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摂食障害 闘え!大学生編④

ご臨終手前まで行っても、入院していても、私の頭は至ってマトモであったと思う。
食べる事、体重のことに関して以外は、理路整然と話せていたように思う。

売店のおばちゃんは「あなたは頭がはっきりしているね、病気とは思えない。」と言った。


精神を大分病んでいる入院患者の中で、自分はマトモであると思っていた。
余談だが、主治医に摂食障害の自助会に入った方が良いと言われ、一度だけ会に参加した。しかし、様子のおかしい恰幅の良い男が、自分は摂食障害だと言って会に参加していたのであるが、長尺を使って意味不明な事を言うのである。会話にならない。
何故か手にポータブルDVDレコーダーを持ち、イヤホンで何かを聴いている。しかも何故か目はガンギマリであった。
他は女性の患者だけしかいない。
摂食障害は少ないが男性も罹患するし、体型も関係ない。
別に参加自体は何の問題もない、しかし彼は明らかに別の病じゃないのか?
会話にならない謎の会を終えて、自分の病室に戻った。
次の日、例の彼とは別の病棟だったにも関わらず、私のいる病棟まで来て皆んなで食事をするエリアに居座っているのである。目的は不明だが、連日続き、病棟をウロウロするようになった。私は部屋に引きこもって息を潜めていた。さすがに看護師さんが気づいて、ちょっと気持ち悪いわね。と言う事で彼は病棟を出禁になった。

後日、一緒に自助会に参加した年が近い女の子が病棟まで来て、「あの男から付き纏い行為をされた。」ということを告げられた。
彼は前回の入院も、付き纏いで強制退院になっており、今回もまた強制退院になったらしい。

それ以来、私は自助会がトラウマでもういけないのである。


入院中、拒食から過食に転じて、体重は大体戻った。
予備校時代のお友達がお見舞いに来て、「元に戻ったね。良かった。」と言って、文字を読むのが辛いだろうからと、本でなく綺麗な写真集をくれた。
太ったとか傷つく言葉を言わないで、そんなことが出来るなんて、とても優しいお友達だった。

大学のお友達も来てくれた。
私は大きな試験を受けなかったので、留年確定だった筈だが、「先生が、レポートを出せばパスされてくれるって!戻っておいでって言ってるよ!」と言った。
戻っておいで、という言葉が嬉しかった。言われるとは思ってなかった。私はダメな奴だから、そんな風に言ってくれる人がいるなんて、場所があるなんて…
もう一度、人生をやり直したい。
希望が湧いてきた。



退院まで半分(あと1か月)というところで、思わぬことが発生する。
病院には配膳やシーツ交換をするヘルパーがいたのだが、その中の年配(おそらく5,60代)の男性がいた。その人は配膳時にどさくさに紛れて体を触ってきた。はじめはアクシデントだと思っていたが、退院するまでの1か月間ほとんど毎日であった。
私の頭がおかしいとおもって、
なんとでもなると思ってのことだろう。
私が何を言っても揉み消せるとでも思っているからだろう。
私は柔道黒帯なのだ。身体さえ元に戻れば絶対勝てるのだ。
しかし、金縛りにあったように何の抵抗もできなかったのだ。

本当に狂っているのは、私か?
アイツの間違いでないのか?

私は20年間、これをだれにも言えなかった。
死んでいるのか生きているのか知らないが、私はアイツを許していないよ。

それでも、退院するにあたり、外の世界が怖くなってしまっていた。
一人で生活するのが怖かった。

母が、あなたには一人暮らしは無理!と言って、アパートを、引き払い、私は学生向けの寮に入れられることになった。

退院後、過食になったり、また拒食になったりを振り子のように繰り返した。
ストレスが溜まると、精神の薬をいっぺんにアルコールと一緒に飲むODもするようになってしまった。
それでも、きっと自分は良くなってる!と言い聞かせた。

振り子が動いているのなら、いつか真ん中で止まる筈だからである。

卒業まであと一年。

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