【読書】イリス・ボネット「WORK DESIGN:行動経済学でジェンダー格差を克服する」

 イリス・ボネット氏による「WORK DESIGN:行動経済学でジェンダー格差を克服する」を読んだ。良書だと思う。ジェンダー系の議論や女性参画の議論は「◯◯すべきである」といった意見表明・主義主張が飛び交うという印象であるが、本書は具体的な実験データに基づく議論がなされていた。そのため、イデオロギーによる対立ではなく、データによる建設的な議論を行っていこうという気概を感じた。

 日本では何年か前に大学入試の採点における不平等が露呈したばかりである。あの事件は論外であるが、本書でも同様の知見が示されていた。具体的にはオーケストラで誰を採用するかという事案であるが、当初は男性が圧倒的多数で女性は非常に少ないとのことであった。しかし、候補者と審査員の間にパーテーションを設けて音楽を演奏しているのが男性か女性か分からないようにした所、女性の比率が上昇したという。採用にあたって意図的に差別をしていたとは思えないが、無意識のうちに男性を高く評価していたのであろう。そして何よりも面白いのは、パーテーションを設けるという解決策を通じて、そうしたバイアスの影響を除去できた点である。

 世の中には無意識のうちでの差別・偏見はきっとあるのだろう。今後、そうした耳をふさぎたくなるようなことが研究で示されることも多いだろうが、真摯に受け止め改善を行っていきたいところだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?