メモ:⚪︎虎⚫︎翼
2024年9月26日記
いよいよ明日最終回を迎える今評判のNHK朝ドラ《虎に翼》、途中から見始めたので、どこかで説明があったのかも知れないが、そもそも《虎に翼》とはどんな含意のタイトルなのか。そこにはどのようなニュアンスが込められているのか…
「虎に翼」は、韓非子「難勢篇」の語とされ、「鬼に金棒」と同じく「強い上にもさらに強さが加わる」の意味で、日本書紀の中でも引用されている(『日本書紀』巻第二十八「天武天皇 上」)ことわざというが、中国語世界にあたってみると、関連する語源の解釈等はいくつかある。これに相当する“虎添翼”を含む成語にも3種あるらしい。
為虎添翼:出典 《逸周書·寤敬篇》
これは、虎に翅膀、すなわち,翼/羽を加えることで、もともと強いものが更に力をつけることを意味する。ただ、原典には、悪人に助けられ、悪人が勢力を増すという意味も含まれていることから、決して良い意味には使われないという。動詞「添」に替え、「傅」を使った為虎傅翼、傅虎為翼という類義語もある。
如虎添翼:出典 諸葛亮《心書·兵机》
これは、虎が翅膀を得るにも似て、力ある人物が助けを得て更に有力となることを意味する。通常、強者が助勢を勝ち取り、更に強大となる事態を形容する。
猛虎添翼:出典 《人民日報》
この比較的新しい成語は、強大な者に対してある種の有利な条件が附与されることを意味する。あるいは、強者が新たに獲得した有利な条件により更に強大となることを形容する。猛虎插翅という類義語もある。
これらは何れも虎を比喩として、強者が助勢を得て、ないしは条件変化により更に強大化することを示すものだが、使われる場面、あるいはそこに込められたニュアンスの相違により、それぞれ異同がある。
果たして、NHKが自らの評判ドラマを中国語で報じる際、どのような中国語をこれにあてるか、大いに関心が持たれるところではある。例の外部スタッフによる中国語国際放送事件(*)以来、相当気を使うハズだ。
お行儀のよいNHKゆえ、頭記の為虎添翼はおそらく使うまい。三淵嘉子をモデルとしたヒロインの寅子を悪人扱いするわけには行かない。となると、猪爪ファミリー、明律大学女子法科時代の仲間から始まり、周囲の応援を得て、寅子が家裁所長となってゆく過程がメインストーリーということから、やはり2番目の如虎添翼だろうか。
[了]