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3時間待ち3分診療の謎
以前、外来がなぜ待つのかという記事を書きましたが、かなり長編になってしまい、結局のところ何が問題なのかが解りづらい記事になってしまいました。
今回も外来の待ち時間の記事ですが、もっと簡潔に短く書こうと思います。
この記事を読んで、待ち時間が起こる原因をより詳しく知りたい方は以前の記事を見ていただけたらと考えます。
日本の外来診療は、よく「3時間待ち3分診療」と揶揄されます。
これは言葉通りの意味では無く、
かなり待たされた挙句に自分の診察はすぐに終わってしまう。満足のいく診察がされない。
という意味です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
この問題には2つの要素があります。「3時間待ち(長い待ち時間)」と「3分診療(すぐ終わってしまう満足がいかない診察時間)」です。
まずは、「3分診療」の方から解説します。
内科の外来で予約枠がある場合は、1時間で6-10人の予約を取っている場合が多く(クリニックの場合は1時間で20人程度の予約枠を取っているところもあるようだ。)、元々外来の一人当たりの持ち時間は6-10分程度というのが現状です。
これは、患者さんと対面する時間だけではなく、患者さんを呼ぶ準備(資料を揃えたり、検査を確認したり)から、実際に患者さんを診察した後に処理(カルテの記載や各方面への指示出しや確認)が終わるまでの時間(患者さんにかかわる時間全て)までです。
したがって、患者さんと対面する時間は、元々3-7分程度しか用意されていません。
3分診療(短い診察時間)それ自体は元々想定されている時間であって、特定の患者さんをわざと短くしているわけではありません。
また、診察時間が短いと言うことは、ある意味良いことで、
「お変わりがない」=「悪化していない。もしくは、少しの変化である。」
という意味で、その患者さんが緊急事態となっていない証でもあります。
状態が改善した時も診察時間は短くなりがちなので、その場合も患者さんには良いことです。
逆に、患者さんの状態悪化があったり、検査異常がある場合には、診察時間は伸びてしまいます。
つまり、診察時間が短いということはその患者さんにとっては概ね良いことといえるでしょう。
もちろん、医師が忙し過ぎて検査もろくに見ないで同じ処方を出していると言うような場合や、患者-医師間の人間関係が崩壊していて、なるべく対面時間を減らしたいと言う思惑がある場合もありますが、それは特殊な状況と考えます。
医師も患者さんの待ち時間のプレッシャーを感じている。
意外かもしれませんが、医師も意外と患者さんの待ち時間に対してプレッシャーを感じています。
まず前提として、外来の待ち時間を長くしたい、自分の業務時間を長くしたいと思う医師はほとんどいません。
多くの医師は、外来以外にも仕事があるため、外来後の仕事のことを考えるとなるべく時間内に終わらせたいと考えています。
外来の長い待ち時間は昔から問題ではありましたが、昨今の医療のサービス業化が進んでから、患者さんの意見に対してより注意を払うようになっています。
カルテにもよりますが、画面に待ち時間が表示され、一定時間が過ぎると赤色に変色したり、看護師や他のスタッフが注意しに来たりします。
また、看護師さんやスタッフ経由で待ち時間が長いことを伝えてくる患者さんもいれば、直接、医師にお叱りになったり、受付に怒鳴ったりする患者さんもいます。
待ち時間が長いと、クレームにつながり、医師だけでなくほかのスタッフにも悪影響が出て、それが医師の評価(昇給や昇進というような人事評価では無く、スタッフ間での医師の評価)や悪口につながったりもするので、気にする医師が大部分だと思います。
以上のことから、業務時間を減らしたい、周りから白い目で見られたくないと言うような2点から、業務の作業時間は減らしたいと考えています。
次に、「3時間待ち(長い待ち時間)」について解説します。
以前の記事で、実際の待ち時間が起こる原因を各論として書いているので、より詳しい解説を読みたい方は記事を読んでいただければと思います。
外来の待ち時間が延びる一番の原因としては、外来時間が患者さんの状態変化(特に悪化)を想定していない。と言うところにあると思います。
前述した通り、患者さん一人の持ち時間はおおよそ6-10分です。対面している時間を3-7分程度と仮定すると、前回の外来からの近況報告、状態変化の確認くらいでそこまで深い話はできません。
全ての患者さんが、何もつつがなく診療が進めば、待ち時間はほとんど発生しないといっていいでしょう。
しかし、医療は元々、アクシデントや緊急事態に対応する仕事のため、すべての患者さんが何も問題なく終わると言うことはほとんどありません。
以下に上げる要因の結果、少しでもズレや問題が生じた場合にはあっという間に崩壊してしまいます。
患者要因(遅刻、余計な話が長い、迂遠な説明など)
医療者要因(再検査、病院に不慣れ、段取りが悪いなど)
疾患要因(状態悪化、新規病変の出現・発見、他病院へ転送など)
まだ、遅刻以外の患者要因と再検査以外の医療者要因であれば、一人当たり10分程度の延長で済むかもしれませんが、疾患要因がある場合は30分から1時間程度延長してしまうこともざらです。
このように、一人一人の診察時間が延びていき全体として3時間待ちとなってしまいます。
病院は予約時間は決まっているけど、メニューは決まっていないレストランのようなものです。
レストラン側(病院側)はルーチンで出せる料理、時間がかからない料理(病気に変化がない診療)を想定していますが、お客側(患者側)は想定外の料理や2時間かかるコースメニューを注文する(状態の悪化や新規病変の出現)ことがあり、それで次の人の待ち時間が延びることになります。
さらに患者さんは、自覚症状がなく、状態が悪化している(血糖高値やHbA1c高値など)こともあるので、患者と医師が予想していないことも起きます。
自分も病院やクリニックを受診するときの待ち時間が嫌いなため、患者さんを待たさないように個人的には努力をしていますが、なかなか解決しないのが実態です。
今回は外来の3時間待ち3分診療について解説しました。
今後も、患者さんの疑問に思っていることなどを記事に書けたらと思っています。