【時事】こども家庭庁 情報整理
減税派の皆さんから「こども家庭庁に多額の予算を組むなら、その分減税しろよ」みたいな言われ方をする「こども家庭庁」について、ちょっと調べてみようと思います。まずはこの記事から、予算規模を。
7.3兆円は確かに大きい額。令和7年度の防衛関係費にが8.7兆円。比べてみると「デカい数字だな」と思えます。で、おそらくバッシングの中には「防衛費や医療費なんかと比べると、何をやっているのか、何を目指しているのか」があんまりよくわからない。男女共同参画に似た構図だと思います。
日本の抱える諸問題は「少子高齢化」が起因になっているのはご理解いただけると思います。社会保障や医療費は「若年層が多くて、ピラミッド型に高齢者が減っていく」だと、かなり働き手の負担は減ります。目指すは、お子さん、ないし若年層、もしくはその親御さんに手厚い社会でしょう。
書き始める現時点で、何も決めないまんまスタート。着地点がまだ見定まっていませんw でも、一個ずつ紐解いていきましょう。
01. こども家庭庁の概要
まずはオフィシャルサイトから。
01-01. 設立経緯
2022年6月 「こども家庭庁設置法」と「こども基本法」が成立。
2023年4月 こども家庭庁が発足。
成立時の首相官邸のWEBから抜粋しました。縦割り行政だと「その問題はあっちにお問い合わせください」とか「補助の窓口はここじゃないんですよ」が起きるので、親御さんは割と困った時に「誰が助けてくれるのよ…」となりますが、それを一括管理できるようにしちゃおうって話です。
子どもに関する政策や支援は内閣府、文部科学省、厚生労働省など複数の省庁にまたがる(※下に図を貼ります)ため、担当部署や子どもの年齢で分断されがちでした。そこで作られたのがこども家庭庁です。これはシームレスで進めないといけないカテゴリですからね。
まあ、これですべてがシームレスになる訳ではなく「いじめ問題、不登校など学校での教育分野」は引き続き文部科学省が担うとか、保育所と幼稚園の施策を統合する「幼保一元化」は見送りとか、まだまだ一元化できない部分や課題はあります。専門性が高い分野をこの「子ども家庭庁」で全て担うのはやはり難しく、教育分野は文部科学省、親御さんの処遇は厚生労働省だったりはします。が、前進であるのは間違いないとも思いますね。
01-02. 組織図
組織全体で430人。私が思っていたより小規模省庁ですね。
ただ「少人数にデカい予算がどーんと振り分けられてる、金銭がっぽがっぽ」ではないです。何故なら、この省庁は「多くの省庁や教育期間に対して補助や協力をする」性質ですから、民間の「こっちが元請け、こっちが一次業者、こっちが二次業者」みたいな「胴元」のニュアンスとは分けて考えられた方がいいかなと。
わかりやすい図がこちら。新聞社の記事とか図もあったけど、これが一番シンプルですっきりしてました。おお、私レベルでも理解がしやすいいい図w
私は、現在は公的機関に入札を行う立場ではないのですが(そういう職務を経験はしております)、このサイトは公的機関と民間の情報の橋渡しをするいいサイトです。まあ、公共事業に関係ない人はなかなか見る機会がないでしょうが、ファクトチェックをする上では結構わかりやすくていい感じです。
01-03. 予算規模
ここでポイントは「予算も合算」ってところなんですよ。ゼロから「新規で」組んだ訳ではなく「元々あちこちに振り分けられた予算の合算」です。まあ、このデマだらけの論調の最終結論はここなんだろうな。
今回の記事は「令和7年度 子ども家庭庁予算」をベースに構築していきます。これは「正当な予算なのか?無駄に使われるのか?」って話ですね。
02. 予算内訳
ここの項目は大変そう…ですが、ちょっと掘ってまいります。
何に使われるのか、お金を誰が管理して、誰が楽になるのか。受益者主体で考えたら「無駄か無駄じゃないか」とか、公金で誰かが利権をむさぼっているかどうかとか、わかるんじゃないかな。
あ、ちなみに公金が「不正に」ではなく「正当な仕事で」民間企業や団体に使われること自体は私はいい事だと認識しています。一部の怪しい利権団体に垂れ流すのとは別ですからね。
02-01. 保育所や放課後児童クラブの運営費等
【予算規模】
2兆4,600億円です。子ども家庭庁予算の中で最も大きい比重がここです。これは「既にお子さんを育てている方」支援ですね。
【関連省庁】
保育所は厚生労働省管轄。児童福祉法に基づいて設置されており、乳児や幼児の保育を行う児童福祉施設ですね。放課後児童クラブは一般的には学童保育と呼ばれている施設で、主に共働き家庭等の小学生に遊びや生活の場を提供して、健全な育成を図る施設です。こちらは元々は厚生労働省, 文部科学省の管轄です。
【使途 / 受益者】
保育所は説明不要かなと思います。多分、わかりにくいのは学童保育の箇所ですね。「放課後、児童が帰宅しても、保護者がお仕事の就労等で不在になる場合、居場所を作って児童の健全な育成を図る目的」に使われる予算とご理解ください。
受益者で言うと、まずは主役は子どもですね。そしてそれを預かる方々、預ける場所がある親御さんが受益者。これは支援していいでしょう。保育士の処遇改善もここに含まれます。介護同様に、きつい仕事の割に待遇が低いのは皆さんもご存知かと思います。
02-02. 児童手当
【予算規模】
2兆1,700億円です。子ども家庭庁予算の中二番目に大きい比重がここ。これも同様に「既にお子さんを育てている方」支援ですね。
【関連省庁】
これは元々は厚生労働省管轄でしたね。歴史は古くて、児童手当法制定が1971年、翌年の1972年度以降支給されてます。その後、三党合意に基づく子ども・子育て関連3法の制定により、2015年度から「子ども・子育て支援法に基づく子どものための現金給付」として位置づけられるようになりました。新しく降ってわいたような話では全然ないですよね。
2024年10月から、児童手当法の改正によって下記のように変わりました。
・所得制限を撤廃
・支給期間延長(高校生:18歳になって最初の3月31日までの者)以下
・第3子以降の手当額を月3万円に増額
・支給回数を偶数月の年6回」に変更。
【使途 / 受益者】
子育て世代の支援に使われます。高校生のお子さんをお持ちの方まで制度拡充です。まあ、ここも説明は不要かな。受益者はお子さん、親御さんです。
02-03.育児休業等給付
【予算規模】
1兆600億円です。これは新生児を育てる方支援。これからお子さんを産む方も、これに助けられる安心感はあるでしょう。
【関連省庁】
これは働く方向けの支援なので、厚生労働省管轄ですね。「育児休業給付金」は、文字通り「雇用保険の被保険者(労働者)が育児休業を取得する際に支給される」ものです。「産後パパ育休」を取得する被保険者を対象とした「出生時育児休業給付金」も設けられています。
【使途 / 受益者】
新生児を育てるにあたって、親御さんは「職場との兼ね合い」でなかなか身動きが取りづらいので、ちゃんと休めて生活に支障が出にくいようにするためのもの。受益者は「新生児の子育て家庭」です。
02-04. 障害児の支援、虐待防止、ひとり親家庭支援
【予算規模】
8,500億円です。なんらかの「子育てでハンディキャップを抱えている方」支援です。
【関連省庁】
障害児支援は基本的には厚生労働省です。学校教育においては文部科学省の管轄でもあります。(特殊学級とかね)元々、ここは縦割りだった箇所です。児童虐待防止も厚生労働省。ひとり親家庭の支援も厚生労働省です。
【使途 / 受益者】
ハンディキャップを抱えながら子育てをしておられる家庭が、その負担をなるべく軽減できるようにって制度です。本人の意図しないハンディは避けられない訳ですし、通常の家庭よりも「支援が必要」なのは皆さんもご同意頂けるかなと。そういう境遇の方にやさしい社会は「成熟した社会」だと思います。
画像だと小さくて読みにくいけど、リンク先に大きいPDFありますので、是非ご一読願います。
02-05. 大学の授業料減免
【予算規模】
6,500億円です。これ、脱線して「外国人に国費で学ばせているのに云々」みたいな反論が来ると思いますので、先に少し直近データ調べてみましたところ、国費留学生の令和7年度概算要求は185億円でした。
ちなみに国費留学生については一回まとめておりますので、ここ参照。
【関連省庁】
これは文部科学省ですね。奨学金、給付金制度は年々拡充されていますので、これもその潮流に合致しているものです。日本人のお子さんの学習機会が、金銭的理由で途絶えてしまわぬよう、高等教育が受けられるよう、支援する制度です。
【使途 / 受益者】
日本の若者の知的水準をキープするのは喫緊の課題。学力は海外の大学にどんどん抜かれています。高等教育を受けたい若者が、補助を受ける事でそれを可能にすることが出来る制度。大学に進学したい若者、それを支えるご家族が受益者ですね。
子育て中で、お子さんの奨学金や給付金についてお調べになられたい方はJASSOの支援をご確認ください。
02-06. 妊婦への10万円給付
【予算規模】
800億円です。2024年の出生数は68.5万人ですので、単純計算だと685億円。関連職員の人件費や事務コスト等もあるでしょうから、妥当かな。
【関連省庁】
厚生労働省ですね。出産時にかかるお金は大体50万円ほどで(施設や地域によって多少は幅があると思われます)そのうち10万円はここでカバーできます。
【使途 / 受益者】
妊娠から出産後のタイミング、「新生児」を産むご家庭が対象です。その時期の色んな支援も表にしたもんがあったので下に掲載。
03. 騒がれたトピック
まあ、上記に予算配分の「これはあった方がいいでしょ」を掲載したんですが、その他にもあれこれ話題になったので確認していきます。
03-01. こどもファスト・トラック
【どんな取り組み?】
公共施設や商業施設などの受付等で、妊婦やこども連れの方を優先する取組です。待ち時間を短縮し施設を利用しやすくすることで、こどもや子育て中の方々にやさしい社会を目指すというもの。
【賛否両論】
少し前のニュース記事で「世間でも賛否両論」という内容の記事が書かれていました。
ここからは私見です。公共交通機関での高齢者や障碍者の優先座席や、映画館のレディースデイ、女性専用車両など「特定の属性の方に優しい制度」ってのは他にもある訳です。また、この制度を利用するもしないも選択ができる訳なので、使いたくない人はそうするといいのでは…
03-02. こどもまんなか応援サポーター
【どんな取り組み?】
「Jリーグの試合優先観戦」で誤解が広がっていた(というか、これは確認しないまんま騒いだ人がいたんだろうなぁと)こどもまんなかサポーターについても内容を少し確認をしましょう。
説明箇所を抜粋するとこうです。
補助金云々は誰が言い出したのでしょうかね。子供にスポーツ教育を行うにあたって、Jリーグとのコラボは特に問題があるとも思えません。また、Jリーグのみならず、自治体も一定数賛同してるものです。
03-03. 家族留学
【どんな取り組み?】
家族留学は「子育てを経験した事ない方々」が、子育て家庭に半日同行するなどして体験する取り組みです。疑似体験して少しでも不安を払拭して「子育てしてみたい」と思っていただくためのプロジェクト。留学希望者(とは言うけど、海外留学ではないですからね)と子育て家庭とのマッチングをするのはNPO法人manmaで、理事の新居日南恵さんが2015年に始めた取り組み。これまで700人以上が留学に参加。受け入れ先として、30~40代を中心に約400家庭が登録しているとの事。
これも批判の声が寄せられていました。
【効果は?】
manmaのWEBサイトに資料のPDFがあります。一部抜粋します。
上述のリンク先には実際に経験した方々の体験談も記載。こういう取り組みは私じゃ思いつかないなぁ。好評のようですね。
04. 私見
新生児、義務教育期間、高等教育から大学卒業まで、幅広く支援をする省庁であるのがお分かりいただけたかと思います。記事を書き始める時点では管轄省庁や予算が「シームレス」って意識しかなかったんですが、実は「出産から大学卒業まで、継続して」という意味合いでもシームレスですね。
勿論、細かいところを見ていけば、多少の是正や使途の是非を問う要素はあるかとは思います。人が介在する以上は、なんらかのエラー要素は起きうるし、PRイベントが少し「何のためにやってるの?」という疑問を誘発する側面もわからなくはないです。
が、一個一個紐解いてみると大筋で「少子化を抱える日本で、お子さんを育てる不安や懸念を払拭させようとするもの」であるんですよね。また、子供支援というのは「育てる側の親御さんの支援」でもある訳です。納税が少子化対策として還元されている形ですので、何か問題があるとも思えません。
毎回この辺りの政策で声が上がるのは「その分減税しろ」なんですが、これを潰すなんて正気ですか?と私は考えております。