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【ブックレビユー】『別冊NHK 100分de名著〜集中講義 大乗仏教・こうしてブッダの教えは変容した』 佐々木閑著

おはようございます。今日も一日頑張りましょう。

『大乗仏教』の入門書として最適!!!

2024年11月読了。
 佐々木先生の前著『100分de名著〜ブッダ・真理の言葉』を読んで、中村元先生の『原始仏教』の方へ行こうとしたのだが、「いきなり原始仏教は怖いし、大乗仏教の基本的な認識が出来ていないじゃないか」と思い立ち、本書を購入。

 流石は著名な仏教学者、限られた文量の中で《大乗仏教と云う大きな教え》をスパスパッと気持ちよく、板前さんの様に捌いてくれ、私の様な凡愚の者でも「(大掴みだけど)分かったような気持ち」にさせてくれた事に、最大級の賛辞を送りたいです。

 前にも書いたが、呉智英先生がその著書で大乗仏教の事を『(ホントの釈迦の話とは)似ても似つかない嘘八百だ…』くらいにケチョンケチョンに貶されていたので、「そうかも知れないけど、大乗仏教だってこれだけの歴史が有るのだし…」と云う一種哀しい思いをしていた為、
本書の様に『確かに「如是我聞」ってわざわざ書いてるぐらいだから《最初の釈迦の教え》とは全くの別物だろう。でも、そうして変わってきた事にはキチンとした理由や経緯もあり、又、それ等によって救われた人々が居る以上、簡単に【擬い物扱い】するのはおかしい』と言って頂けただけでも、救われた気持ちになった。実際の釈迦は《出家者》しか認めませんでしたからね…。

 前著もそうだが本書もあくまで『初心者の為に掻い摘んで解説した入門書』です。これらを読んで『全部分かった気には成らないでw』更に進んだ専門書を読みましょう。

《日本人による初めての、原語からの直接翻訳本も!》

 又、日本人で初めてパーリ語や中国語の一次翻訳者が介在して経由した二次翻訳ではなく、《一番最初に書かれた通りのサンスクリット語からの『法華経』『維摩経』の直接完全翻訳》を成し遂げた植木雅俊先生の著作へ頑張って読み進めなければと、だらしの無い自分に言い聞かせる思いで読み終わった(植木先生は理系の大学院修士だったのに文系へ学び直し、中村元先生の薫陶を受けたしたスゴい先生です)。ちなみに直訳本だけではなく読み易い解説書も色々書いておられるので、興味のある方はぜひ。
 
 三蔵法師や鳩摩羅什等の(パーリ語,中国語)翻訳のお陰で私達は今現在、様々なお経を読めるように成っていますが、お経と成れば最初に書いた人の言葉の意味への思いと、それを翻訳する人との言葉の受け止め方に、どうしてもすれ違いや誤訳、単純な転写間違いや意味の取り間違いが起きてしまいします(実際、鳩摩羅什と三蔵法師の翻訳は所々異なるところがあり、その為三蔵法師は『大般若経』等の“直訳”がしたくて、遥かインドまで何百kmを往復したのです)。それでも、私達が読んできたのはそうした“最初に書かれた言語ではない外国語(=中国語)が大半”です。
 植木先生も今回の直接翻訳で、遥か昔のそうした翻訳者の勘違いや意味の取り違いをかなり発見したそうで、これからは植木先生の翻訳本が主流に成ると良いですね。

 最後にもう一点、文末に著者が『凡そ宗教者たる者が世俗の問題に、軽々に口を出すのはおかしい』と書いていた点について、仏教だけと言わず、世界中の宗教が《醜い争いや殺し合い》等を肯定している筈は無いのに、現代において何故これほどの紛争や戦争が続いているのか、世界の宗教者,そしてその信者だと強く自分を恃む者たちが何故争いを止めようとしないのか、『愚かな争いを止めよ』と信者へ強く警告しないのか、又、他者(他宗教者)へのあまりの無理解にも強い憤りを感じます。

 今こそ【宗教の力が必要な時は無いのに…】と、誰にとはなく腹立たしい思いで本を閉じました。

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