善女龍王を呼び起こしてしまったか!? 空海ゆかりの神泉苑での出来事
2024年7月9日、夏の京都。
照り返しのアスファルトを歩きながら、私は神泉苑を目指していた。
神泉苑のことを知ったのはここ最近。
猿沢池の龍を調べている時、室生龍穴神社の善女龍王のことを知り、そこから空海につながった。
神泉苑は、空海が守敏と祈雨対決を行った場所である。
二条城の南にあるので、近くまでは何回も来ていた。
だが、神泉苑については名前すら知らなかった。
この歳になっても知らないことだらけだ。
何よりそんなスゴイ場所が今でも残っているなんて奇跡!
北門から入ると、善女龍王が棲むといわれる法成就池が現れる。
そこからゆっくりと、法成橋を渡り、善女龍王社に着く。
神泉苑は歴代天皇が宴遊し、花見発祥の地でもある。
また、9世紀に疫病が流行った時にそれを鎮めるために御霊会が行われた。
それが祇園祭の起源でもある。
静御前の祈雨の舞、小野小町による雨ごいの歌など、数々のエピソードの宝庫だ。五位鷺の名前の由来も面白い。
苑内をくるっと回って、弁財天社あたりに着いたころだった。
先ほどから空が曇ってきたなと感じていたが、グレーの色味が強くなってくる。
でも感覚的には、私のクイック参拝の終了までは、雨は持つだろうと読んでいた。
が、突然、大粒の雨が落ちてきた。
うっそ~ と思ったが、降り出した雨はスゴイ勢いを増す。
とても歩いてなど帰れないので、御池通の停留所からバスに乗ることにしたが、なかなか来ない。
バケツをひっくり返したような雨が、道を白く濁らせる。
小ぶりの折り畳み晴雨兼用傘は何の役にもたたない。
夏だからいいものの、服もカバンもびしょ濡れ。
ふと思った。
これは善女龍王のしわざ?
池で寝ていたのを起こしてしまったのか。
(静かにお参りしたんだけど…)
空海が祈雨を行ったときに、勧請した善女龍王が降らせた雨もこんなんだったのかもしれない。
都の人が歓喜した雨を追体験したと思うと、この雨も楽しくなった。