シェア型書店で本屋をやりたくなってきた
ある情報を記憶する際に、関連する別の情報とまとめて、かたまりとして覚えることを「チャンキング」という。
中学生くらいまでの私は、読んだ本の内容を忘れなかったように思う。過去を美化しているだけかもしれないが、少なくともあらすじや概要を説明できるくらいには覚えていた。
最近、自分が読んだ本の内容を覚えていないことに気がついた。
湊かなえ『山女日記』の続編が出る時に、前作の内容が記憶になかった。東野圭吾『透明な螺旋』を読む前に、湯川先生の人物像が曖昧だったので過去作を振り返ろうと思った。数ヶ月ぶりに漫画の単行本を買うと、前巻までの展開はうろ覚えだ。
年齢のせいか、読解力が低下したのか、物語に深く入り込めなくなったのか、日頃触れる情報量が多く読書の記憶が頭に残らなくなったのか。原因はわからないが、とにかく私は、面白いと思った本の内容をある程度記憶に留めておきたいのだ。
冒頭のチャンキングの概念は、日本語教育能力検定試験の勉強中に知ったものだ。他にも、単に情報に触れる「インプット」と区別して、特徴に気づいて理解し自分の引き出しに加える「インテイク」という言葉がある。
これらは言語学習における記憶ストラテジーの一種だが、そもそも誰にでも身についているのではないかと思う。
情報を理解することは、既存の知識や過去の経験と結びつけて、つまりチャンキングして、各々が銘々の価値体系の中に位置付けること、すなわちインテイクではないか。だから、人によって情報の受け取り方が異なるのではないか。
なお、既存の知識と結びつけることもチャンキングと呼ぶかどうかは、有識者の方からご教示願いたい。
インテイクした情報から、自分の価値観や行動や生活や生き方が形作られる。そのはたらきを楽しく自由に広げられるのが、読書だと思う。
物語中のできごとや登場人物、根底にあるテーマや問題意識、作者の背景が、読者の価値体系に自然と取り込まれているのだと考える。
人によって異なる、この芋づる式の価値体系を、コミュニケーションできたらいいなと考えた。
その方法として、真っ先に思いついたのは書店だ。
読者層を選ばない一冊の本からマインドマップを作り、結びついたニッチなコンテンツを同じ棚に並べる。訪れた人にマインドマップを広げてもらったり、感想を書いてもらったりして、互いの世界を広げていく。
とても楽しそうだが、幸か不幸か私はライフワークとしてやりたいことが別にあるので、やるとしたら趣味レベルか老後になるだろう。
そんなことを考えていたら、なんと、シェア型書店という趣味程度に本屋になれるサービスがあるではないか。
なんとなく、実現性が高い構想に思えてきてしまった。