【読書感想】落語にみる 江戸の「悪」文化
2025年2月は歌舞伎座で《人情噺文七元結》が上演される。
《文七元結》は三遊亭圓朝の落語ということで、予習の中で、読んだもの。
落語では、悪人は間抜けで憎めない。泥棒は、失敗する。
それは、盗みは罪が重かったので、成功してしまうのは笑えないから。
そして泥棒や賭博の話が多いのは、庶民の貧しさを表すものでもある。
江戸時代は十両以上を盗むと死罪、心中も「相対死」と呼ばれて重罪だったことなども交え、上のようなことが示されている。
興味深いのは、江戸城(日本橋)を挟んで多摩川と隅田川に、ほとんど対照的に寺があり(芝の増上寺と上野の寛永寺)、遊里、刑場があったことを示す図。
さらに、永代橋は身投げの場として知られていて、もっと多いのは吾妻橋だった、というあたり。
(《文七元結》も、身投げしようとする文七を、左官の長兵衛が助けるのは吾妻橋。)
他にも、歌舞伎と落語の「悪所」の性質の違いがまとめられていて、落語だけでなく歌舞伎鑑賞にも勉強になる。
ただ、わたしは「はじめに」に書かれていた次の文章は、捉え方が狭すぎると感じて、頷けなかった。