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カワイイをさがせ!①
いちばんしあわせな日本語は「カワイイ」である。
私はそう断言したい。
昭和生まれの男友達は「カワイイ」という言葉には照れがあるようで、周りの女性が「カワイイ」を多用すると「かわうぃい~⤴」と鼻にかかった声でふざけがちだった。
しかし先日
「かわいい、っていい言葉だよね。しあわせになる」
と、しみじみ言った。
「女の人はすぐ『カワイイ』っていうけどあれは自分も言っててハッピーなんだと思う」
たしかに。
「カワイイ」って言ってるときって、みんな幸せそうだよね。
不幸そうな顔や苦しそうな顔で「カワイイ」と言っている人をあまり見たことがない。
それに「美しい」や「愛おしい」以上に「カワイイ」はオールマイティであり、フレキシブルである。
愛してる人にも言えるし日常でも愛し合う最中でも言える。
愛してない人にだって言える。かわいいと思ったら即言える。
綺麗な顔のアイドルにも言えるし、完璧な容姿ではなくとも十分にチャーミングな、多くの人に対して言える。
若い女子にはもちろん男子にも、そのどちらでもない人にも、おばさんにもおじさんにも老若男女LGBTQ問わず言える。
幼い子供や動物は「カワイイ」のかたまりだ。誰かと一緒なら大声で「カワイイ!」と連呼してもいいし、だっこされた赤ちゃんや散歩中の犬とすれ違ったら独り言で「カワイイなあ」と言ったっていい。
「カワイイ」は姿だけでなく行動や言動、雰囲気やキャラクターに対しても幅広く使用できるのだ。
なんなら、なんとも言いようのないときにも使える。
大人の男性も「カワイイ」と言ったり言われたりするのを嫌がらずに、むしろ率先して言ってほしい。
無理しなくていい。
ただし少しでも「カワイイ」と思ったら言うのを我慢してはいけない。
「カワイイ」のハードルは思い切り低く、広範囲にちりばめておくのだ。
辛いとき、憂鬱なとき、なんでもいいから何か、自分がかわいいと思うものをみつけて「カワイイ」と言ってみよう。
概念なんてどうでもいい。
インスタで見た友達の猫でも
駄菓子の箱に描かれた謎のキャラクターでも
気づかずに履いてた穴のあいた靴下でも
デスメタルバンドのTシャツでも
となりのおじさんのほくろから生えた毛でもいい。
「カワイイ」ばかり言ってる人間は頭が悪いなんて嘘だ。かしこい人間こそ「カワイイ」を素直に言葉にして、ささくれだった世界をやわらかくしあわせに生きてるのさ。
私はちょっとしたことですぐ落ち込むし、ときどき死にたくなったりもするけれど、かわいいものが大好きだし、友達と買い物に行ったりすればまあアホみたいに「カワイイ」ばっかり言っている。
そうやっていつのまにかバランスを取りながらアンバランスな人生を楽しんでいるのかもしれない。
ところで。
私はこのところ、イギリスのロックバンド『IDLES』(アイドルズ)に夢中である。
本国ではもはや国民的バンドとなった感のある彼ら、もはや若者ではなく、小綺麗なアイドル的ビジュアルでもない(バンド名もIDOLではなくIDLEだし)。
しかしこのバンドのめちゃくそカッコいい音はもちろん、メンバー達が大好きになってしまった。めっさタトゥー入ってたり髭ボーボーだったりと一見むさくるしいが全員カワイイ。アー写を見るにつけ思う、こんなに仲が良くてカワイイおじさんたちを私はほかに知らない。
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特に、口ひげを絶やさず、ドレスを着たりパンツ一丁になったりして狂ったように激しくギターを弾くマーク・ボーウェンというおじさん(私よりはるかに年下だが)かわいすぎて目が離せない。すきっ歯でニカッと笑うとさらにカワイイ。
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来年1月の来日公演までワクワクキュンキュンしている自分も超カワイイ!
(②へつづく)