![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/153201901/rectangle_large_type_2_0df06aab2a6994224800f003f290401c.png?width=1200)
Photo by
bishi_bashi
虫の知らせ
虫の知らせ
なんとなくよくないことが起こりそうな予感
8/29
天気予報では近畿に台風が最も接近する日だったはずが中々進まず、幸運なことに私は北海道から兵庫に帰ってくることができた。
でも、雨も降らず、風も吹かず、時に雲間から日差しすら差し込む天候に、私は少し肩透かしを食らった気分だ。来るぞ来るぞと散々脅しておきながら来ない。神戸から二時間かかるような山奥にある実家につくまで、天候は崩れることはなかった。
私の実家の周りは山しかない。鳥の声と共に起き、虫の音を聞きながら眠るような、人工の音など一切聞こえないような場所。
しかし、私が実家に帰った時、虫や鳥の声は一切しなかった。風の音を追うようにして聞こえる木々のざわめきがいつもより大きく聞こえる。
「何かが来る」
そう感じさせるような静けさ。
天気予報など見なくても台風が近づいていることが分かった。
「急ごう」
荷物を車から降ろし、車を安全な場所に移動させて私たちは台風を待った。
その日の夕方から雨が降り始めた。天井をたたく雨音に窓を揺らす風、近くで鳴り響く雷。虫の音は一切聞こえなかった。
翌日
深夜に激しく降った雨は朝には弱まっており、降ったりやんだりの天気だった。鳥や虫は雨が止むたびに声をあげ、降る前には静まり返る。
広範囲の天気予報や雨や風の強さを知る必要がなかったら、こんなに高性能な予報があるだろうか。
耳をすませば草むらの中や木の上に、優秀な天気予報士が数百いるのだ。
天気の変わり目、季節の変わり目は自然が知らせてくれる。朝の庭に来る虫が変わり、夜に聞こえてくる音が変わる。植物が芽吹くにおいがすると春が来たことが分かる。
時にはスマホやテレビから離れ、庭先でボーっとすることでインターネットには落ちていないような情報を自然が与えてくれるかもしれない。