【連載第55回より】皆が求めるのは「千代田ブランド」、邪魔してるのは土建屋と区役所
二番町の開発については五年以上の紛糾を経て、今春結着を迎えそうだ。勿論憤懣やる方ない住民も多いようだが、近隣区の巨大開発と比べれば「高さ八十m」まで下げさせて、 よく住民も区役所もまた事業者も努力した、 との見方も可能か。
しかし折角ここまで頑張ったのなら、何故「六十m」という高さ規制を守り、番町・千 代田の価値を高めようという事にならないのか? 私は損得の問題として「勿体無い」と 思うのである。番町一帯はまだ六十m超の建物はなく、それを超えるか否かが問題の焦点なのだ。国内人口が減り、都心の空室率も上がる中で、京都や銀座のような「ブランド価値」を築き、賃料も付加価値も高い千代田区にしていく事が現在喫緊の課題だ。番町での紛争 を禍い転じて福となす、大きなチャンスとも言える。建物高さへの厳しい規制が街のブラ ンド価値を上げている事は、銀座と京都を見れば歴然だ。千代田という街の高附加価値化 は、日テレを含む地権者にとっては不動産の 価値を守り高め、また住民にとっては安寧な暮らしを守る事でもある。千代田「ブランド価値」戦略に反対するのは、やりたい放題の土建業者と区役所だけではないのか。
「抵抗/建築」展! 欧州漫遊の旅で見たもの
さて私事だが、年末欧州の各地を旅して来た。歴史と文化を大事にする街を歩き、気づいた事をいくつか書いてみたい。まずフランクフルトでは、ドイツ建築博物館(DAM)を訪ねて「抵抗/建築展」を見て来た(〜一月十四日迄)。これは七〇年代以降世界で起きた紛争に関連して、権力に立ち向う民衆が抵抗の拠点として築いてきた 「仮設建築」を写真や図版、模型や実物で再現するという画期的な展覧会だった。世界何処でも大都市に人口が集中する中で、スラム 街を追い出された貧窮民が仮設のテント小屋 に拠って、凄絶な抵抗を続けるという迫力あ る映像が多数あって、息を呑んだ。アジア・ 南米・アフリカは勿論、ヨーロッパや米国の 紛争も多数報告されている。しかし何故か、 日本の事例は一件も無かった。それこそ、沖縄・辺野古埋め立ての反対派監視小屋や千代 田区の警察署通り紛争なども、この展覧会に取上げてもらえば良かったのではないか?いや外国人の眼で、血生臭い世界の紛争からすれば、日本人同士の 生ぬるい喧嘩とでも見 えるのだろうか。
次に、ドイツからパリへは特急で向かった。 ネット予約すれば飛行機より格段に安く、運 賃は日本の半額位だろう。車内での飲物や食事のサービスも充実していて、何処ぞやの新 幹線とは格段の違いだ。パリでもリュクサンブール公園や都心の公園を歩いてみたが、日
比谷の如き珍妙な鉄橋を架けている事例は無 かった。公園の樹木をちょん切って三井だの イトチュウが超高層を建てる等懸念されたが、 ロンドン含め計画も無いようだった。そんな 事業を平然と東京で行おうというのは、やは り日本人を舐めているという事か。はたまた日本は、公務員が天下りに必死なのか。公園 は静かで砂利向けのイベントも無かった。
さてルーブル美術館にも久しぶりに行った。 来観者の目玉である「モナリザ」は以前と様 子が変わっていたが、「『モナリザ』の部屋は 日本 テレビ放送網の寄付で作られた」旨が同室内の看板に書かれていた。同様な看板は、バチカン市国のシスティナ礼拝堂のミケランジェロ天井画修復の現場にもあって、同社の寄付である旨が今も記されているそうだ。 そんな会社の筈が番町では社員や業者に捏造投票をやらせたり、女子社員を使って「エレベーターを止めるぞ」とセコい事を住民に言って回らせたり、挙句逮捕区議や「腐敗がはびこっている」と警視庁にも言われた(産経新聞報道) 千代田区役所とは一心同体の泥舟状態で、さぞや「モナリザ」も泣いているのでは・・・(苦笑)。
今回の古写真・選
昨今の異常高温や集中豪雨、噴火に正月の大地震と気象庁への注目は集まる一方だ。 その気象庁のHPを覗くと明治以来の日本の気象観測を巡る歴史が述べられている。気 象観測の前段階としてそもそも天体観測や地文から始まり、日本初の気象台は虎ノ門葵 町に明治5年(1872年)、今のホテルオークラ辺りの高台に設置された。その土地 を西南戦争に功績のあった大倉財閥に払い下げる事となり、移転した先が江戸城天守閣 の天守台の跡地であった。明治14年(1881年) 12月の事である。(ネット記事 でも「江戸城が当時如何に無用の土地と思われていたかがわかる」とある)
本写真は明治15から20年頃制作の、『東京景色写真帖』と題された12頁の小さ な写真帖の中の1枚だ。「気象臺」と焼き付けられた写真は褪色しているが、石垣の上 に小屋のようなものが複数見られて、この江戸城天守台の「気象臺」である事は間違い ない。他で見かけない貴重な写真だ。
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