【読書】 小熊英二・樋口直人「日本は「右傾化」したのか」
「日本は「右傾化」したのか」という本を読んだ。色々な研究者が色々なことを述べており、単純に右傾化したともしていないとも言えないように思われたが、少なくとも我々一般市民の右傾化の程度よりも、政治家の右傾化の程度のほうが大きいように思われた。そして、そのメカニズムについて興味深く拝読した。
政治家右傾化傾向のきっかけの1つは、自民党が選挙に敗れて野党になったことである。民主党が国民からの支持を集める中で、自民党とは何であり何に価値を置くのかについて議論を深めるなか、日本というものに価値を置く政党であることを再確認したという考え方である。民主党という政権を担えるようなライバル政党が生まれたが故に、自らのアイデンティティを高めるために右傾化が進展したという議論であると理解しているが、政治のダイナミクスが描かれているようで興味深かった。
ライバル政党という観点では、近年維新の会なども自民党にとって厄介な存在となっているかもしれない。維新は自民党と政策的・イデオロギー的に近い面も多いので、自民との候補人にとっては同じ選挙区に維新の候補人がいると票を取り合う可能性があるためである。そんなとき、自民党の候補者は保守的な発言を行うことで、保守的な市民からの票が維新へと流出することを食い止めようとし、その結果、政治家の右傾化が進むというメカニズムが提言されていた。こちらも政治のダイナミクスが垣間見えたようで興味深かった。
いずれにせよ、自民党が勝手に右傾化したというわけではなく、民主党や維新と言った他の政党との競合のなかで主張が傾いていったという主張が面白かった。タイトルの段階では、右傾化したという主張と、それに伴う政権批判が述べられていたら嫌だなぁと思っていたが、それは杞憂であった。
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