映画「パリタクシー」一度きりの人生に、寄り道のススメ
どうも。ムララボです。大人の映画を見ました。
背景は美しいパリの街、タクシー空間での会話で綴られる人生の映画。
人生とは、切ないけど愛おしいもの。映画って素晴らしい。
「パリタクシー」は、92歳のマダムと、疲れ切ったタクシー運転手が織りなす、忘れがたい“寄り道”の旅の物語です。パリの街を舞台に、人生の岐路に立つ2人が偶然のドライブで出会い、共に「過去」と「今」を見つめ直す様子が描かれています。この映画、まるで長くて辛い人生を生きた女性からの贈り物
主人公のシャルルは、人生に疲れ果てたタクシー運転手。金なし、休みなし、免停寸前と、なかなかの崖っぷち生活。そんな彼のもとに現れるのが、92歳のマダム・マドレーヌ。彼女はパリの反対側までタクシーで向かう途中、シャルルに「寄り道してくれない?」と頼むんです。この「寄り道」が、シャルルと観る者に思いもよらない人生の深みを見せてくれるきっかけになります。
マドレーヌは、ただの年老いたマダムではありません。彼女が「寄り道」で立ち寄る先々には、彼女の壮絶で美しい過去が隠されている。パリのカフェ、古びた建物、静かな公園…寄り道するごとに、戦争、愛、悲劇、そして希望といった彼女の人生の断片が少しずつ明かされていくんです。まるで人生のアルバムをめくるような感覚。この寄り道で、シャルルはただの運転手から、マドレーヌの「人生の見届け人」に変わっていくんです。
そして、このマドレーヌの“告白”がシャルル自身の心も揺さぶります。シャルルにとって彼女との旅は、ただの仕事ではなくなり、いつしか自分自身を見つめ直す時間となっていく。人生に何度も立ち止まってみることの大切さ、過去を受け入れ、そこから前に進む勇気を、マドレーヌの寄り道が教えてくれるんです。
さらに、映像美も見逃せません。パリの街がただの風景ではなく、彼女の過去を包み込む「記憶の舞台」として映し出されるんです。色褪せた街角や、温かみのある光が差し込むカフェ。一つ一つの場所が、まるでパリ全体が彼女の物語を語っているかのような美しさで、スクリーンに広がります。パリの街を歩いたことがなくても、観る者もその一部に溶け込んでいくような感覚に。
そして音楽。しっとりとしたピアノの音色や、どこか懐かしいフランスのメロディが、映画全体の温かな雰囲気を引き立てています。音楽が、寄り道の旅を一層ロマンチックで深いものにしてくれるんです。最後のシーンに流れる曲が、まるで人生のエピローグを語っているかのようで、心にずっと残ります。
「パリタクシー」は、私たちが忘れがちな「寄り道」の大切さをそっと教えてくれる作品。忙しい毎日、まっすぐ進むことばかりを考えがちですが、ときには少し立ち止まり、寄り道をすることで初めて見えてくるものもある。マドレーヌがシャルルに、そして私たちに残した言葉や想いが、深く心に響く作品です。ぜひ一度、彼女の寄り道に一緒に付き合ってみてください。
映画「パリタクシー」の音楽は、ジャズとシャンソンが織り交ぜられた、まさにパリならではの情緒を感じるサウンドトラックです。しっとりとしたピアノの旋律に、ふと入るアコーディオンの音色やウッドベースの低音が重なり、パリの街角を歩いているような気分にさせてくれます。ジャズのゆったりとしたリズムが、シャルルとマドレーヌの寄り道の旅にぴったり寄り添い、心に染み込んでくるのです。
シャンソンの要素が入った曲は、マドレーヌの過去に触れる場面で特に印象的に使われています。少し懐かしいメロディが流れると、まるで彼女の人生の記憶が柔らかく蘇ってくるような気がします。シャンソン独特の哀愁が漂うその音楽は、ただの背景音ではなく、マドレーヌの人生そのものを語っているかのよう。彼女の想い出の断片と、パリの風景が重なり、シャルルも、観客もその世界に引き込まれていくのです。
また、映画を彩るジャズの音楽も素晴らしく、まるで深夜のジャズバーでグラスを傾けながら聴くような贅沢な空気感を感じさせてくれます。タクシーがパリの街を走り抜けるシーンで流れる曲が、夜のパリの美しさとどこか漂う孤独感を際立たせ、シャルルの心情とも見事にシンクロしているんです。
この映画の音楽は、ただのBGMではありません。ジャズとシャンソンが交差するそのメロディは、パリという街が持つノスタルジーと、そこに生きた人々の記憶や感情を映し出しているかのようです。映画を観た後、パリの小さなカフェで、少しだけ深いワインレッドのシャンソンを聴きたくなる――そんな心地よい余韻を残してくれる作品です。
歌詞の引用をします。
この歌詞は、フランスの名曲「愛の讃歌(Hymne à l’amour)」や「ばら色の人生(La Vie en rose)」で知られるエディット・ピアフの曲のように、愛と人生の切なさを歌い上げたものです。特に「私は何のために生まれてきたの/それを知るのは神様だけ」という一節は、人間の存在や人生の意味に対する問いかけが、神に託された運命の不可解さを暗示していて、まさにピアフが愛の歌に込めた哀愁を思わせます。
映画「パリタクシー」の音楽も、こうしたシャンソン特有の情緒がたっぷりと滲み出る
映画のジャズやシャンソンが奏でるメロディも、歌詞にある「地上の塵に過ぎない私の一生」という儚さや、「愛は何のためにあるの/誰も与えてくれないのに」という孤独を包み込み、どこか諦めと切なさを感じさせる。パリの街と、寄り道をするたびに浮かび上がる人生の一瞬一瞬が、まるでシャンソンの歌詞のように観る者の心にじんわりと染み込んでいきます。
この映画を観た後、ぜひピアフの「愛の讃歌」や「ばら色の人生」に耳を傾けてみてください。彼女の歌声に乗せられた、愛の歓びと苦しみの物語が、「パリタクシー」の中でマドレーヌが語る物語とリンクし、さらに深い感動を呼び起こしてくれることでしょう。
切ない人生を歌い上げた映画「パリタクシー」はこちらから堪能いただけます。