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感想『納税、のち、ヘラクレスメスのべつ考える日々』

ひとりで博物館に行ったら、入口で看板と共に写真を撮っているカップルがいた。
その横を抜けて自動ドアから中に入ったら、カップルの女性の
「並んでるんですけど」
という声が聞こえた。
私に言うというより、一緒にいる男性に向けたような言い方だったので、一瞬理解が遅れた。
そして「あ、待ちがあるのか」と思った瞬間に、博物館の職員に
「おふたり様がお先でいいですか」
と声をかけられた。

順番を抜かすつもりはなかったし、写真撮影をじゃましないように横を通るという気遣いもした。
それなのに、


順番を守らない自分勝手な女が来た


と『思われた』ことに、なんだかすごくヘコんでしまった。
というか、正確には、


順番を守らない自分勝手な女が来た、と『思われたと思ってヘコんだ』ことにすごくヘコんでしまった。

紛らわしいな。

その後、カップルとともに施設内の注意事項を聞き、立っていた位置的に私が先に通される流れになったので、カップルに「お先にどうぞ」と譲った。
それは、親切でもなんでもない。
「お前らが先に来たんだろ、抜かされたくないんだろ、とっとと先に行けよ」
を丁寧に言い換えた末の「お先にどうぞ」だった。
そんなことでやり返した気になる小さい自分にもヘコみ、展示は全然身に入らなかった。
小規模な展示だったとはいえ、5分くらいで逃げるように出てしまった。

もう大人なのに、こんなことで傷ついている。
こんな些細なことで、カップルを恨み、自分を蔑み、人間なんて嫌いだ、もう引きこもって暮らしたい…までいく。
こんなクソみたいな人間は、世界でも私だけだろうなと思う。

その帰り道の電車で、読んだ本です。


オモコロやwebで活躍するダ・ヴィンチ・恐山こと品田遊さんの日記。
華々しく活躍している(ように見える)彼の、生活の中での悩み、やらかし、苦悩などが綴られています。


帯と、対談内にあった

こちとらこう生きるしかないんだ

が響いた。

私の中にはいつも、

ちゃんとやれ
ダサ、はずかし
大人なのにこんなことも出来ないの?

と私を批評するもう1人の私がいる。
ちゃんとできない恥ずかしい私と、批評するもう1人の私。非合理的でめんどくさい関係。
でもずっとそうして生きてきた。
これからも解消出来そうにない。
普通の人は、こんな風には生きていないのかもしれない。
でも私は。

こちとらこう生きるしかないんだ

これは重りを外して心を少し軽くする、爽やかな諦めだ。

この言葉に出会えて良かった。

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