ご夫婦4

サービス担当者会議が緊急招集された。本来管理者級しか集まらないのだが、私も担当ヘルパーとして同席することになった。
サービス担当者会議とは…
その利用者にかかわる専門職が集まり、今後の支援内容や方法を話し合うもの。
担当者が集まっていても、奥様は黙っている。ご主人は「ほんとすいませんねーお忙しいのに」と話している。
司会進行をするケアマネジャーが「奥さん、介護大変?」と聞く。奥様は「大丈夫ですから…今まで通りで…」力のない声だ。続けてケアマネジャーが「本当は疲れているんじゃない?限界なんじゃない?」と聞くとポロポロと涙があふれた。

ご主人は何とも言えない顔をしていた。
静寂の中ケアマネジャーが

「奥さん…少しお休みしてみようか」

と言う。そんなことできませんという奥様。すると、ケアマネジャーは今度、ご主人に対して「奥様を助けると思ってデイサービス行ってみない?」と。
その時、初めてご主人が語気を強めて「あんな子供じみたところには行けません!!」と怒った。それでもひるまずケアマネジャーは「奥様が倒れます」と言う。奥様がいないとあなたはこの家で生活が出来ない。だから、行ってください、奥様を助けると思って。

そのやりとりが続いた。お互いに譲らない。奥様はもういいですからと言い続けるのみで、進まない。

最後はご主人が根負けし、一度だけなら行っても良いとなり、デイサービスのお試し利用が決まった。

本人の意思が一番だと思っていた私は衝撃だった。
本人の意思より在宅生活を継続させる、それが最終的に本人たちの利益になる。だから、一度中長期的な視点で見る。

呆然とそのやり取りを見ていたし、凄いと圧倒された。
こうして、1日型のデイサービスを利用したご主人は、とても気に入り友達もできたそうです。奥様も休みが出来て、お互いに満足されているそうです。

余談
その後、ご主人は寿命で亡くなられました。お葬式に呼ばれ、お焼香をあげようと伺ったのですが、ご友人、ご親戚の方が快く受け入れて下さり、手を合わせました。すると込み上げるものがあり、泣いてしまいました。すると、ご家族・ご友人が次々と泣き出し、上司に雰囲気壊すんじゃないよと怒られました。今ではいい思い出です。

訪問介護 ご夫婦編 完

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