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「誰も見ててくれなんて言っていねぇだろ、オッサン…」

中学最後の大会を終えたアシトは東京エスぺリオンユース監督の福田に「コントロールオリエンタード」を教えてもらうが、なかなかできず「へっただなー」とバカにされてこの一言。



やらされる練習

一言に練習と言っても、その心の持ち方はいろいろある。

サッカーをはじめてからというもの、なかなか(2年以上も!)エンジンがかからなかった君も、ようやく3年生になって前向きに練習をするようになってきた。

特に最初の2年は、監督やコーチ、それからパパやママにやれと言われてイヤイヤやっていたのは近くで見ていたパパから見てもよくわかった。
そして、身の入っていない最小限の練習では上達しなかったのは、君がよくわかっているはずだ。

2年生では所属チームでリフティングの回数テストがあったとき、君はリフティングの練習が嫌で嫌で仕方なかったと思う。
ただ何となくリフティングの時間が来てなんとなくこなし、
当然うまくもなっていかないからおもしろくもない。
ついには「結果残せなくてもいいや」と、練習を投げ出してしまった。
一時期20~30回できるようになったリフティングも、イヤイヤ練習と、
その反動で止めてしまった結果、テストの本番は散々な結果だった。

罰則を避けるための練習

「ただ何となく続けるくらいならサッカー辞めようか?」
というパパに対し、
「続ける」
という意思表示とともに、君は少しずつ、練習をするようになってきた。

リフティングの数が30回40回と増え始めたのもこのころ。

ただ、どうしても、言い方が悪いが、辞めさせられないためのアリバイ練習だったのもこのころ。
辞めさせられないためという極めて消極的なモチベーションを満たすための練習だったように思う。
君も、「○分やったからもういい?」とよく聞きに来ていた。
「○分やったから辞めさせられない?」と言い換え可能だ。

曲がりなりにもモチベーションはあることもあり少しは伸びたが、いったいどこに向かっているんだろうと疑問が残る練習でもあった。

ごほうびのための練習

「○回できるようになったらお祝いに焼肉でも食べに行こうか!」

こういうアプローチをしてからは、上達がかなり速くなっていったと思う。
リフティングは100回を超えたし、サッカーに対する姿勢が変わった。

届きそうな目標を設定する「目標設定型」は、生き生きと前向きに物事に取り組ませやすくなる。

ちょっと難しい話をすると、いけるかいけないかギリギリの目標に届いてごほうびを得たとき、
脳の中ではドーパミンというぱーっと頭の中が明るくなる神経伝達物質が放出されてとても幸せでやる気に満ちた気分になれる。
その気分を味わいたくて、目の前の目標をクリアしようと一生懸命になれるんだ。

この脳の機能は素晴らしい。
だから、こういった目標設定とそこに届いた時のごほうびは、
サッカーにも、サッカー以外にもいろんなことに使えるよ。

一方で、パパが少し心配しているのは、
ごほうびがないと動けない子にならないかな?
ごほうびの有り無しだけが価値基準になってしまわないかな?
ごほうびがエスカレートしないかな?
ということ。


ほめられるための練習

ごほうびがなくても、ほめられるだけで、脳はちゃんと喜んでくれる。
実際、練習後に「頑張ったね」「よくできたね」と言われるとうれしいと思う。

もともと、ヒトは誰もが多かれ少なかれ、誰かから
ほめられたい、認められたい、と思うものだ。
これを「承認欲求」という。

パパはママからは「ほめが足らない」と怒られるけど、
パパは、君の頑張りをいつでもほめたいと思っている。
君も、パパのほめが足らないと思ったときは教えてほしい。
反省してもっとたくさんほめようと思う。
また、パパが気づき切れていない自慢をパパに持ってきてほしい。


できるようになるための練習

さて、アシトは今まで言ってきた理由とは別の理由で練習している。
「やれ」と言われたからでも、罰則が伴うわけでも、焼肉をかけているわけでもない。
また、福田監督に認められたいわけでもない。

単に、「できないのが悔しいから」または「できるようになったら楽しいことを知っているから」という理由だ。

その伏線には「これができてれば試合であと3点は取れた」という福田監督の言葉がある。

だれに見ていてほしいわけではなく、自分の上達だけが自分の興味だ。

だから、「見ててくれなんて言っていねえ」という言葉につながる。

何のために練習するか


君は、まだサッカーを始めて間もない。
今はまだできないことばかりだ。

そんなできないことたちをできるようにするのに
「やらされてやる」のか、
「罰則を避けるためにやる」のか、
「ごほうびがあるからやる」のか、
「ほめられるからやる」のか、
それとも
「できないと悔しいからやる」のか、
「できたら楽しいからやる」のか…。

パパとしては上の方より下の方の理由であってほしいと思っている。

そして、君が実際リフティングが200回を超えたときには、
ごほうびやほめられる喜びとともに
「できたら楽しい」と知っているから頑張れた、とも思っている。


今日からできる練習の心構え

活躍したら、またお祝いに焼肉でも行こう、ただし、忘れたころのサプライズだ、そんなに期待はしてはいけない(パパのお財布的に)。
一生懸命考えて、一生懸命やろうとしたことに対してはいつでもほめよう。
そのためにも常に挑戦して、たくさん失敗していいんだ。
いい失敗だってパパは心からほめよう。

それよりも何よりも、できないことをそのままにせず、
できるようになることを信じて、できるまでやってみよう。
できるようになったら、試合で活躍できる。
活躍こそが、最高のドーパミンなのだから。

リフティングでこの喜びを知っている君は、
他の練習でも、こうやって取り組めるとパパは信じている。

パパや監督、コーチが見ていても見ていなくても、
「頑張れ。負けるな。力の限り。」



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