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ウォーキングや手指の運動と脳血流の関係

前回は脳血流を調節する働きとして化学的調節についてまとめました。


今回はもう一つの脳血流を調節する働きとして考えられている神経性調節についてまとめていきます。


脳血管には非常に密な神経分布があることが分かっています。なので、血管の拡張や収縮は神経によってもコントロールされていることに間違いはありません。

この脳血管の拡張、収縮をコントロールしながら脳血流を調節している神経線維は①交感神経系 ②副交感神経系 ③感覚神経系に分類されます。


ではまず交感神経系から

この交感神経系は、上頚神経節という交感神経節から頭の中に入り、脳血管に分布しています。この上頚神経節を刺激すると脳血管は収縮し、脳血流が減少することが様々な研究からわかっています。

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②副交感神経系

副交感神経系による調節は大脳基底部にある『マイネルト核』から大脳皮質や海馬へ投射されるコリン作動性神経によるものです。

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このマイネルト核から大脳皮質へ投射される神経をコリン作動性神経といい『アセチルコリン』という伝達物質を大脳へ放出します。これにより、脳の血管が拡張し、脳血流が増大すると言われています。(最近の研究では血管内皮から放出される一酸化窒素(NO)がコリン作動性神経を活性化させるとの報告が多い)

アルツハイマー病患者ではこのコリン作動性神経が変性・脱落しており、脳血流量が低下していることが報告されています。

ウォーキングや手指の運動が脳血流量を増大させてアルツハイマー病の予防に良いと言われて言われていますが、四肢(手・足)の運動により、このマイネルト核が刺激されるためだと考えられています。


また、運動以外にマイネルト核を刺激する方法としては皮膚に刺激を入れることです。

これも背中などよりも手・足の皮膚を刺激することで優位に脳の血流が増加すると言われています。

咀嚼もこのマイネルト核が刺激されるということがわかっています。


③感覚神経系

脳血管壁の感覚神経は三叉神経節からの線維が鼻毛様体神経を介して脳血管に分布しています。この鼻毛様体神経を刺激すると脳血管が拡張し、脳血流量が増加することがわかっています。そのため、片頭痛の原因の1つがこの三叉神経によるものだとも考えられています。

また、交感神経系や副交感神経系による脳血管の調節は、定常時には作用しない設定となっており、感覚神経の三叉神経からの情報が、交感神経節、副交感神経節へと入力されることで血管反応を調節していると推察されています。


以上脳血管に対する神経性調節についてまとめました。この分野はまだまだ研究が盛んに行われており、新しい発見がこれからもどんどん出てくると思います。



参考文献

・清水利彦、鈴木則宏:脳循環調節における脳血管支配神経の役割 脳循環代謝 17:138〜144(2005)

・鈴木則宏:脳血管疾患病態の多様性と神経伝達物質の機能解明      臨床神経学 52巻11号(2012:11)

・後藤文男:脳循環の神経調節 日本脳卒中学会 1巻4号(1979:4)

・佐藤昭夫:脳血流の神経性調節をめぐって 日本薬誌112 5p〜9p(1998)




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