【読書】コルソン・ホワイトヘッド「地下鉄道」

「地下鉄道」という小説を読んだ。アメリカの奴隷制度を対象とした小説で、南部で奴隷として労働していた少女が地下鉄道に乗って自由を求め逃走していくストーリーである。奴隷が受ける仕打ちの残酷さであったり、逃走先でも彼女を探す白人たちの残酷さであったりが描かれており、単なる小説を超えて過去にこんな出来事があったのだと勉強になった。但し、こうした残酷さは文字だけでは想像することが難しかった。幸いなことに映像化がなされるようなので、そちらを見てより理解を深めたいところである。

気になった記述は、博物館よりも現実のほうが過酷であるという記述である。主人公の少女は博物館の展示に携わることになるが、その展示が甘っちょろいことに少し思う所があった。もちろん奴隷制度の負の部分を博物館に展示し思考を促すことは良いものであろうが、その展示が実際のありのままではなくそれより甘いよう設定されているのは望ましいとは言えないだろう。その意味で本小説も実際より甘く描かれている可能性もあり、上記の批判は少し当てはまるのではないかと思った。とは言え、この小説があったからこそ私は過去の奴隷制度について知りたいと思えたのであり、導入としては良かったのだと思う。今後の映像化に期待している。

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