【ちょっと予習】『義経千本桜』…7月『星合世十三團』のために
7月、歌舞伎座の昼の部は通し狂言『星合世十三團』。
2019年の上演を見ていないので、ベースとなる『義経千本桜』を予習。
1.相関図
通し狂言は登場人物が多い。
文楽版ではあるが文化デジタルライブラリーに全体の相関図があったので、チラシから13の役と組み合わせてみたのが、下の画像だ。
2.楽しみポイント
姫から老け役まで、さまざまな團十郎が見られる。
特に「知盛」は写真からも期待が高まる。
團十郎が危険な人物を演じると、怖さ2500%である。(個人の感想です)
13の役、全身写真はナタリーの記事でも見られる。
かつて2代目市川猿翁(当時は3代目猿之助)が「殺し殺され…」と早替りでの役の数々について説明していたのは『伊達の十役』だったと思う。
13役となると膨大なセリフ量になる上に、「この2人は同じシーンにいるよね?」という部分もあるので、どう演じるのだろうと想像しているだけで時間が過ぎる。
見取り形式の上演でも人気の場面が並ぶ。
早替りあり、宙乗りありという、仕掛け満載の通し狂言なので、多少、駆け足になるのは避けられないと思うが、それでガッカリするのは勿体無い。
今回のような上演は、驚いたり泣いたり笑ったり、素直に楽しむのがいいと、わたしは思っている。
通しは有名狂言の全体を掴む絶好の機会だとか、スピーディな展開に役者と裏方さんの見事な連携が見られるとか、大人らしい(?)鑑賞ポイントもあるとは思う。
けれど、通しゆえに客席の熱気が途切れず、独特の盛り上がりを味わえることもポイントのひとつだと思う。
何かと比べたりするより、ウワーッと気持ちよく物語の渦に巻き込まれたい。
3.『義経千本桜』 全体あらすじ
『星合世十三團』、ベースは『義経千本桜』である。
『義経千本桜』は1747年初演の人形浄瑠璃。
作者は並木千柳、三好松洛、2代目竹田出雲。
『菅原伝授手習鑑』、『仮名手本忠臣蔵』とともに三大名作とされる。
壇ノ浦の栄光から一転、頼朝に追い込まれる義経に、「実は生きていた」という設定で平家の強者まで襲いかかってくる。
騙し、試し、化かして二転三転の物語である。
数百年の間、変わらず互いを慕い案じ続ける狐の親子。
他方、昨日の味方は今日の敵と、親兄弟まで果てなき争いを続ける人間たち。
美しく力強い言葉で展開する物語に、圧倒される。
文化デジタルライブラリーでは浄瑠璃の詞章もダウンロードでき、情報量も凄まじい。とてもありがたかったので、お勧めしたい。
最後に、長くて恐縮ながら、各場、約100文字であらすじを残しておきます。
*『義経千本桜』をもとにしているため、『星合世十三團』と一致しない部分がある可能性をご了承ください。
発端
合戦の功により、かねてより希望の「初音の鼓」を賜った義経。
左大臣藤原朝方が、これこそ後白河法皇の院宣だと言う。
頼朝と義経は鼓の表と裏。鼓を打つ=頼朝を討つ。
義経は「決して打たない」として鼓を受け取る。
堀川御所の場
義経に謀反の疑いありと、鎌倉方から詮議の者がやってくる。
弁慶が応戦してしまったことで、卿の君の犠牲も無駄になり、義経たちは都を離れざるを得なくなる。
伏見稲荷鳥居前の場
静御前に鼓を渡し、落ち延びてゆく義経たち。
残された静御前を討手が取り囲むが、義経の家臣の佐藤忠信が現れて救う。
渡海屋〜大物浦の場
船で九州へ渡るため、義経たちは天気を待つ。
鎌倉方の詮議の者を渡海屋の主人銀平が追い払うが、それは信用させるための策略。銀平は実は、生きていた平知盛。
夜の海上での戦いの末、知盛と典侍の局は命を絶つ。
椎の木の場、小金吾討死の場
平維盛を探す、妻子と小金吾。休んだ茶店で権太に因縁をつけられ金を奪われる。
その上、討手と斬り合いになり小金吾は討死。
死骸を見つけたのは、維盛の首を差し出せと鎌倉方に詰められた帰り道の弥左衛門だった。
すし屋の場
息子の権太は、ならず者。
権太は母を騙して取った金、弥左衛門は若衆の首を、すし桶にそれぞれ隠す。
金目当てに、維盛の首ばかりか妻子まで差し出した権太を弥左衛門は刺すのだが、全ては改心した権太の計画だった。
川連法眼の館〜奥庭の場
義経を訪ねて、佐藤忠信がやってくる。静御前と鼓はどうしたと聞いても要領をえない忠信に、怒る義経。
そこに静御前と忠信が到着したとの知らせ。
実は静御前と共にいたのは、鼓の皮にされた親狐を慕う子狐とわかる。
鼓を与えられて喜ぶ源九郎狐の助力もあり、討手を翻弄する義経たち。
僧になりすましてこちらを狙う平教盛のことも、義経は見破っていた。
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。