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海にピアノ

無観客の静寂と知らせず見つめる一点の瞳
彼は一心不乱に鍵を叩き宵の向こうへ

寄せる波は優しく冷たく響かせて
不協和音か肯定か

幸か不幸かなど歯牙にもかけず
ただ今ある彼とその音にだけ想いを馳せて

いつかまたねの約束と
いずれ必ずの契約の
狭間で絶えず苦しんで

犠牲と恩恵の天秤を
いとも容易く傾かせる

そうした決意の独奏は
青い空でもなく満点の星空でもなく
空虚孤独の一方通行

やがて彼の演奏会はフィナーレに
いつ間にやらわらわらと
魚は飛び跳ね蟹は手を振り喝采の渦

私は1人声も出せず佇んで
唇だけが赤く赤く滴るだけだった

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