【読書】村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」
村上龍の小説「コインロッカー・ベイビーズ」を読んだ。コインロッカーに捨てられながらも奇跡的に生還することができた赤ん坊たちが、どのように生きていくかについての小説。何年に出版された本であるかを知らずに読んでいたので、なんだか今っぽいな問題を扱っているなと思っていたら、なんと1980年とのこと。40年近く前!さすがにコインロッカーに赤ん坊を捨てるという問題は聞かない気がするが、あってもおかしくないと自分は思ってしまったので、まだこの小説のようなどんより暗い雰囲気は残っているのではと思った。
特に、コインロッカーに捨てられた少年たちは、親から捨てられたという信念を持って一生過ごすことになるので、何かあったとき「自分は必要とされていなかったんだ」と迷ってしまうことになりかねない。自分が幸せになってはならないという思いさえ抱くことになるかもしれない。意図せざる出産に際して責任を負わない男性がいたとき、つい女手1つで育てる女性を称えるという方向に向かいがちであるが、いかにその子どもたちが辛い思いをしているかを忘れていた自分に気がつく。
1ページあたりの文字数がぎっしりで、分量も多く、ちょっと雰囲気も重く暗くて、あーこれが自分がかつて読んだ(断念した)村上龍だと思ったが、読んで悪くなかったなと思った。
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