高校生 7
高校生になって、グループに所属してみたりもした。1学科35人程度の学科が4学科ある学校だった。そのうちの1学科。35人あまりの中の小さな世界。クラスの中でも割と華やかな子たちに囲まれた。中学の時の私が欲しかったものだった。一緒に過ごしてはいたけれど、どこかウマが合わなかった。自然とお昼ご飯を食べるメンバーが変わった。グループを離れた。「大人数」だとか「いつメン」というものに憧れていたけど、馴染み方がわからなかった。1人でいいや。諦めた。休み時間、寝てるかのように机に伏せながら楽しそうなクラスメイトに焦がれた。またしても私は、誰かの特別になれない。孤独でいることをかっこいいと言い聞かせながら感情を隠した。
不思議なことに、その感情を理解してくれるのは中学からの友人だった。「うるさい笑い声を聞きながら子供かよって悪態をついて、机に伏して、ちょっとだけ泣いてることに気がつかれないように休み時間を過ごしたことがある。」泣いてる姿は想像つかなかった。一匹狼な姿がかっこいいと思っていたけれど、劣等感をかき消すものだったことに気が付いた。彼女も同じように孤独だった。後から気がついたけれど私たちは感情の成長する速度や起きる出来事のタイミングが違っただけで似たもの同士だった。社会人と学生だったけれど、高校生の頃は彼女とよく遊んだ。
15歳になった私たちは本当に世間を知らない子供だった。
知り合いの紹介でカメラ屋さんで働き始めた友人とその日も遊んでいた。「好きな人ができたかも!すごいかっこよくて!」広島から遊びに来ていたお客さんにナンパされて連絡先を交換したらしい。心配はしたが、大人の男の人がかっこよく見える年頃だった。
「今から迎えに来てくれるらしい!一緒に行こや!」知らない男の人たちの車に、2人で乗った。洋楽が流れていた。東京は住む場所じゃなくて遊ぶ場所だとか、広島にもクラブがあるだとか、そんな話を聞いた。東京、人生のうちで足を踏み入れるかどうかもわからない場所。魅力的だった。知らない人の家についた。
たくさんの缶チューハイが目の前に広がっていた。家主のお兄さんに頭を支えられながらお酒を飲まされた。チョコレートと飲むと飲みやすいよって食べさせてももらった。元彼の名前が刻んであるタトゥーが恥ずかしいと友人が言った。「じゃあ消してあげる」家主のお兄さんが友人の腕を黒く塗りつぶし始めた。もちろん生涯消えることは無い。異空間だった。お酒を飲ませられながらお兄さんの手に名前が入ってることに気が付いた。「元嫁と子供の名前。」サラッと言われた。子供ながらにダサイなって思ったけれど、悪いことをしてる事実が優越感だった。友人が、潰れた。トイレで蹲ってぐったりしていた。たくさん飲んだけれど私はお酒に強い体質だったらしい。何も変わらなかった。
私の家は貧乏でもなければ裕福でもない一般家庭だった。父親は公務員で母親は専業主婦。ご飯はみんなで取り合って食べるし、食卓には何品もおかずが並ぶ。普通の、なんならちょっと恵まれてるくらいの家庭。
親を心配させる前に帰った。潰れてる友人を置いて、友人が好きだと言った23歳の男の人に途中まで車で送ってもらった。男の人に車で送ってもらってる事実にちょっとドキドキした。友人を心配する心はあったけれど、置いて帰ったことに何も罪悪感は無かった。酔っ払って潰れた15歳の女の子に、24歳の男の人が2人きり。何も無いわけがない。後日話を聞いても自業自得くらいにしか思わなかった。大丈夫?すら聞かなかった私をよく友人は軽蔑しなかったと思う。
親は大量にお酒を飲んできて、友人を置き去りにしてきた私に一才気が付かなかった。気がつかせなかった。
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