家庭科でYoutube動画を見せたら、学びが深まって子ども教師も子どももハッピーになった話
面白い授業をやりたい先生へ
2024年、都内の公立小学校にて、現役教師が実際に行った「面白さを優先して主体性を引き出した授業」の細かいレポートと子ども達からの意見や感想
Youtube動画が教材になるまで
2024年の冬、自分と地域との関わりについて学ぶ単元の授業を考えていました。教科書通りに進めるのであれば、「自分たちは地域の一員です。だから地域のルールについて知って、近隣住民と仲良く気持ちよく過ごしましょう。」ということを教えていくことになるのですが、今の子どもたちはインターネットで世界の裏側の人たちとも会話しながらゲームしちゃえるような環境にあるので、このように教えられても、机上で理解して授業が終了してしまうのではないかと思いました。
それは、きっと学習指導要領を考えた方々も残念に思うだろう、、
というわけで、もっと、子どもたちが実感するような学びにするにはどうすればよいだろうかと考えました。
それで、そもそも町はどうやってできていて、その町と自分(お金)がどのように関わっているかについて知ることが重要ではないかと考えました。しかも、せっかくなら面白く学べる教材がよいと思い、Youtubeで街づくりのゲームを面白おかしく実況中継している動画をみせることにしました。
「ハヤトの野望」というYoutubeチャンネルの、「Cities Skylines2」というゲームを実況している動画をみせたのです。すると、子どもたちは街を俯瞰する視点で街と人とお金の関係性について考えることができました。後半はグループで紙に街を描く活動をしたのですが、子どもたちは終始、街作りに没頭していました。
子どもたちは楽しく動画を観ているだけなのに、街に人が住んで、人から税金という名前で街にお金が入ってきて、それによって街が発展する、すると街に人がやってきて街にお金が入って、、という過程を繰り返していくことで街が発展していく仕組みについて理解していきました。
さて、ここからは、教師の教材準備の負担を軽減させつつ、教師も子どもたちもハッピーになったユッケの授業実践を紹介していきます。
授業概要
どこでどんな子どもたちに授業をしたのか?
東京都のある公立小学校の6年生4クラス、全員で約120人
子どもたちの感じは?
島にいるような素直な子どもたちが多い
わかりやすくいえば、勉強はあまり得意とは言えないけれど、人として付き合うにはとてもいい。思える感じです。
クラスごとの特徴と予想は?
6-2は普段から自主的に考える子どもたちが多い
6-1は偏差値が高い子と低い子の差がはげしく、発言する子としない子にわかれるので、正直授業がうまくいくかどうかはギャンブルに近いかも。
6-3は全員が真面目系できちんと授業をうける感じ。動画の内容も真面目に吸収しそうな感じ。
6-4は全体的に学力が低め、だからこそ、動画に食いつきそうだなという感じ。
授業の構成は?
授業は45分間×2コマ(家庭科の授業は2コマ続きが基本)
そのうち、予想15分、解説を入れた動画視聴は35分、振り返り25分、街を描く20分(後半の2クラスのみ、前半の2クラスは振り返りの内容を私がシェアしました。)
授業をしてみたユッケの感触は?
すべてまとめてしまえば、かなり反応が良かったし、ほとんどの子どもたちに好評だった。
6-2、初めて動画で授業、少し緊張したけど、子どもたちはYouTuberがいたずらしてるときにとても笑っていて楽しそうだった。「まさか授業でこんな面白い動画を観られるなんて!(嬉しい)」という感想もあった。
6-1、事情により、動画を1.2倍速で流した。その結果、わからないとか面白くなかったという感想をもつ子どもたちが少し多かったように思う。流す範囲を決めてゆとりをもたせた授業の方が笑いもあり内容の理解もよいかもしれない。これは反省。
6-3、みんな楽しそうに観ていた。動画視聴後の振り返りシートをとても真剣かつ熱心に書いていてそれぞれの児童にとっての学びが大きかったかもしれない。通常なら振り返りシートの内容をクラス全体でシェアするところだったが、どうも退屈そうにしている様子を2クラス見て来た私は、ここで、大きめの紙に振り返りシートを書き終わった児童から数人をグループにして自分たちが住みたい自分たちの地域の駅名を入れた街を色ペンで描く活動を思いつき、その場で実行した。(笑)突然の思いつきだったのと、見本のようなものを用意できなかったので、真面目系な子どもたちにとってはこれでいいの?みたいな反応になってしまったが、それでも街を描く活動を楽しんでいた子どもたちはいた。
6-4動画は他のクラス並みに楽しんでいた。それ以上に、まちづくりが盛り上がった。「自分の妄想する街を作りたい」という気持ちが溢れる子どもたちが多くいて、街の絵を描くことを大いに楽しんでいた。
今回の授業は何が良かったか?
とにかく子どもたちが面白いと思うことに加えて、学びの中身があること
→ゲーム実況の動画なのでそもそもコンテンツが面白い上に、YouTuberはいたずらなどの笑わせ要素を作っていてさらに面白い。しかも、街作りのゲームなので、子どもたちは見ているだけで俯瞰し、街が発展する仕組みを学ぶことができる。私が子どもたちの実態や様子に合わせて解説を入れることで、「インフラ」「赤字や黒字」「満足度とは」などの子どもたちの理解を補足することができる。
また、後半2つのクラスは動画を視聴する前に動画を観るときの観点を提示した。最後の1クラスでは、動画の視聴前に動画の内容に関わる主な質問を子どもたちに投げかけて、その質問について私がみんなで予想をたてることで、動画を見た時と振り返りのときに、より学びが深まるのではないかと思った。(仮説)
・準備が簡単
→つい教師が教材づくりに精を出して頑張ってしまうが、子どもたちは知的好奇心が満たされることが喜びになる子(interestingタイプ)と、いたずらみたいな面白さが喜びになる子(funnyタイプ)がいるように感じた。教材は、教師が0から作り上げようとすればかなりの時間がかかるが、実況動画を選ぶだけならもっと負担が減る。
・子どもたちの学びの過程を把握できる機会が増える
しかも子どもたちの動画視聴中や街の絵描き中は教師が子どもたちの様子を観察して、子どもたちそれぞれの学びを把握することができる。普段は机間巡視をしたり、授業後のワークシートからしか子どもたちの学びを知ることができないが、動画視聴中は子どもたちの反応から、振り返りを書いているときはその文面から、そして街を描く活動中はその場で質問しながら子どもたちの学びを把握できる。
・先生も子どもも心地よい気持ちで授業ができる
子どもたちは面白い動画を観てて「面白いし楽しい。」教師はコンテンツを伝えることは動画に任せて、気持ち的な余裕を持ちながら児童の反応を観たり、子どもたちの学びを把握し、そこで得られた感触や感想を次回の授業へ活かす事ができる。担任をしていたときにとても感じたことだが、担任に気持ちの余裕があると、子どもたちの特性から露出する言動に寛容になることができ、子どもたちの気持ちも穏やかになる。だから、教師側に気持ち的な余裕ができることは教師本人だけでなく、子どもたちにとってもメリットがある。
授業の様子
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