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good_peony102
死に際と病室と理解した後の涙
波の音が聞こえた
光差す雨上がりの海
ぼやけた視界には波際の白い泡と
私の手を引くすらりと伸びた白い手
風の音が聞こえた
不機嫌そうに鳴る錆びた電波塔の上
早くしろよと背中を押す者達と
必死に縋り付く汗ばんだ私の手
帰り道なんて解らなかった
そもそも自分の居場所も分からなかった
様々なものが頭を巡った
大事な宝物を忘れないようになのか
最後に見納めと思ってなのか
そのひとつひとつを唯々見送った
ある時声が聞こえた
振り向いたら自分が動けるのだと思い出した
右腕に何かが溢れた
反射で動いた指の先を見て腕があることを
足の感覚があることを思い出した
もしかすると目も開けれるのではと思い至って
思い切り力を入れてみると
真っ白な天井が眩しくて驚いた
そこには貴女と彼等が居て
怒声なのか歓声なのかはわからないが
叫ぶ彼女と小娘の声と
訳も分からないまま私の右腕をしゃぶり続ける小僧の姿が目に焼きついた
ああ、そうか
引き戻してもらったのか
どうもご面倒お掛けしました