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外来はなんでこんなに待つの?(再診編)②

前回の続きです。今回は診察~会計までの待ち時間発生の原因を書いていきたいと思います。


2.診察~3.会計

・患者さんを呼んでから診察するまで時間がかかる。
・電子カルテの動作が遅い。

→患者さんが呼び出しに気付かなかったり、御高齢で移動に時間がかかったりすると、診察を開始するまで時間がかかります。例えば、腹部の診察で、診察台に横になってもらう必要があるときは、若年者と高齢者ではかなりの時間の差が生まれます。(仕方ない部分です。)
 電子カルテが重い場合があります。サクサクと電子カルテが動く病院やクリニックは今まで勤務した中では、あまりありませんでした。

・高齢の患者さんは時間がかかる場合が多い。
→御高齢の患者さんは、持病が多かったり、検査異常が多かったりして、それだけで話す内容が、若年者に比べて多いです。また、難聴があったり、少し認知症があったりする患者さんもいるため、結果の説明するのに時間がかかったりします。

・新たな検査異常や副作用が出現した。
・違う治療に変更する必要がある。
・患者さんに新しい症状が出た。
→前述の新規の検査異常が出た場合や、患者さんへの問診で副作用が出現した場合はそれの説明で時間がかかります。
 例えば、新規の貧血が出現し、当日に輸血が必要となる場合は、輸血の必要性の説明や同意書の取得が必要になります。新規の悪性腫瘍の疑いがある場合は、少し時間をかけて説明をして今後の方針などを伝えます。
 また、現在の治療の効果が乏しい場合は、違う治療に切り替えますが、免疫抑制薬などを使用する場合は、再度、副作用の説明や同意書が必要となる場合もありそれにも時間がかかります。
 患者さんに新規の症状が出た場合も、それを聴取し、対応をその場でします。患者さんによっては緊急入院が必要となりその指示を出す場合もあります。

 末端勤務医からの視点ですが、再診の時間設定では、患者さんの症状変化に対応しきれないと思います。上記のような場合は、病状説明(場合によっては家族に電話)、同意書の取得、処置または入院まで合わせると30分から1時間かかってしまうことが多いです。
 スーパードクターは、すべて合わせて10分で終わらせることができるかもしれませんが、私の場合はそのレベルに達するまで100年はかかると思います。

・患者さんの家族が診察途中に入室し、初めから説明することがある。
→患者さんの御家族が付き添して受診されることがあり、それ自体はとてもありがたいことです。
 御高齢の患者さんの場合は病状が重かったり、治療がそのまま生活に直結することもあり、御家族の中での相談が必要になることも多く、患者さんの家族が医師から病状説明を又聞きせずに済むため、大変ありがたい存在です。
 しかし時々、患者さんの御家族が診察中や、診察終了間際に入室されることがあり、その場合はまた、すべてを最初から説明する必要が出てきます。


補足
 難聴がある患者さんや、認知症がある患者さんだと、病状説明が途端に難しくなります。
 例えば、
医師「少し腎臓の値が悪くなっています。このまま進行すると、透析とかにもなってしまうので、ちゃんとお薬を飲んで下さいね。」
患者さん「え?腎臓が悪いのかい?」
医師「今はそこまで悪くは無いですけど、進行したらよくないです。」
患者さん「悪くないのかい?」

パターンA
医師「悪くないです。」
→患者さんが家族に腎臓のことは何も言わない。進行してから腎不全を知り驚く。
パターンB
医師「もっと悪くなったら、透析の先生に相談します。」
→患者さんが家族に、透析が必要と言われたと伝えて、御家族が慌てて電話してくる。

ただ単に難聴だけであれば、メモなどを書いて患者さんにお渡し、理解されることが多いですが、難聴の御高齢の患者さんや認知症がある患者さんだと複雑な話が伝わらないため、単純化して話す必要があり、それが家族に拡大や縮小されて伝わるため、大げさな反応が返ってくることがあります。


・患者さんの話が長い
・理解を得るまでに時間がかかる
→これは医師の腕の問題でもありますが、患者さんの話が長かったり、要領を得ない話になってしまうことがあります。
 医師は、症状や異常に対し、疾患を思い浮かべて(鑑別して)必要十分量の情報を得たいと思っていますが、患者さんからしたら、何が必要な情報かは分からなかったりするため、医師が上手く情報を引き出す必要があります。
 例えば、頭痛であれば、いつ(頭痛の発症は覚えているか)、どのような痛みか、痛みの強さ、前兆があるか、頭痛以外に症状はあるかなどを重点的に聴取しますが、患者さんによっては、朝起きてから、発症までの数時間を細かく話したり、頭痛以外の症状について詳しく話し方もいらっしゃるため、医師が話をある程度コントロールする必要があります。
 しかし、患者さんの何気ない一言も副作用や疾患を見つける契機になったりするため、難しい問題です。(例えば、スタチン(脂質異常症の薬)を始めた後に、患者さんが「なんか最近力が入らない」と言ったら、薬の副作用を考えます。)
 あとは、診察終了間際に、新規の症状や困っている症状を話す方もいるため、その場合は、話を聞くために診察が延びます。

緊急性が高い患者さんを優先している。
→重症の患者さんを優先して診察している場合があります。
 検査結果でひどい異常値が出たり(検査科から連絡が来るときもあります)、待合室でぐったりしている、バイタル(脈拍(心拍)、呼吸、血圧、体温」)に異常があるなど、明らかに異常がある場合は検査結果が出ていなくても先に呼ぶことがあります。

 あとから来た患者さんが自分よりも早く呼ばれたというクレームも時々見かけますが、一つの要因は上記の緊急性が高い患者さんを優先しているときがあります。
 他には、受付自体は早かったが検査から帰ってきた。他科の診察から帰ってきた。薬の処方のみの診察ですぐに終われるから先に呼ばれた。などがあります。

・医師がカルテや病院のシステムに慣れていない。
→意外と大きい要素だと考えられるのが、医師の慣れの問題です。
 別記事に書きますが、医師は意外と転勤族です。大学病院に所属している医師だと半年~2年ほどで転勤になります(早いと3か月)。地域の総合病院も大学病院などから派遣されている医師も多いため、転勤で人が変わってしまいます。
 転勤時期は、4月と10月に多いため、この時期の外来は医師が、病院に慣れていなくて外来が遅くなる時があります。病院によって紙カルテと電子カルテの違いがあったり、電子カルテの中でもソフトが違ったりバージョンが違ったりするため、指示や処方、検査のオーダーに時間がかかったりします。
 電子カルテのソフト(会社)が違う場合は、体感としてはiphoneからアンドロイドスマホに変更するくらいの違いがあり、電子カルテのバージョンが違う場合はiphone使用者が、他人のiphoneを使用するくらいの違いがあります。
 また、転勤時に研修が無い場合も多く、勤務初日に外来が設定される場合もあり、その場合は、ログインの仕方だけ教えてもらい、あとは操作しながら覚えたり、分からないところは看護師さんや事務の方に電話して試行錯誤して外来をします。
 また、システムも病院ごとにばらばらで、検査をするときも誰に連絡をするかが違います。

CT撮像について
 パターン1:CTのオーダーだけする。
 パターン2:CTのオーダーをして、検査室に電話をする。検査同意書も取得する。
このように、一つの検査でもどこまで医師がやるかが違うことが多いです。

・医師の作業内容が多い
→総合病院の医師は外来時間の中で、問診、診察、検査オーダー、処方箋発行、次回外来予約、(場合によっては)同意書取得を行っています。
 クリニックなどは、処方箋の発行や次回外来予約を受付で行っているところも多いですが、病院では基本的には診察室で処方箋を発行していて、次回予約もその場で行っていることが多いと思います。
 検査についても医師が注意事項などを話す病院もあり、その説明や同意書取得に時間がかかったりします。

・病院は重傷者が多い。
→これは感覚的に理解できると思いますが、クリニックより、総合病院や大学病院の方が重傷者は多いです。
 癌があったり、心不全を持っていたり、膠原病を持っていたり、毎回定期的な検査や細やかな診察が必要な患者さんが多いです。
 普段ならば2か月に1回の通院で済む患者さんが、何らかの問題で次回は2週間後の通院となったとき、枠が無くても無理やり入れたりします。
 クリニックの場合は、高血圧、脂質異常症、アレルギー性鼻炎など内科の一般的な治療を行っていることが多いです。また、インフルエンザやコロナなどの検査も行っていますが、重症の患者さんは少なく、もし(医学的に)重症であった場合は総合病院に転院となるため、結果として重症の患者さんは少なくなります。

 以上が、外来の待ち時間が発生する原因です。
 思い浮かぶ内の8割を書きました。(炎上しそうな要因は書かないでおきました。)

 診察室がガラス張りや銀行窓口のようにオープンになっていたら、患者さんに外来の待ち時間を理解していただけるかもしれません。(個人情報やプライバシーの問題で不可能ですが。)

 ブラックボックスに見える外来室の中では実はどのようなことが起こっているかを少しでも知っていただければと思います。

今後初診外来の待つ原因も書いていこうと思います。

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