18歳
私の働いている店ではお客さん自身で押してもらう式の年齢確認システムが最近導入された。
これ、明らかに未成年に見えない中年女性男性にとってはときに煩わしいものでもあり、高齢者の方にいたっては聞こえない押せないと悶着のもとになるから聞かんでええやんと思うのだが、ルールなので基本的に押してもらわねばいかんのである。
レジ当番の日。見たとこ60代後半くらい、すごい強面で恰幅の良いオジサマが酒の入ったカゴを持ってやってきた。
若いころ絶対ヤンチャしてたであろう、ブラザーコーンさん風のそのオジサマに
「年齢確認のボタンお願いします」と言うと、
彼は突如目前に現れたその小さなモニターをグラサンの奥から睨みつけ、ゆっくりとボタンを押しながら恐ろしく低い声で
「…18歳、と」
ベタなジョークではめったに笑わない私だが、不意を突かれて「うははっ!」と笑ってしまった。
コーンさん(仮名)も「フッフッ」と小さく笑った。
あの”こねこフィルム”の『年齢確認』ネタで何度も爆笑した私であるが「18歳?ダメじゃないですかっ!コレになっちゃうよ!」と言い返せなかったのがくやしい。
別の日には、店が混み合いレジが大行列、フロアから私が駆けつけてもう1つのレジを開けた。
「お待たせしました!こちらどうぞ」
すると、眉間に皺を寄せたコーンさんがアフターシェーブローションを片手にゆっくりと歩いてきて恐ろしく低い声で、
「…悪い」
一瞬クレームかと思い
「はい?」と聞き返すと
「いや、これ一個だけなのに、悪いね」
いいいいいいい!いい人!
もう、ホッとしすぎて、恋したかと。
ギャップってすごい。
あれ以来、コーンさんが来るとなんかひとこと言ってくれないかと期待してしまう私がいます。ドキドキ。
[完]