保育園で魚アレルギー? #106

職場の保育園での出来事。
1歳児のKちゃん、既往歴はないけれど、給食を食べている手で顔をよくさわり、触れた部分がすぐに赤くなるが、すぐに元に戻る。皮膚が弱い方なのかなという印象。(実際に、そういう子はクラスに数名はいる)

ある日、食事前から少し眠そうな様子がみられたKちゃん。
保育にあたっていた保育士によると、
給食の赤魚の煮つけを食べた後に、口の周りにぷつぷつと発疹ができて、痒がり出した。
その後、泣き出し、食事を嫌がるようになり、食べたものを吐き出した。
その後すぐに眠った。
母親に電話をかけ、現状報告。
お昼寝の後も、活気がなく、おやつは食べたがいつもとは様子が違う。
お迎え要請のため、母親に電話するが繋がらず、いつも通り17時のお迎え。
園での様子を説明すると、その日のうちに小児科を受診してくださる。

(翌日)
お母さんから連絡があり、給食で食べた赤魚のアレルギーの可能性を指摘されたとのこと。「自宅では食べない家庭が多いこと、入手しづらい可能性もあるため、保育園の給食で次に出てきたときに、食べてみてもし同じ症状があれば、検査します。」と医師より指示されたとのことだった。

いやいや、症状がでる可能性が高い食材を、保育園で提供するなんて、施設としては到底受けられない。

保育園では、給食を提供する前に、「食材チェック表」というものをお渡しし、園で使用する食材をまず、自宅で食べられるかを確認し、提出してもらったうえで提供している。
そういうこともあり、園の給食で初めて食物アレルギーがわかる、ということはほとんど経験したことがなかった。

お母さんには、保育園では、提供できないこと、赤魚は大手のスーパーでは冷凍食材などを探せば取り扱いがあることをお伝えした。
お母さんにKちゃんの状況をお伺いすると、24時間経ってもまだ、活気がないようだ。
お母さんも保育園で、提供ができないことは理解してくださったけれど、1日経っても明らかに元気がない状態で、赤魚をいつ、どのタイミングで試せばよいのだろうか?と悩まれていた。

(最初の摂取から4日後)
もう一度、小児科に現状をお伝えし、処方されたアレルギー薬を服用中であればアレルギー症状は抑えられるため、自宅で食材を試すように指示されたと報告あり。
医師の指示通り、家庭で赤魚を試すが、機嫌が悪く、寝てばかりだった様子。

(最初の摂取から6日後)
再度の小児科受診、担当がアレルギー診療経験の豊富な女医さんに代わった。アナフィラキシーの一歩手前であったそう。
赤魚の摂取は禁止の指示。
自宅で摂取した際の症状は、最初の受診で処方された薬によって、アレルギー反応が1/1000になっていると考えられると説明されたそう。

1人目の医師は、2回目に症状が出れば、アレルギーかどうか判断。赤魚は食べてOK。
2人目の医師は、状況を聞いただけで、即アレルギーと診断。赤魚摂取禁止。

担当する医師によって、こんなに、異なるのだ。
お母さんも戸惑いつつも、いつもの医師の診察を受ける予定が、本来担当する予定でない先生が急遽、外来に入られたため、きちんと診断してもらえたこと、信頼できそうな先生に担当いただいたことで、幾分ホッとしておられるようだった。

口の周りに発疹がでるのは、それほど珍しくない。
食事後に食べたものを吐き出す子もいる。
もちろん、いつもと違うからこそ、こまめに様子は観察していたけれど、「アナフィラキシー」の可能性までは想定していなかった。

改めて、園で作成しているアレルギー対応マニュアル(厚労省のガイドラインをベースに作成したもの)を読み直してみると、あの時の症状にあてはめると、すぐに受診するレベルだ。

たられば、の話になるが、「この子はアレルギーがある」という前提の認識があればもちろん、昼の時点ですぐにお迎えを強く要請していただろう。

私たちも、(そして初診で担当した医師も)アナフィラキシーを想定した対応は出来ていなかった。
アレルギーの診断や与薬指示が出たのは、最初に受診してから1週間も経っていた。

アレルギー症状が出現したときのために、与薬指示書(保育園で子どもに薬を服用させたり、塗布する際に提出いただくもの)が出された。

そこには「赤魚の誤食により、アレルギー症状が出た場合」に服用させると記入されている。このように書かれてしまうと、それ以外の状況では服薬させることができない。

いや、赤魚以外で同様の症状が出たらどうするのよ!!!

処方薬を預かったとして、与薬のタイミングの判断は???

ガイドラインのなかには対応の手順がのっていて、それに従うと、ひとつでも症状が出れば「内服薬を飲ませる」となっている。

厚生労働省 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)より抜粋


確かに、子どもの命を守ることが最優先なので、症状があれば服用させるが第一選択なのだ。

職員からもいろいろな声があがっていて、

いや、でもしょっちゅう赤くなるけど、すぐ引くのに。。。
そんなこと言ったら、毎回飲ませないとあかんけど、本当に必要?
お母さんに電話してから飲ませる?
(アレルギー対応は保護者への報告よりも、応急処置が先。)
赤魚以外の魚で代替すればよいの?(赤魚以外の魚でも反応がありそう?いったん魚の提供は保留)

食物アレルギー対応の考え方に関する認識にも職員によりいろいろとズレがある。。。

アレルギー対応は、命を守ることが最優先なので、昔は他の子と「違う食事」であることが目立たないように、できるだけ似せて作っていたが、今は完全に区別できるものにするし、食器の色も変えて、誤配膳がないように徹底している。
生卵だけがダメな子も完全に解除になるまでは卵は提供しない園が大半だ(原因食品の除去は完全除去が基準)。食べられるのだから出そう、だと調理するメニュー数が増えて、これもまた誤食に繋がる可能性が高くなる。

施設としてもいろいろな気づきと学びがあった。
ガイドラインもう一度みんなでしっかりと読まないとあかんね。
でも、そもそも、アレルギーと診断されていない子が、アレルギー様の症状があったら、医師の指示がなくても、やっぱり同じように考えて対応しないといけないよね。

突っ込みどころもあれば、対応方法について、まだすっきり解決していない、小児科に、保護者に確認しながら詳細を確認すべき部分も多いけれど、、、子どもの命を預かっているということを忘れずに、情報をアップデートさせていきたいと思った。


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