短い短いお話
私、選ばれないの。
彼女は言う。つややかで白く美しい顔で。その目はとても冷ややかで、何をそんなに悲観しているのか僕にはわからなかった。
あーあ、早く王子様が迎えに来てくれないかな。そしたらすぐにキスをするのに。
僕が疑問を口にする前に、彼女は頬を丸くさせてふくれる。まあいいか。そんな姿も愛らしいじゃないか。
何を言っているんだ、どこに行くか選び放題なくらい美しいじゃないか。僕のような老ぼれとは違う。
別にやましい気持ちで言ったわけじゃない。現に僕と彼女は二回りほどは違うだろう。彼女は若く小さい。子どもに対する愛おしさだ。
ええ、あなたとは違うわ。だから選ばれないの。ほらみて、選ばれるのは私よりもっと大きくて歳をとってて、綺麗な子たちばかり。
君も綺麗だよ、と言おうとして、やめた。さすがにセクハラになってしまうか、これは。...そんなことを言おうとしたことが恥ずかしい。元から赤みがかっている僕の顔がさらに赤くなっていくのを感じた。
まあまだ若いんだからさ、ゆっくり.......
言い切らないうちに、僕は選ばれてしまった。
「わぁ、このイチゴ美味しそう!」
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