておかないと子供が外で現地語を習得すればするほど家でも母語を使いたがらないようになり、ママが現地語もわかると思えばだんだん現地語だけで済ませようとするようになる。
そうしているうちに子供は母語を喪失してしまう。
9歳以下で海外に移住した場合、親が危惧すべきは現地語の発達より母語の喪失なのである。
冬休みに得た成果
追記:冬休みに10日間隣町在住の日中国際結婚夫婦の友人のお家に泊まらせていただき、遊んだ。娘より1つ下のハーフの女の子がいて、その子は中国生まれ中国育ちで母親が中国人のため母語は中国語ということになる。
日本語は聞いて理解しているが、口から出る言葉はほぼ全て中国語。娘は反対に中国語はある程度聞いてわかるが、口から出る言葉はほぼ日本語。そんな状態で二人は楽しく一緒に遊んでいた。
買い物ごっこなどは横から見ていておもしろかった。「卖水果喽~卖水果喽~」(果物屋だよ〜)と完全に中国の屋台の人になっている友人の子どもと「すみません、これください」と完全に日本の客になっている娘。
それでもそのごっこ遊びはきちんと成立していて子どもはすごい。
しかし一緒にいる時間が長くなるにつれ、お互いに第二言語の方の言葉を使うようになった。相手とコミュニケーションを取りたいという一心からだろう。双方の言語発達に良い影響があったように思われる。