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芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を読んだ時決めたこと。

最近、昔のことを話す機会があって、ふと思い出した。
今はそれを何の疑いもなく当たり前と考えているから何とも思ってなかったけど、話してるうちに、それには、そもそものきっかけがあったことを思い出した。

それというのは
「蜘蛛は見逃す」ということだ。

「夜の蜘蛛は泥棒蜘蛛」だから夜の蜘蛛は
やっつけなきゃ。
でも、「朝蜘蛛は縁起がいい」って聞いていた。なので、夜に見つけた蜘蛛は見なかったふりをして朝までそのままにしている。
…朝蜘蛛になるから。

絶対に蜘蛛は始末しない。と決めている。


たしか、中学。あれ?小学校かな?
国語の授業で、芥川龍之介のことを学んだ。その日、私は初めて「蜘蛛の糸」を読んだ。
当時の私は芥川龍之介の作品が薄暗くてなんだか怖いという印象しかなかったから、自ら
選ぶことはなかった。でも、授業だったからとりあえず読んでみた。読み終えた時、

「へえー。良いこと知ったー」と思った。



「蜘蛛の糸」、皆さん知ってますかね?
すごいザックリ話すと、
泥棒したり悪いこといっぱいしてた男が、
地獄に堕ちて血の池でアップアップしてるところを極楽にいたお釈迦様が池(池の底に地獄が見える)を覗いてみたところ、
「あの、アップアップしてる男は昔、一匹の蜘蛛を助けてたな」と思い出し、「地獄を脱出するチャンスを与えよう。」と、池の淵に蜘蛛をおき、糸を垂らさせて、それを使って救出してあげよう。ってわけなんだけど、
男が長い距離、蜘蛛の糸を昇るのに疲れて一休み。ふと下を見たら地獄の連中がわんさか同じ糸を辿ってることに気づいちゃったもんだから、糸が切れる心配をして、後から来る連中を蹴落としたら、その途端プツンと糸が切れて、男もまた地獄ですよ。って話し。
……

自分さえ良ければいい。とか、そうゆう考えはやめましょう。って授業だったと思う。

読み終わっても興奮しちゃってて、その授業の結末が全然記憶に無いから、たぶんその日はずっと妄想してたんだと思う。

その妄想計画は35年以上経った今でも
脳内で映像化できるほど鮮明だ。
世の中「絶対」ってことはないというけど、この計画はあの世のことだから、
「確実に、絶対大丈夫だ!」という自信になっている。

地獄に堕ちる事を前提とし、「蜘蛛の糸」に巡りあってから今に至るまで秘かに守り続け
姉、姪っ子、我が子にまで言い伝えてることがある。

「これを知ってれば、地獄に堕ちても心配ないよ!絶対大丈夫!」って。


子ども時代から、自分の中で、
「これ、悪いことだな。」と思いながらも
人の目を盗んでコソコソ悪いことをしてきた。
(もちろん何してもいいわけではない。それは分かってる。)

子どもの頃は、近所の家の塀に昇ってザクロを盗み食いしたり、向かいの家が和室の窓を開け換気をしている習慣を知ると、なんの目的も意味もなく小石や枝を拾っては外から室内に投げ入れてみたり、友達とケンカした日は、勝手に友達の家の人のふりをして食堂に出前を大量注文したり。(どの悪さも追及された時に必ず「嘘をつく」という罪も犯してる)
その他、、略。


…ダメだよね。


いたずらが思いついた時の自分を思い浮かべてみた。
…キラキラしてるし、ニヤニヤしてる。

そんなこんなで、自分は地獄行きも有り得ると思ってきたから、蜘蛛の糸を読んだ時、
「こんなチャンスもあるのか!」と目の前が明るくなったのだ。

それからずっと、私は蜘蛛は見逃している。
絶対助けの糸を出してくれるから。

その後、別経由で、
「地獄と天国の食卓の条件は同じ」ということを知った。
大きなお皿を皆で囲むのだけど、お箸はすっごい長いんだって。その箸を使って、地獄の面々は、我先にと自分だけ食べようとする。でも、箸が長すぎて自分の口には入れられない。食卓、大パニック。みんな自分の事しか考えていない。食べられない。イライラする。暴れる。まさに地獄。

同じ食卓でも、天国のメンバーは、その箸を使って、向かい側の人に食べさせてあげる。
その長い箸(私の想像では2メートルくらい)を使いこなせるのも凄いが、何よりお互いを思いながら食事をしようとするところが美しい。きっと大きなフワフワの雲の上で美男美女がヒラヒラしたお揃いの白い服を着て、
向かいの人に「はい、アーンして♡」って食べさせっこしてる。素敵天国。

これを、知ったことで、私は更に自信がついた。自信がついたため、中学、高校時代は
チャレンジャーのように日々悪さをしていた。…教えたくない。

だけど、

「地獄でも大丈夫だよ!」



地獄に堕ちた私は、ある計画を実行するため、ものすごい集中力で日々の反省ぶりを披露し、沢山の辛い罰も耐えてきた。
その猛省ぶりは凄まじく、あの閻魔様が
「お前、もういいよ、わかったよ。痛々しいよ…。番人に昇格。」と言うほどだった。

この時を待っていた。この日のためにグラグラの激熱な釜にも耐えた。河原で何度も何度も積み上げた石を崩されるという屈辱にも耐えた。
なんなら自らサーキットトレーニングみたいに各所を巡った。
弱音も吐かず、罪を滅ぼしてきた。

『地獄のみんな、待ってろよ!これから私が何とかするから!』

番人に昇格した私はその後も地道に計画を進めた。閻魔様や、先輩番人に忠実に従いながらも、数々の罪をもつ地獄の面々に叱咤激励を飛ばす。
休憩時間には積極的に雑談に参加し、各々の人柄を理解し、時に笑い、時に涙しながら
次第に絆を深めていく。閻魔様に各々の良さを伝え、評価の交渉もする。

そしたら、ほら。
あんなにヤサグレてた奴も素直に罪を償うべく苦行に耐えているじゃないか!

閻魔様をはじめ、先輩番人からの信頼も厚く、面々からも慕われている。いつしか番人リーダーになり、ぐんぐん昇格する。

とうとう、「天国&地獄合同役員大会議」の参加が許された。
お釈迦様と閻魔様が揃って上座に着席。
そこで私が超長期間かけて練り上げた計画を発表する。
私は、
「優秀者上位20名を一期生とし、模範的地獄生活を実行したい」旨を提案。

なんなく許可がおりた。
だって私、信頼されてるから。

地獄へ戻って、いよいよ実践!

まずは、食事の仕方から。
健康的な思考は元気な体から!
私は天国のやり方を教える。
この長い箸の使用方法。「ほら、向かいの人に食べさせてあげてみて!ね?食べられたね!
おーい!今度はそっちから箸使ってこっちの人に食べさせてー!」

あー。イイ、イイ!できる!できる!

さあ、いよいよ最終段階だ。

「ちょっとー!みんな聞いてー!
天国からのお知らせでーす。
今から血の池地獄に天国から蜘蛛の糸が下りてきます!糸をつたって頑張って上がっていけば天国手前のお試し圏内に行けます!お試し圏内でイイ感じになったら天国合格が決定だよ!」

ザワザワザワ。ガヤガヤ、ワーワー。

あー、やっぱりか。こんなスペシャルな話し聞いたら、みんな自分のことしか考えてないよ。誰が先かを争ってケンカになってるじゃん。
「ねぇ!ちょっと黙って!」

シーン。

良かった!絆を深めてきたことが最良のかたちになってる。聞く体制にすぐ入れるようになった!

ここで、一期生として選抜した上位20名を発表する。

よーし!血の池地獄に集まれー!

「ほらね、蜘蛛の糸が下りてきたよ。
慌てなくても大丈夫だよ。順番に行こう。」

「ここ、大事だよ!絶対焦らない!後ろから次の人が来ても乱暴しちゃダメだよ!信じて!必ず行けるから!」

お釈迦様はお見通しだった。私がずっと見逃してきた蜘蛛たちを大量にストックしてくれていた。大会議の時に「成功を祈るね」って肩をポンと叩いて天国でスタンバってくれてた。

さっきまでケンカしてたのに、一期生が昇る姿を応援してる。次こそは自分が!とみんな希望を持って地獄生活を過ごす。
そして、伝え、引き継ぎ、繰り返す。
良かった。計画は成功だ。

私の順番は、しばらく先でもいいかな。
だって絶対大丈夫って思ってるからね。


こんな計画を真剣に持ってる。

歳を重ねながら、自分の経験を参考にしながら時々アップデートしてきた。色々経験してきたのも無駄になることはない。
これが今のところの最新版の計画だ。

そして、皆さんにも計画に乗っかってほしい。地獄で計画会議しましょう。役割分担とかね。更に良い提案があると嬉しい。

予定外に私が天国だとしたら、その時は
講師になって、地獄との合同会議で、この計画を提案しよう。そして、まずは優秀者を
対象としたセミナーを開催する。



そうして、今日も、換気扇のフチから
スーッと目の前に突然現れた蜘蛛を、
糸だけ指でつまみ、ヨーヨーみたいにさせながら、尚且、見失わないようにそっと外に連れ出し地面に這わせたのだ。

※最後までお付き合い頂きありがとうございます♪

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