九龍内の相互扶助
九龍城塞の憧れ
オタクなので九龍城塞にはものすごく憧れがある。
自分が九龍城塞を知ったのは数年前「ウェアハウス川崎」が閉店するのを聞いた時だ。こんなかっちょいい廃墟を模したゲームセンターがあるなら、一回でも行っとけばよかったと後悔した。そのとき、パロディ元の九龍城塞の存在も知ったのだが、もちろんとっくに取り壊されていたので、こんなパンクな空間に行けないのかと時々YouTubeで動画をあさったりしてた。
人情たっぷり香港映画
そんな中、九龍城塞を舞台にした香港アクション映画があるのを知り、あの九龍城塞をスクリーンで見れるなら最高じゃないかと、観に行くことにした。
香港映画は1本も見たことないので予習として、マフィアが出てきてかっこよさそうな「男たちの挽歌」を先に見てみた。パッケージの感じから勝手に「グッドフェローズ」や「その男凶暴につき」のような義理人情のない悪マフィアの抗争ものかと思ったら、蓋開けてびっくり。
主人公のホー兄貴はなんでヤクザやってるんだって位人情に厚い聖人で、冒頭から部下のために自首し、仲間も売らずに釈放されて足を洗っている。足を洗った先でもみんなに歓迎されまっとうに働き始める。ホー兄貴の友達で色気がすごいマークくんも、ずっとボロボロ(本当にボロボロ)になりながらもホー兄貴のために身体を張る。なんかみんないいやつなのだ。
スコセッシや武のような監督たちの血も涙もないヤクザの映画をみて、こういうのが反社会のやつらだと教えられたので、香港映画ってこんなテイストなんだとびっくりした。ある意味マンガっぽくもある。
トワイライト・ウォリアーズ
香港映画の風味も知ったところで、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」を観に行く。
あらすじをちょっと説明する。
貧しい移民の主人公が黒社会の大ボスに騙されるものの、ボスのヤクを奪って九龍城塞に逃げていくところから始まる。ただ、九龍城塞にも彼らの社会があるので、厄介者と判断された主人公は仕切っているグループにボコボコにされてしまう。(ここの龍兄貴がめちゃくちゃかっこいい。)ボロボロになっても外には大ボスの手下が待っているので外に出れず野垂れ死にそうなとこを、助けたのは九龍城塞の住民だった。
ここのシーンに、無政府状態下の助け合い精神が垣間見える。そこに住んでいる住民もなかなかひどい暮らしをしているのだが、まあ飯くらいならあげるよと、窓から食べ物を渡してくれる。
その後、グループのリーダー龍兄貴と話し誤解を解いてもらい、そこでの生活が始まった。流れ者の主人公だが周りもほとんどそのようなものばかりなので、徐々に打ち解けていく。ここの仕事を始めていくシーンが一番よかったかも。こういうところも、ある意味で香港映画の人情味の部分ではあると思うが、舞台が九龍城塞というだけあってこの助け合いがより説得感があるように思えた。
ただ、人情あふれる街なわけではなくてものすごく治安が悪く、ふとしたところで人が死んでいくシーンもある。でも、それを黙ってみていられないのが主人公たちで、ちょっとかわいい方法でお仕置きしていた。(その後から仲良くなって麻雀を始めるのもかわいい。)
あんな狭いところでパンパンに建物が詰まっているという所が、パンクとして九龍城塞の魅力だと思っていたが、そんな所にも人は寄り添って生きていたのだなと。
アクション映画なのにアクションの話はこれっぽち書いていないが、それは他の人がさんざんやってるってことで…。とにかく、九龍城とそこに住む人々の相互扶助というのがきっちりかかれていたのが最高でした。
香港屋台 九龍
そのときは友人を誘って観に行っていたので、夜ご飯を食べましょうとなった。当初はバルト9下のレストランにしようかと思ったが、やっぱり中華食べに行きたいですよねとなって、近くの中華に行くことにした。色々探して香港屋台だし九龍だしもうぴったりだと、その店に入る。
外見から九龍城の一角にありそうな雰囲気だが、中も「おっ」ってなるような空気だ。さすがに九龍城塞まで汚くはないが、あの映画のあとにみるとこんな感じの店もあったのだろうなと思いを馳せる。
そこから友人とその映画の話と最近の身の上話・ニュース、もどって映画・ゲームの話をずっとしていた。互いに映画・ゲームが好きなので、結局その話題が一番盛り上がった。以前、別の友人と話したときもそんな感じで、好きなものの話がいっちばん楽しいんだよな。
話しながらご飯を食べていると、キッチンのおじいちゃんからたのんでないビーフンがきた。これたのんでないですよと伝えたところ、作っちゃったから食べてよと言われて思わず「香港のリアル人情だ!」と感動してしまった。自分たちはビーフン食べれてラッキーだし、食材の無駄にならずに済む、映画で流れていた相互扶助がこの九龍でも確かに行われていた。
いっこだけ後悔していることがあって、食神(自分の通った大学の近くにある「第3の学食」と言われるほど有名な町中華)でよく頼んでいた汁なし担々麵を頼んだ。(食神では汁なし麻婆麵ですね、500円)これも美味しかったんだけど、あの映画をみた後なら叉焼丼を食べるべきだった…。あと、ビーフンでけっこう腹いっぱいになった。
考えるな、感じろ
最近本屋に行くと、「ケア」という言葉をよく目にする。ただ、その本をまだ読んでいないので、「相互扶助」「ケア」がなぜ大事かというのをイマイチ説明できないでいた。(もうすぐ次の仕事も始まるので、あんまり本読めねんだ。)
しかし、香港映画に流れる人情・助け合いの精神と九龍内の出来事・会話で、助け合いがいかに楽しいかというのは分かった気がする。
まだ考えの方が追いつかないけども、ブルースリーも「考えるな、感じろ」と言っていたし、これが香港の伝え方なのかもしれない。
自分も周りの人たちがもっとケアを感じられるよう、ケアを実践していきたいぜ!!
ン、感謝の正拳突き。