15年ぶりに再会した初恋の人との食事
今度こそうまくいくかな。
そう期待を、膨らませながら待ち合わせのお店に向かう……。
実はナツミとのデートは2回目。
1回目は15年前のあの中学2年生のとき。
となり町にあるナツミの家は、僕の家からは少し遠い。
ある日曜日の夜、僕はナツミをデートに誘おうと電話をした。
当時はポケベルもケータイも持っていなかったので、家の電話でかけた。
ドキドキ……。
「ハイッ」
なんとナツミのお母さんが電話に出た。
めっちゃ気まずい。
いや、人生で1番気まずい瞬間だ。
「宿題のことで教えてほしいことがあって……」
なんとかテキトーにごまかし、ナツミにかわってもらった。
もうこの時点で汗だくだ。
Tシャツの背中も色がかわるぐらい汗だく。
「次の日曜日、あのトンネルのところで会わない?」
「いいよー。何時にする?3時ぐらいかな?」
ナツミとの初デートはとなり町をつなぐトンネルの入口で会うことに。
「おまたせ……」
僕はグレーのパーカーになぜか青いジャージのズボンを履いている。
かなりダサい。
ナツミは黒の襟付きのシャツにデニムだ。
かわいくて、カッコいい。
ここで、ナツミとの初デートがうまくいくと思いきや、お互いしゃべるのが苦手で、しかもデートの仕方すら、よく分かっていなかった……。
学校での出来事を少し話して、沈黙……。
また少し話して、沈黙……。
近くの公園に移動して、ベンチに座った。
ほんとにしゃべれない。
せっかく好きなナツミとの初デートなのに、いったい何をやってるんだ!
すると、ナツミが、
「そろそろ帰ろっか。また明日学校でね」
「うん、帰ろっか、また、バイバイ」
と言って、明日から何もかわることのない、日常を過ごした。
……
…
ラインで今お店の前に着いたよ。
と、ナツミに送った。
するとすぐに、
もう着くから!
という返事とともに、
黒いシャツを着た、デニムの女性がやってきた。
ナツミだ。
2人は「天ぷらそば」で有名なそば屋さんに入った。
「ここのそば屋さん、ずーっと気になってて1回行ってみたいなーって思ってたところ」
僕の向かいにナツミが座り、となりにバッグを置く。
えんじ色の着物を着た店員さんが、注文をとりに来た。
「天ぷらそば定食を2つ」
僕は少しカッコつけて元気よく伝えた。
それを見ているナツミの笑顔が、
とってもかわいかった……。
〈930文字〉
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?