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恋人とのセックスの回数が減るのはなぜか【脳科学】
タイトルから分かる通り、ストレートすぎる疑問をぶつけてみました。
このことを考えたことがある人は多いのではないでしょうか。
検索サイトで「セックス 減った」と検索すると、
「セックスの回数が減ってきた原因は浮気かも!」
「カップルがいつまでもラブラブでいられるための対処法!」
というようなコラムが無限に出てきます。
カップルにとったら繊細な問題であるため、これだけ皆さんがこぞって検索するということは、
「2人で話し合う」というよりも「どちらかが悩んでいる」んだと思います。
この記事では、
「お互い大好きなのに、なぜか最近セックスの回数が減ってきた」
という悩みの原因を、ある本を参考にして科学的に解明していこうと思います。
・浮気しているから
・時間が取れないから
などの物理的な原因は考えないこととしますね。
参考書籍の紹介
私が今回参考にした書籍は、
ダニエル・Z・リーバーマン氏、マイケル・E・ロング氏著、梅田智世氏訳「もっと!愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学」株式会社インターシフト(2020)
です。
この本のタイトルに答えが書いてありますが、今回の悩みの原因の鍵を握っているのは脳の化学物質です。
「脳科学」という字面を見るだけで眠くなってしまいそうですが、本書は専門書ではないので私のようなごく普通の一般人でも理解できる内容でした。
本書の主役はドーパミンという脳の化学物質です。
「ドーパミン」という言葉は誰でも一度は聞いたことがあると思います。
その言葉から連想されるのは、
「やる気みなぎる感じ」
「精力的な感じ」
「ハッピーな感じ」
など、自分自身を活発にさせるような物質というイメージがありますよね。
念のため、ドーパミンを堅苦しく説明しておこうと思います。
ドーパミンとは…
ドーパミンとは、中枢神経に存在する神経伝達物質である。ドーパミンは、アドレナリンやノルアドレナリンに生成する前の物質(前駆物質)である。運動の調節、ホルモンや循環の調整、学習、意欲、喜び、快楽に関与している。
ドーパミンがどのように私たちを司っているのか、読み解いていきたいと思います。
ドーパミンは熱愛、H&Nは友愛
ドーパミンは活性化すると快感をもたらす行動に抗えなくなるということから、一部の科学者からは「快楽物質」と呼ばれているそうです。
しかし、ドーパミンの本質は「快楽」ではなく、「期待」であることが、最近の研究で分かりました。
「期待」について分かりやすく、本書を引用して説明します。
恋人から甘いラブレターが届いたとき(「なんて書いてあるんだろう?」)、長年会っていなかった友人からメールが来たとき(「どんな知らせがあるのかな?」)。あるいは、ロマンスを求めているさなかに、なじみのバーのべたつくテーブルで新しい素敵な出会いがあったとき(「何かが起きるかも?」)。だが、サプライズがおなじみの出来事になると、その目新しさは薄れ、ドーパミンの勢いも衰える。そうなったら、もっと甘いラブレターやもっと長いメール、もっと心地いいテーブルを与えられても、もう勢いは戻らない。
私たちの脳は、予想外のものを求めて未来に関心を向け、常に何かを予測して生きているんだそうです。
つまり、予想外のいいニュースがもたらすゾクゾクするような快感を得るために、ドーパミンを始動させているのだそうです。
「おなじみ」になってしまえば、興奮(期待のスリル)は薄れ、新たな対象が関心を引きはじめていくことになります。
「初期のアツアツな恋愛は、いつかは冷めてしまう」ことの理由が、科学的に解明されてしまいました。
しかし、初期のアツアツが冷めてしまっても、安定した仲の良いカップルや夫婦はいますよね。
今回の疑問の答えに近づいてきた気がします。
人類学者のヘレン・フィッシャーによれば、初期の恋愛、すなわち「熱愛」は、12ヶ月から18ヶ月しか続かないという。そのあともカップルが絆を保とうと思ったら、「友愛」と呼ばれる違う種類の愛を育まなければならない。
友愛の特徴は、いまの現実に対する深く永続的な満足感、変化に対する嫌悪、少なくともパートナーとの関係という点での変化に対する嫌悪だ。
今の恋人との関係を長続きさせるためには、「友愛」へと人間関係の性質を変えなければいけないそうです。
そこで、期待の快楽を求める未来志向のドーパミンとは対照的に、感覚や感情から今を楽しむための喜びをもたらす現在志向の科学物質があります。
それは、皆さん一度は聞いたことがある、「幸せホルモン」です。セロトニン、オキシトシン、バソプレシン、エンドルフィンなどを指し、本書では現在志向=Here&Now(H&N)と呼んでいます。H&Nは友愛を司っているのです。
周りの人もしくは自分自身の体験で、
「恋人とのセックスは減ったけど、毎日愛情を感じて満たされているよ。」
なんて羨ましい話を聞いたことはありませんか?
そんなカップルは、時間と共に熱愛型から友愛型へ移行し、新しい愛の関係を2人で育むことができているということなのです。
たいていのカップルでは、ドーパミン的な熱愛がH&N的な友愛に変わっていくのに伴い、セックスの頻度は少なくなる。これは当然と言える。というのも、オキシトシンとバソプレシンはテストステロンの放出を抑制するからだ。
これが今回の答えですね!
友愛(H&N)は、性欲を高めるテストステロンを抑制しているんですね。
(ちなみに、テストステロンはドーパミンの作動性を引き起こす作用を持っています。)
愛し合っているカップルにおいて、セックスの回数が減ったからと言って、何かおかしいと感じる必要はないのですね。
むしろ、2人の絆をより深いものにしているので、誇らしいことだと思います。
友愛が無かったら…
友愛は、性欲を抑えることが分かりました。
しかし、カップルの間に友愛が無くなったら…
テストステロンはオキシトシンとバソプレシンの放出を抑制する。この事実は、テストステロンの血中濃度が生まれつき高い男性が傾向としてあまり結婚しない理由をある程度まで説明している。また、独身男性は既婚男性よりもテストステロンが多い。そして、結婚生活が不安定になると、その男性のバソプレシンは減少し、テストステロンが増加する。
友愛から生まれるH&Nが減少することで、ドーパミン優位になり、浮気や不倫の衝動に駆られるということなのでしょうか。
(H&Nが減ったからといって全員が浮気や不倫をするという訳ではありませんが…)
悪い事だと分かりつつ、世間で浮気や不倫の悩みが尽きない理由は、私たちの脳の化学物質に支配されているからなんですね。
おわりに
本書では、「恋人とのセックスの回数が減るのはなぜか」という私たちの気になる疑問について科学的に説明しており、非常に興味深かったです。
新しいパートナーや情熱的なあこがれというドーパミン的スリルに別れを告げるのは簡単ではないが、それができるのは成熟の証であり、長続きする幸福への第一歩でもある。
ドーパミンは、私たちが恋をするきっかけを与えてくれる大事な役割を担っています。
愛への道標となりますが、それを長期的な幸福にするには、次はH&Nの出番となるのですね。
永続的な愛の関係にはドーパミン的な魅惑的なスリルは無いかもしれませんが、2人で築き上げる愛の世界ほど美しいものは無いと思います。
ドーパミンはけっして満足しない。ひたすらもっとと言い続けることしかできないのだ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。