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生成AIに関する意見(主に反対意見)に対して思うこと


はじめに

 記事を開いていただき、ありがとうございます。ローウィンです。
 今回は「生成AIに関する意見(主に反対意見)」に対して、個人的に思うことを書いていこうと思います。
 基本的には「イラスト生成AI」を中心とした意見になります。
 最後までお読みいただければ幸いです。

〇各種意見と自分の意見

①無断学習反対と、他のAI(翻訳AIなど)との兼ね合いについて。

 まず、イラスト生成AIに関して、無断学習に反対する意見は非常に多いです。
 例えば、
 「ツールとして反対しているのではなく、無断学習に反対している」(≒技術としては素晴らしいと思っている、優秀なツールだと思っている)
 「ラッダイト運動などではなく、無断学習に反対している」
 「学習に許可を得ているのであれば問題ない」
 「無断学習に反対している人の著作物は学習に用いるべきではない」
 
などの意見を私は見かけています。
 特に「AIはツールの一種である」という風な意見に対しては、前述の「ツールとして反対しているのではなく、無断学習に反対している」(≒技術としては素晴らしいと思っている、優秀なツールだと思っている)という類の意見が返答されていることを見ることがあります。

 しかし、このように言ってしまうと「他のAI(翻訳AIなど)との兼ね合いはどうするのか?」という疑問が浮かびます。
 なぜなら、他のAIも著作物を無断で学習しているものがあるためです。
 もし他のAIは全て良くて、イラスト生成AIは全てダメというのであれば、それは不公平となってしまいますし、かといって、他のAIもイラスト生成AIも全てダメだというのであれば、生活が著しく不便になってしまいます。
 
とくに翻訳AIに関しては、「意図的にその話題を避けているのかな?」と思うほど触れられておらず、私としては少し不自然に感じるのです。

(2024年11月8日追記)
 「イラスト生成AIのみの話をしている、他の生成AIの話をされても困る」
 「学習拒否をしている人の著作物を学習に用いるのは倫理に反している」
 
このような意見も確認したため、追記をします。
 イラスト生成AI"のみ"の話をしてしまうと「では他の著作物の無断学習は倫理に反していないということになってしまうのでは?」というのが私の疑問です。(もしそちらも倫理に反している、というのであれば、前述したとおり、生活が著しく不便になってしまいます)
 無断学習のテーマである以上、どうしても他のAIや他の著作物ともある程度連動してしまう部分があります。それでも無理やり切ってしまう(イラストのみの話をする)と、前述の通り、不公平な部分が生まれてしまうのです。


②現行の法律であれば、ある程度柔軟な対応が可能であるが、その法律に反対している人がいる。

 ただし、現行の著作権法を用いれば、上述の問題に対して、ある程度柔軟な対応が可能です
 これまでの記事(「AIの無断学習について思うこと」)でも書いたように、日本の著作権法に詳しい弁護士の先生A曰く、

≪ここから≫
 翻訳の場合は「学習データが直接出てくることは目的としていないので、学習自体が著作権侵害になることはない」
 イラストの場合は「そのような目的をもって、やろうと思えば、学習データを直接出てこさせようとすれば出てこさせられるので、著作権侵害になることがある」
≪ここまで≫

 と言う風にできるのです。
 しかし「著作権法第30条の4は改正すべき」というような意見も見られます。そうなってしまうと、それこそ「イラストの無断学習は禁止で翻訳はOK」という明らかに不公平な法律か、「すべての著作物の無断学習の禁止」というような不便な法律にならざるを得ないのではないか、と私は考えます。


③イラスト生成AIを利用することや肯定すること自体を問題視する意見について。

 ウェブ上でイラスト生成を利用したり、肯定したりすると、しばしば批判されているケースを私は何度か確認しています。 
 それは「無断学習をしたイラスト生成AIを用いることや肯定すること自体が問題だ」というような意見です。
 しかし、①の項で前述したとおり、無断学習それ自体を問題視してしまうと、他のAI(翻訳AIなど)も利用したり肯定したりしてはいけないことになってしまいます。
 
では②の項で述べたように、「現行法を用いれば、翻訳の場合とイラストの場合である程度分けることができる」と述べた場合はどうなるでしょうか。
 その場合、「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」
という先生Aの言葉から、現行法にのっとって、イラスト生成AIを利用すること自体は問題視すべきではないというのが私の結論です。
 
以前の記事(「NovelAIについて弁護士の先生に聞いてみた!」)で書いたように、弁護士の先生A曰く、

≪ここから≫
「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」
「前提として、私的利用に限る場合はユーザーは責任を負わない。」
≪ここまで≫

 と仰っているためです。
 もし、「翻訳とイラストの無断学習は、現行法で、ある程度分けることができる」ことを肯定するのであれば、「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」という意見も、現行法にのっとった意見であるため、イラスト生成AIを利用すること自体は問題視すべきではないと、私は考えます。


④「版権キャラのイラストが生成できても、それは指示を出したものが悪いから、提供者に責任はない」という意見について。

(※この項では以前の記事の「AIの無断学習について思うこと」の④と⑤の項とほぼ同じことを書いています)

 これはイラスト生成AIを肯定的にとらえている方に多いように見える意見なのですが、「版権キャラのイラストが生成できても、それは指示を出したものが悪いから、提供者に責任はない」というような意見があります。

 これは日本の著作権法の考え方だと、一概にそうとは限らないのです。

 こちらも以前の記事(「日本でイラスト生成AIを提供する場合について」)からのほぼ引用になりますが、サービス提供者が日本国内に拠点を持つなど、日本の著作権法が適用されるケースの場合、既存の著作物と類似した生成物が、特定のプロンプト入力で必ず出力されてしまったり、高頻度で生成されてしまうと、サービス提供者が責任を負ってしまう可能性があります。

 そのため、日本国内に拠点を持つ者(個人・団体など)が、イラスト生成AIを提供する場合、既存の著作物(例:版権キャラの具体的な図柄)と類似したイラスト生成を抑止するような技術的な処置をしておくと、サービス提供者が責任を負ってしまう可能性を低くすることができるので、ある程度安心して提供することができます。

 一方で、サービス提供者が海外に拠点を持つ場合は、海外の国の法律が適用される可能性が高いです。
 例えばアメリカ合衆国の著作権法においては、
AIの提供者がその複製行為者ではなく、AIを使用して現に当該複製物を作り出したユーザーが複製行為者に当たる
「提供者は間接侵害者としても、条件を満たしているとは言えない」
(※投稿者による要約です)
 というような考え方になるようです。
 こちらについては以前の記事「NovelAIについて弁護士の先生に聞いてみた!」をお読みいただければ幸いです。
 そして前述しているように、

「どんな生成AIを使っていたとしても、そもそも生成物がどの作品とも類似していないのであれば、ユーザーは責任を負うことはない。」
「前提として、私的利用に限る場合はユーザーは責任を負わない。」

 この2点も重要となります。


⑤AIイラストは二次創作と同じか異なるか。

 また、イラスト生成AI関連では、二次創作のこともたびたび話題になっています。「AIイラストは二次創作と同じ」「AIイラストは二次創作とは違う」というような二つの意見です。
 私としては、「同じ時もあるし、違う時もある」という意見になります。
 言葉にすると、「AIを用いて版権キャラのイラストを生成すれば、それは二次創作である」し、「AIを用いて既存のキャラとは類似していないイラストを生成すれば、それは二次創作ではない」というものです。

図にすると、

 このような感じです。
 そのため、AIイラストであっても、版権キャラのイラストであれば二次創作であるし、既存のキャラと類似していなければ、二次創作ではないと私は考えます。
 「AIイラストは全て既存のキャラと類似しているはずだからすべて二次創作だ」というような意見には、賛同できかねます。


⑥AIの学習は人間の学習と同じか異なるか。

 こちらもしばしば話題になっているのを見ます。
 「AIの学習は人間と同じ」「AIの学習は人間とは異なる」というような意見です。
 私としては「AIの学習が人間と同じか異なるかはあまり本質的な問題ではなく、当該著作物を享受する目的か否か、著作権者の利益を不当に害しているかいないかが重要」と考えています。
 私自身は脳科学者ではないし、ITの専門家でもないため、本当に同じか異なるかは断言することはできません。
 ただ、AIの学習が「人間と同じだから」問題ないのではないし、「人間と異なるから」問題になるのではない、というようなイメージです。

⑦法整備がされていないという意見について(2024年11月8日追記)

 「法整備がされていない、法律が追いついていない」という意見もあります。
 しかし、文化庁が何度かAIと著作権に関する資料を提供しています。

AIと著作権について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html

 なので、法整備がされていない、法律が追いついていない、という意見には私はあまり賛同できません。

 また、「著作権のさらなる強化を望む」という意味での法整備を望む、というのであれば、私は賛同できないです。

 なぜなら、それは著作権法の目的に反すると思うからです。

 (文化庁資料「AIと著作権Ⅱ」より引用)
≪ここから≫
 著作権法は、著作物の「公正な利用に留意」しつつ、「著作者等の権利の保護」を図ることで、新たな創作活動を促し、「文化の発展に寄与すること」を目的としています。
 そのため、著作権法では「著作者等の権利・利益を保護すること」 と、「著作物を円滑に利用できること」のバランスをとることが重要と考えられており、各種の規定も、このような考え方に基づいて制度設計されています。
≪ここまで≫

 著作権自体は非常にパワフルな権利です。

・著作物を作成すれば、申請を行う必要もなく、自動的に著作権が発生
・著作者の死後70年まで保護される(生きている間を含めれば、合計で100年以上にもなることも多いです)

 このように著作権は強い権利であるため、あまりに強化しすぎると(例えばすべての著作物の無断学習の全面禁止などをすると)「文化の発展に寄与すること」という目的が果たせなくなってしまいます。
 あるいは、「イラストのみを無断学習を全面禁止し、他の著作物はいくらでも無断学習してOK」というような法整備を望むのであれば、それは私は賛同できないし、そのような法整備もしてはいけないと思います。
 
(※現行法であれば、翻訳とイラストの無断学習について、それぞれある程度柔軟に対応することが可能、ということはすでに述べてきた通りです)

最後に

 以上が、今のところ、私がよく見る意見に対して個人的に思うこととなります。
 また、今後も気になる意見が出てきたり、他の方から「〇〇についてはどう思うか」という意見があったら、私の答えられそうなことであれば、追記したり、また新しい記事を書いていこうかなと考えています。
 長くなりましたが、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 それでは!

(2024年11月8日):一部追記を行いました。

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