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照れとHey Siri と慣れ

昔から変な羞恥心があって、口に出すのが恥ずかしい言葉や表現がある。例えばちょっと意図の入ったメニュー名。

学生時代はびっくりドンキーのおろしそバーグに悩まされた。おろしも紫蘇も好きで、和風ハンバーグが食べたいのに、おろしそ と口に出すのが恥ずかしい。おろし+しそ だからおろしそ!わーうまいこと言うー!みたいな現場にいたら良いのだけど、そのノリがすっかり終わっているこの場で、なぜ冷静な私がおろしそと読み上げなきゃいけないのか。ハンバーグがバーグなことも納得いかない。何でおろししそハンバーグと名付けてくれなかったのかといつも腹が立った。

とろとろオムライス、的なものも苦しい。とろとろオムライスが出来上がった時、多分とろとろだと感動したんだろう。けどその盛り上がりに私は同席してない。その私がとろとろオムライス、と口に出すのは、これまで関係なかったのに急に仲間顔して話題にぐいぐい入っていくような恥ずかしさがある。じっくり煮込んだ〇〇、とか、□□さんの畑で取れた〜、も難しくて、修飾語を無視して頼んでしまう。説明文を添える形にしてほしいと切に思う。気まぐれサラダ、あたりが限界。

そして、恥ずかしいと言えばSiri。SiriがiPhoneに搭載されたのは2011年だそうで、私はちょうど2011年からiPhoneユーザーだ。でも私はこれまでSiriを遠ざけていた。

Hey Siri と言うのがとても無理だったからだ。

日本語でヘイと呼びかけることはまずない。へいらっしゃいのへいとか、返事としてのへぇ、ならばまだ自然だ。朝ドラおちょやんでちよちゃんがへぇと返事をするのは品があってかわいらしかった。

私だって海外出張などで、向こうで会いたかった人に会ったりすれば、ヘーーーーイ!と駆け寄ってご挨拶くらいはする。そういう空気感にはしっかり染まってしまえる。染まりすぎてヘイタクシー!くらいはかぶれることだってある。その辺りはなぜか全然恥ずかしくない。

でも、日本で日本人の私が自分のマシンにヘイ!と呼びかけるのは全く無理。だからHey Siri は絶対普及しないと思ったし、日本語仕様なら「ねぇ、Siri 」に変えればいいのにと本気で思っていた。他社までOK Google とか言い始めて、正気の沙汰かとびびっていた。

友達がまったく気負いなくApple Watchに向かって「ヘイSiri!30分後にアラームかけて」 と指示を出した時も、度肝を抜かれた。マキちゃんSiri使うんだ!と言ったら、あはは、慣れたら便利だよーと言っていて、へぇーー!と思ったものだ。

しかし、Siriとの蜜月は突然やってきた。うちにHome pod miniが来たのだ。

ひょんなことから頂くことになって、うちは小さいBluetoothのスピーカーを使っていたのが故障気味になっていたので喜んでありがたく受け取った。

小さいのに音も良くて、何より丸っこいのが可愛くて、いいもの頂いちゃった!とときめきつつ、機能を使いたくて調べると、やはりSiriが出てくる。

Home podに向かってヘイSiri!と話しかければSiriが回答して対応してくれるわけだ。当然の機能だ。

どうしても使ってみたい。iPhoneに話すのと変わらないってわかってるけど、丸くて良い音を出すこの機械が反応すると思うと全然わけが違う。

意を決しようとする私の横で、夫がやすやすと「ヘイSiri!今日の天気は?」とやってのけた。ちなみに夫はメニューも完全音読派で、「店長おすすめ 絶品ホロホロ〇〇煮込み」みたいなものも頭からそのまま読む心の強さがあって尊敬している。

Siriはスラスラと今日の天気をこたえた。「いま雨が降っているようですよ」みたいな。なんせSiri的なものを全然使っていないので今頃になって、すごい!自然!と感激する。Home podは頭が光るのだけど、こんなフワフワ光りながら丸い物体が良い音で寄り添う系の話し方をするなんてかわいくてしょうがない。

仕方がないので、私も勇気を振り絞って夫に続き「ヘイSiri」と声をかけた。Siriが反応してくるくる光る。最初は体中熱くなりながらヘイと言っていたが、Siriが、ハイ と言ってくれるうちにあっけなく慣れた。もう毎日天気を聞くところから1日が始まる。

この前天気を聞かれたSiriは突然、「アフタヌーン雷雨」と言った。「ライオネス飛鳥」のように自然に言った。まー可愛らしいと思うとともに、ヘイSiriくらいで恥ずかしがってて私は本当、チャレンジってものを知らないな、Siriは毎日異文化に降臨して、毎日午後とか午前とかちゃんと言ってるのに、突然のアフタヌーン。それでもめげることなくしらっと音声を切る。立派なもんだと感心までした。

そういうわけで、ヘイSiriを克服した私だ。何が恥ずかしかったか思い出せはするが、恥ずかしくなることはもうないだろう。メニューの方もあまり深く考えずに読み上げたいものだ。

アフタヌーン雷雨の日、午後は本当に雷雨になった。外にいて雨に濡れたのだけど、アフタヌーン雷雨きたよ!と夫と笑い合えたのでよかった。(Siriに聞いたのにめんどくさくて傘を持っていかなかった)

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