罪と後ろめたさを手放すお話
なんでもない道
目の前に真っ黒で大きい「罪」って文字が横たえていた
驚いて後退りすると、後ろには痩せっぽちの「後ろめたさ」というやつがニヤニヤしてそこにいた
罪はたっぷり肥えていて
見るだけでもその重量をどっしり感じられる
僕の心の中もずっしり重くなった
「あんた」
声かけてきた
「いつもありがとな」
えっ?知り合い?
いつも?こんな奴と俺は以前から関係があるのか?わからない、わからないけど
胸がもやつく
ふと罪の足元をみると、繋がれた鎖が伸びていていることに気づく
黒く太い鎖をたどる
僕の右手がそれをしっかり掴んでいた
ええっ?!
罪はニヤっとした
そしてゆっくりとタバコを吸い出した
「オレが見えるってことはな
もうお別れか、それとも今後も仲良くするか
選択の時ってやつだ。オレとしてはどっちでもいい」
僕は自分が意図せずこいつの鎖を握り
こいつと過ごしてきたことに
ショックを受けていた
が同時にどこか納得もしていた
そうだ、こいつをいつも心の奥底に住まわせていたんだ
罪、罪、なにかの罪、、
そして背後でニヤつく後ろめたさって奴は。
握りしめた罪を手放す
許されていいってことか
許されていい
許していい
わからないけど、やったー
選択?
それは手放すに決まっている
でもどこか名残惜しい。
こいつを掴んで生きてきたらしいから
こいつなしでどう生きたらいいか
できるのか?困らないか?
罪は大きな体をムクっと立ち上がらせて
言った
「俺もそろそろ飽きてきたころなんだ
罪やってるのさ、
俺が見えてるうちにとっとと決めてくれ」
僕は覚悟を決めた
「罪さん。いままで一緒にいてくれてありがとう。この手を離すよ。さようなら。あ、後ろめたささんもね、さようなら。」
言った途端
鎖はさーっと砂のように消えて
罪と後ろめたさはそのまま凄い勢いで空へ飛んでいった
飛んで行く途中で光に変わっていた
眩しい光を放ち、それもどんどん遠のいて消えた
雲から明るい光が差してきた
なんだか心が軽い
不思議と生まれ変わった気分だ
さあまたやっていこう
なんでもない道を進んだ