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中型まき網漁業の操業方法とは!?各地で使われる最新設備も紹介
日本には約15万人の漁業者がおり、全国各地でさまざまな漁法にて操業を行っている。
今回はその中の西日本の沿岸まき網(19t)に焦点を当てて、操業方法を紹介していく。
※本記事は海ペディアとの連携コンテンツです
基本構成
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網船1隻:12~15人乗り
運搬船2~3隻:2~3乗り/隻
灯船兼探索船1~2隻:1~2乗り/隻
船や乗組員の数は地区によって違いがあるものの、おおむね20~25人程度で船団が構成されていることが多い。
操業準備、漁場への移動
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まき網漁業では多くの船団が複数種類の網を所持しており、漁獲する魚に合わせて網を選定し出港する。
一般的にアジサバは10節(33.6㎜)、イワシは12節(27.5㎜)を用いて漁獲する。
操業前の準備としては、漁場への移動中に魚捕側(先に海に出ていく網)のロープ類、沈子方(網の下部)の金具(パ―スリング)の連結に不備がないかを確認する程度だ。
基本的に毎回の操業後に丁寧に整反し、金具の連結まで行っているため、出漁時に行う作業は少ない。
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出港時の作業が終わったあとは、操船する船長以外は船室での個々の時間がある。
船室では軽食をとったり、仮眠したり、スマホを操作したりと、それぞれが自由な時間をすごしている。
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以前はスマホを使うために屋外に出る必要があったが、船内Wi-Fiの設置により船室内で安全快適に使用できるようになった。
集魚
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漁場に到着すると、複数の灯船が船上灯、水中灯で集魚を行う。
魚が充分に集まったと判断するまで集魚するが、模様が悪いときは一晩中集魚を行う時もある。
灯船の魚探、ソナーにて一定量の反応が確認できれば、これを本船(網を積んでいる船)へ連絡し、投網を行っていく。
以前は無線でのやり取りが主流だったが、ISANAの登場により魚探とソナーの映像を各船で共有できるようになった。
これにより、獲るべき魚群を素早く判断できるようになったり、無駄な探索が減ったことで燃油代の削減にも貢献しているという。
また映像を共有することで、経験の浅い船長でも漁労長や先輩の的確な指示を受けながら操船ができるようになった。
投網
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集魚が完了したら、本船に積んでいる網を灯船の周りに投網していく。
投網には網を積んでいる本船と、レッコ船という網の端を保持する船が必要になる。
地域によってはレッコ船を大型の浮きや抵抗体で代用している船団もある。
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投網の流れとしては、レッコ船が本船の後部から網の端に繋がるロープを受け取る。
その後本船が時計回りに前進し、網を海へ投入していく。
魚群を留めている灯船は、環巻完了後に網の中からすみやかに離脱する。
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動画内のまき網船では、ワイヤロープの変わりにウルトラインD-8という高強力繊維ロープを大手綱として用いている。
近年は鋼材が大幅な値上がり傾向にあることもあり、高強力繊維への注目が高まっている。
環巻き・揚網
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投網完了後、網漁具のワイヤを巻いて漁具を巾着の様に縛りながら網を揚げていく。
ワイヤを巻いたあとに、浮子方(網漁具の上部)、岩方(網漁具の下部)に分けながら網漁具を回収する。
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タオルのような形状になっている網を時計回りに海に投入し、下部の環(パ―スリング)に通るワイヤを巻き込み、網を締めこむ。
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環綱(パースワイヤ)の巻き込みとともに、環が一か所にあつまっていく。
揚網が始まると、網が整反されるのに伴って環と環綱の連結を外す作業を行う必要がある。
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従来は環を網漁具にロープで縛って固定していたが、連結と開放が簡単なオートシャックルの登場により、この作業は飛躍的に省力化されている。
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網は真ん中、岩方(網の下部)は写真の左側、浮子方(網の上部)は写真の右側に分けて整反していく。
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限られたスペースの船台に収まるように、丁寧に整反を進めていく。
大きな網を積んでいるため、整反が不十分だと船のバランスが崩れてしまい、転覆の危険性もある。
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揚網が進んできたら、船の側面にあるサイドローラーを使用しながら網を回収していく。
漁獲した魚が傷まない程度まで揚網し、魚汲み作業(魚の回収)へ移行する。
魚汲み作業
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揚網後は運搬船が本船に近づき、魚を獲りこんでいく。
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魚捕部に集まった魚をまくりモッコ(取り網、タモ)を使用して運搬船に取り込む。
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魚の取り込みが完了したら運搬船は網船から離れ、満船となれば水揚げする市場(港)へ向かう。
海況や運搬船への魚の積み込み状況によるが、ひと晩で1~5回一連の操業をくりかえす。
帰港・網修理
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帰港までの間は、乗組員総出で小破れの修理を行う。
整反中に破れのチェック、マーク付けまで行い、マークした箇所を修理していく。
小破れが大きな破れに繋がることもあるため、時間の許す限り移動中も修繕を行う。
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最後に
今回は西日本の沿岸まき網(19t)の操業の大まかな流れを紹介した。
各地域で細かな違いは多々あるが、操業の参考にして頂きたい。
今後も各地の漁業の情報を配信することで、漁業の発展に貢献できれば幸いである。
<文章/海ペディア編集部>