好きな鬼ごっこはなんですか?
「今日は園庭でバナナ鬼ごっこしたん!」
4歳の息子が、チョコチップクッキーをほおばりながら話している。
「え、なにそれ。どんなん?」
「えーっと。最初に、おに決めるん。そうして、ほかの人は逃げる。おににタッチされたらバナナになるんや。」
「バナナになるん?それで?」
「だれかに皮むいてもらったらバナナじゃなくなるから、また逃げることができるん!」
「なんじゃそら!面白いなぁ。」
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ネットで調べてみると、確かにあった。「バナナ鬼ごっこ」
全国の保育園で流行っているらしい。ここ最近できた遊びらしいので、昭和生まれの私はもちろん知らない。
私が知っている変わり種の鬼ごっごと言えば「氷りおに」「手つなぎおに」「色おに」くらいだろうか。
中でも私が好きだったのは「色おに」。「色を探す」というのが面白かった。みんなと被らないところをタッチできた時は、たまらなく嬉しかったものだ。
それに、ほかの鬼ごっこって耐久レースみたいじゃないか。ひたすら走って逃げなければいけない。正直、ちょっとしんどい。その点「色おに」は、指定された色を見つけてタッチさえすれば鬼につかまることはない。そういう気楽さが良かった。
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「手つなぎおに」には胸がチクンとするような思い出がある。
小学校5年生の時の話だ。体育の授業で「手つなぎおに」をやった。先生はこんなルールを作った。
「男子が鬼になります。女子は逃げてください。」
なんと言う無茶ぶり。先生、何を考えているんだろうと思った。小学校5年生なんて、ガチガチに異性を意識する年頃だ。そんなわたしたちに、「男子から女子にタッチして、手をつなぐ」とはなんとまぁ。どんな挑戦状ですか。
そして始まった「手つなぎおに」。クラスには、男子とも仲のよい女の子がいるので、まずはそういう子がタッチされる。
女子の方が人数が多かったので、男子はつかまえようと思えば誰でもつかまえられたはずなのだ。けれどお互いに意識しているので、男子も躊躇しているようだった。
タッチされない女子は女子で、ひとところに固まったまま様子をうかがっていた。私もその中のひとりだった。
当時、ちょっと気になっている男の子がいた。あの子は誰にタッチするんだろう。ドキドキしている私がいた。
「あ・・・。」
私の視界に入ってきたのは、その男の子がクラスで一番かわいい女の子と一緒に手をつないで走っている姿だった。
けっきょく私は、女の子(男子につかまえられた)にタッチされて終わった。誰にもタッチできない男子もいたのではないかと思っている。
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「皮むいてるときに鬼にタッチされたら、ふたりともバナナになってしまうんやってねー。だからそこは気をつけんなん。」
息子が熱く語っている。
「バナナおにごっこ、楽しい?」
「めっちゃ楽しい!」
今の息子には、女の子も男の子も関係ないだろう。疲れなんて知らず、ただがむしゃらに追いかけ、逃げ回っている息子の姿が目に浮かんだ。
今日は何をして遊んだのだろうか。