永遠の別れは、夏の雨のように
庭の片隅に小さなライラックを植えた
初めての夏は花をつけず
二年目の初夏に淡い紫の花を沢山つけた
さっそく青いハチドリの群れが飛んできて
花の蜜を吸う
それから
ぽろぽろと雨のように、花が地面に落ちてゆき
ちいさな庭はいつしか広く深い海に変わった
底知れない海の寛容さに怯える
凪いだ海面をクジラが飛び、カモメたちが恋をささやき合う
永遠の別れとは、夏の夕暮れの驟雨のように突然訪れるもの
このにわか仕掛けの海はさざ波をたて
僕たちにいま旅立ちをうながしている
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