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体験者が思う、ペットとの同伴搭乗について

JAL機炎上でペットが犠牲になったことを受け、ペットの同伴搭乗が大きな話題になっているようだ。さまざまな声が行き交っているが、リリとヨーロッパや韓国旅行をした経験を踏まえ、ペットを機内持ち込みで旅行することについて考えた。今日は飼い主目線で。

小型ペットの同伴搭乗に対して賛成

ペットは貨物室ではなく客室でという声が強く上がっている事に関して、当然の主張と感じる。全ての種類のペットが機内への持ち込みに向いているとは思わないが、小型の犬や猫であれば、機内持ち込みをOKにしてもいいのでは、と思う。むしろ、家族と考えるペットを貨物に預けるのは酷いと思う。

ちなみに、2023年夏にはリリとヨーロッパ旅行を経験した。

「小型ペットの同伴搭乗」は欧米系航空会社のスタンダード

小型ペットは客室でという主張は日本では目新しくても、他の多くの航空会社がすでに実施して久しいのである。ゆえに、飛行機の機内にペット持ち込むなんで無茶ということは、井の中の蛙発言だと思う。

欧米のナショナルフラッグのほとんどは、小型のペット(犬や猫)の機内客室への持ち込みを許可している。ヨーロッパでの通常ルールは、キャリーを含めた8kg以下で、手荷物をしまう前の座席の下に収まるサイズであり、犬や猫がキャリーの中で体勢を変えられる余裕があること、などが求められる。もちろん、機内がペットで溢れかえることを防ぐために、1フライトあたりの機内持ち込み可能なのペット数には上限がある。

欧米がやっているから日本も追随すべき、ということではない。お隣の韓国の大韓航空とアシアナ航空もペットの機内持ち込みOKである。これだけ多くの国が何十年とやっているのであるから、日本も導入していてもおかしくないと思う。

緑のタグが機内への持ち込みが許可された証

動物アレルギーの人の人権はどうなる?

ペットを同空間にという話題が出ると必ず議論に出るのが、犬や猫の毛やフケへのアレルギーの人への配慮はどうなるのか、という点だ。犬や猫のアレルギーの人は世界の人口の10-20%(参照)いるので、無視できる問題ではない。

まず、機内では犬や猫の毛やフケが、空気中に広がりにくいことを明記したい。1つ目の理由は、ペットがキャリーの中に入っていて、大きく動き回ることはできない。多くの欧米のエアラインのペットの機内持ち込みのルールでは、動物愛護の観点から、キャリーの中で犬や猫がターンできなければいけない。そもそも大きく動けないのであるから、家など自由に動ける空間と比べて空気中に毛やフケが広範囲にわたって広がることはできない。さらに、2つ目の理由は、ほとんどのキャリーは、バッグの3面はクローズでトップ部分がメッシュになっている、もしくは前後の部分のみメッシュになっているデザインだ。つまり、キャリーの大部分は布で覆われており、そもそも毛やフケが空気中に出ていく口が限られているのである。

ペット機内持ち込み用のリリのキャリー

それでも犬や猫のアレルゲンは小さく空気の中で漂うことを得意とする。しかし、機内の環境は、2−3分ごとに機外から新鮮な空気が取り入れられて、さらに機内を循環する空気は高性能空気フィルター(HEPAフィルター)も通る。家の犬や猫アレルゲン対策でもHEPAフィルターが有効と言われているのであるから、機内は密閉空間とはいえど、かなりアレルゲンがとり除かれているのではと考える。

機内の空気循環について」JAL公式サイトより

さらに、犬や猫アレルギーの人のうち、猫アレルギーの人が圧倒的に多いそうだ。原因は、猫の毛は犬と比べて非常に細く、少しの風で舞い上がる性質があり、長く空気中を漂ったり衣類に付着して取れなかったりするからだ、と。加えて、これからは猫アレルギー一択か、とアレルギークリニックの先生が語っている(参照)。猫アレルギーの方が多い中で、旅行に連れていくのは犬が多いという統計がある。少し前のニューヨークタイムズのアメリカの統計ではあるものの、犬の飼い主のうち39%が旅行に連れていくのに対し、猫は11%であるそうだ。
日本にも同じ傾向が当てはまるとすると、機内で猫のアレルギーの人が猫にであって苦しい思いをするというのはかなり低い確率のように思う。

もちろん、これは確率の問題である。飛行機での死亡事故は宝くじにあたるよりも低い確率と言われてきたものの、今回の飛行機事故のように、出会してしまえば100%である。もう一つの手段は、「席を変える」ことで機内で同居できると考える。航空会社側での采配になるが、非常口に着席する時と同じように、ペットの人が横にいることをチェックイン時に告知し、アレルギーの人もしくはペットの飼い主のほうをできるだけ離した席にすることで、両者ハッピーが叶うのではないか。ペットの機内持ち込みを長年やってきたアメリカの航空会社でもそのような対応で、両者を乗客として迎え入れている。

電車・バスもOK、なぜ飛行機はダメなの?

機内は密閉空間に思われるかもしれないが、上に記したように空気の入れ替えを常にしている空間である。それならば、空気の入れ替えができるバスや電車と同様の空間と考えられる。では、電車もバスもキャリーに入れて乗車できるのに、なぜ飛行機はダメなの?と問いたい。

ドイツで電車の到着を待つ

「家族のように大切に扱う」でもやっぱりただの貨物

リリの飼い主としては、宝くじにあたる確率よりも低い航空事故のような非常事態の心配よりも、自分の手から離して航空会社へ預けることに対してどうしても信用できない。自分の子どもを知らない会社の人に預けるようなものだ。

リリと何回も飛行機に乗っている。リリは、飛行中は平和に寝ていても、飛行機の離着陸(魔の11分!)を一番怖がる。繊細な犬の聴覚には離着陸の大きな音や振動がとても怖い。その不安な姿を目の前で見たからよく分かる。かならず緊張によるパンティングしながら、キャリーから出して抱っこしてくれというのを目や鼻声で訴えてくる時間だ。いつもメッシュの上から手の匂いを嗅がせながら、声をかけながら、やっと離着陸の時を過ごすのだ。

この時に飼い主が横にいなかったら、どれほど寂しく怖い思いをするのだろうか。航空会社は、電気のついた温度が制御された貨物で「家族のように大切に扱う」というが、そもそもそのペットの横に家族の飼い主がいないだから。ペットを貨物に預けるなら、飼い主も貨物に乗れるくらいの環境でなければ安心できない。過去には、炎天下に20分以上放置された事により熱中症で死亡したケースもある。家族のように、といい言葉を言ってみても、基本的には、命ではなく荷物という扱いだということがよくわかる。

ペットを守るは航空会社じゃなくて飼い主

ペットを飼っている人なら分かるだろう。そのペットは家族であり、その犬、その猫それぞれが唯一無二の存在なのだ。法律で手荷物扱いになっていようが、フォームに緊急時にはペットは連れて出れないとサインしようが、緊急時には是が非でも身を張ってペットを守るという人は多いはずだ。法律では財布や携帯と同じ扱いでも、現実は違うのだ。

緊急時にリリを置いてくように言われても、人間の親が3歳児を抱いて逃げるように、リリが興奮して噛もうが引っ掻いてわたしが血まみれになろうが、きっと胸に抱えて脱出しようとする。キャリーは置いていくだろう。

ペットを守ることができない状況にならないように未然に防ぐのも、また飼い主の責任であると思う。ペットが貨物にいたら、非常事態が起きた時に積極的に守ることはできない。だからこそ、どこにどんなリスクがあり、そのリスクをとっても価値のあることなのか、飼い主として賢く判断したい。航空会社も、今後ペットの飼い主が選択できる複数のオプションを提供してほしい。

こんなに責任があるなら、ペットと旅行をやめれば?

人生はリスクの連続だ。家の中で縮こまってれば鬱になり、外を散歩すれば車に轢かれるかもしれないし、転んで骨折するかもしれないし、飛行機に乗れば事故に遭うかもしれない(注1)。仕事をすれば失敗するかもしれないし、好きな人にはフラれ続けるかもしれない。でも、やりたいことをやらずいつも恐れていたら、人生生きている心地なんてあるんだろうか。

リリと旅行して思うのは、こんなに素敵な経験はないのだ。人間が旅行に行って思い出作りをしたいと同じように、ペットとも旅行をすると間違いなく強い絆が生まれる。ペット側も同じで、飛行機で怖い思いをしても新しい場所に着いた時の喜びや興奮は怖い思いを上回る。だから、我が家では毎回キャリーを出すたびに、リリはこの機会を逃しまいと一目散に飛び込む。

旅行に行かないことも時と状況によって選択肢だと思う。それは賢いリスク管理というものだ。わたしの場合は、貨物に乗せるなら飛行機での旅行はしない。でも、それ以外の手段でできるだけペットと旅行をしたいと考えている。

ひとりの人の人生の中に幾つの強い絆を持てるかが、人生の豊かさではないだろうか。その絆を強めてくれ、一生の思い出になるペットとの旅行を今後も続けたいと思う。


(注1)飛行機事故のリスクというのを調べてみた。日航機墜落事故や9.11のテロのインパクトが強くて飛行機に乗るのが怖いという人がいる。IATAの発表によると死亡事故リスクは、0.11。死亡事故に出くわす確率は、毎日飛行機に乗って2.5万年飛ぶ必要があるらしい。このIATAの数字解説はピンとくるようで、まったく来ないのだが、非常に低いということはよく分かる。

The industry 2022 fatality risk of 0.11 means that on average, a person would need to take a flight every day for 25,214 years to experience a 100% fatal accident.

IATA Releases 2022 Airline Safety Performance

ちなみに、、TOPの画像はAI生成画像で、実際のリリ搭乗ではないです。


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