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2023超私的ベスト本三選

貴方だけこんばんは、武器よさらば、そして、悲しみよこんにちは。
毎年恒例、僕が読んだベスト本を貴方だけに教えます。くれぐれも、年末年始、深酒と深読にはご注意を。

【本部門】
1.若きウェルテルの悩み(ゲーテ作/岩波文庫)

若きウェルテルの悩み (岩波文庫) https://amzn.asia/d/0xrGa79

みなさん、本気の恋愛をしていますか?
僕はしています。この1年間、フラれてばかりでしたが。失恋からの救済であり、元カノとの完全な決別、そして新しい恋へのきっかけとなったのが、僕にとっては『若きウェルテルの悩み』でした。一言で言えば、これは直近250年で最も美しい恋愛小説です。
 ナチュラルボーンあざとキラー女子ことシャルロッテと、ロマンチストの中のロマンチスト、ウェルテルの許されない恋。決して2人はセックスはしないからこそ、セックスより一層エロくて純粋な、体は通じず心だけが通じ合っている不倫。
ロマンチックを追い求める全ての若き男女に薦めます、全てのロマンチックの根源が、232ページのこの小説に詰まっています。

2.神曲 地獄篇(ダンテ作/集英社文庫)

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents_amp.html?isbn=4-08-761001-2

「驚嘆、飛翔、篤心だ。回復しがたい罪状であり、壮大きわまりない復讐である。あるいは偉大な作為そのものだ。それなのに至上の恋情で、比較のない感銘の比喩である。また深淵の祈念で、阿鼻叫喚であって、それでいて永遠の再生なのだ。」(松岡正剛 千夜千冊より引用)

先ほど紹介した『若きウェルテルの悩み』がここ250年で最高の恋愛小説だとしたら、ダンテ作『神曲』はここ700年で最高の恋物語だ。ダンテが生涯愛した女、ベアトリーチェと、生涯尊敬した古代詩人、ウェルギリウスに導かれ、地獄から天国まで、「あの世」をダンテが観光する、なんて紹介は大袈裟すぎて、僕の肌には合いません!
男子諸君!デュエル・マスターズは好き?遊戯王は?もしこの2つのうちどれか好きなら、絶対に神曲も好きになるはず。なぜなら、デュエル・マスターズの闇属性のクリーチャーはほとんど、「神曲」を元ネタにしてるから!(例えば、黒人龍ヘヴィ・ケルベロスは、地獄篇第六歌に登場するケルベロスが元ネタ!参考画像は下に!)

ウィリアムブレイクが描いたケルベロス

現世で貪欲だったクズたちを、地獄で喰い、引き裂くのがケルベロスのお仕事なのだと、僕は初めて神曲で知りました。現世で勝つことに必死なクズが多い昨今、僕らマトモな人間はナナメの教養として、古典文学に親しみ、バーやクラブ、或いは家で語り合う他ないですね。ちなみに、ここだけの話、今年話題になったChim↑Pom from Smappa!Groupのナラッキー展4階のカラオケパーティールーム、《神曲──La Divina Commedia》はこのダンテ『神曲』が元ネタです。

4階のカラオケパーティールーム《神曲──La Divina Commedia》

3.世に棲む患者(中井久夫著/ちくま学芸文庫)
『「病気をとおりぬけた人が世に棲む上で大事なのは、その人間的魅力を摩耗させないように配慮しつつ治療することであるように思う」。治療者はもちろん、病者も社会の中で生きてゆかねばならない。しかも、病の進行あるいは治療の過程に伴って、その関係の変数は多様化し、無限に変化していくことになる。では、「治療者というものは、常識と社会通念とを区別して考えるべきである」とする著者は、具体的にどう対処してきたのだろうか。アルコール依存症、妄想症、境界例など身近な病を腑分けし、社会の中の病者と治療者が織りなす複雑で微妙な関わりを、豊かな比喩を交えて描き出す。』

僕が今年の9月に抑うつ症状を発症してから、最も救われた本がこちら、心の病気にまつわるエッセイ、『世に棲む患者』です。
現代社会では、魅力的な人間ほど、クズに社会で詰められ、嫉妬され、精神病に陥りやすい。
だから、もし貴方が精神病になって仕事を休んだからといって、全然、劣等感を感じる必要なんてないんだよ、貴方はそのままでとても魅力的な人間なんだよと、優しく語りかけてくれる中井久夫先生は、現代の心療内科のクズ医者から失われてしまった、僕にとって理想のお医者さんです。

さて、本を三冊紹介した後、次回noteではバーホッピングにどっぷりハマった今年、特に好きな東京のバーを3つ、ご紹介します!それでは、良い夢を!

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